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ベトナム内務省が、公務員・公的機関職員に支給される「地域手当(phụ cấp khu vực)」の算定基準を、従来の「一般最低賃金(mức lương tối thiểu chung)」から「基礎給与(mức lương cơ sở)」へ変更する通達改正案を公表した。行政単位の再編により新たに誕生したコミューン(xã)級の地域にも手当水準を設定する内容で、2025年の公務員法・公務員法改正や地方行政の2層制移行と連動した重要な制度変更である。
改正の背景——行政単位再編と法改正の波
ベトナム政府は近年、全国規模で行政単位の統廃合(sắp xếp đơn vị hành chính)を進めている。省(tỉnh)・県(huyện)・コミューン(xã)の3層構造を、省・コミューンの実質2層制へスリム化する方針であり、これに伴い多数の新しいコミューン級行政区が誕生している。従来の地域手当制度は2005年に内務省・労働傷病兵社会省・財務省・民族委員会の4省庁が共同で発出した合同通達第11/2005号に基づいていたが、行政区の再編に対応できていなかった。
加えて、2025年に公布された「2025年幹部・公務員法」および「2025年公務員法」が2026年7月1日に施行される予定であり、同法では従来の「試用期間制度(chế độ tập sự)」が廃止されるなど、公務員制度そのものが大きく変わる。内務省は党中央委員会の結論第206号および政府決議第74号を根拠に、既に通達第23/2025号を発出し2026年1月1日から適用を開始しているが、今回のドラフトはさらなる補完・修正を図るものである。
主な改正ポイント
1. 算定基準の変更:最低賃金から基礎給与へ
現行制度では、地域手当の金額は以下の計算式で算出される。
手当額 = 地域手当係数 × 一般最低賃金
地域手当係数は0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1.0の7段階が設定されており、最高の1.0はカインホア省(Khánh Hòa)に属するチュオンサ諸島(南沙諸島の一部としてベトナムが実効支配する島嶼群)など、特に過酷な条件の離島にのみ適用される。今回の改正案では、この「一般最低賃金」を「基礎給与」に置き換える。内務省は、現行法制度上すでに公務員給与体系が基礎給与を基準としているため、地域手当の算定基準もこれに合わせるのが合理的であると説明している。
2. 適用対象の明確化
改正案では、手当の適用対象を「国が定める給与表に基づき給与を受ける幹部・公務員・公務員(viên chức)および契約労働者で、権限ある機関が設立を決定した国家機関・公的事業体に勤務する者」と明確に規定する。一方、従来含まれていた「コミューン・区(phường)・町(thị trấn)の専従幹部および公務員」については、公務員制度の統合(連通化)が完了したため対象から除外される。
3. 地方行政2層制への用語統一
通達全体において「xã, phường, thị trấn(コミューン・区・町)」という表現を「xã, phường, đặc khu(コミューン・区・特区)」に置き換える。また、手当申請の手続きについても、従来は各機関が県級人民委員会に書面を送付し、県が省に上申するという3段階の流れだったが、改正案では「コミューン・区・特区の人民委員会が直接提案する」形に簡素化される。これは2層制の地方行政体制に適合させるための措置である。
4. 新設行政区への手当設定
行政単位の統廃合により新たに誕生したコミューン級行政区について、統合前の旧コミューンが地域手当を受給していた場合、新コミューンにも手当水準を設定する。ただし、まったく新規の地域を手当対象に追加するものではない点が明記されている。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の制度変更は一見すると公務員の給与制度に関する技術的な話題だが、ベトナム経済・投資に関心を持つ日本の読者にとっても複数の示唆がある。
第一に、ベトナム政府が進める行政改革の本気度を示す事例である。行政単位の大幅な統廃合、公務員制度の抜本改正、地方行政の2層制移行は、いずれも政府の効率化・スリム化を志向しており、2026年9月に判断が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに向けた「ガバナンス改善」のシグナルとして市場関係者は注目すべきである。行政の簡素化は外国企業の許認可手続きの迅速化にもつながる可能性がある。
第二に、基礎給与への一本化は公務員給与の透明性向上を意味する。ベトナムでは基礎給与の引き上げが毎年政治的な焦点となっており、2024年7月には基礎給与が月額234万ドンに引き上げられた経緯がある。今後の基礎給与改定が地域手当にも直接反映されることで、地方公務員の実質所得が明確に把握しやすくなり、地方での消費動向を予測する際の指標としても活用できるだろう。
第三に、日系企業を含むベトナム進出企業にとっては、地方部の公務員待遇改善が地方人材市場の競争環境に影響を及ぼす点にも留意が必要である。特に製造業が集中する地方省では、公務員給与の改善が民間セクターの賃金水準にも間接的な上昇圧力をかける可能性がある。
総じて、本件はベトナムが2025〜2026年にかけて進める大規模な制度改革パッケージの一部であり、個別の給与制度変更にとどまらず、国家ガバナンス全体の近代化という大きな文脈で捉える必要がある。
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出典: 元記事












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