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ベトナム副首相「起業に必要なのは大志」——2026年優秀若手起業家表彰式で語った国家戦略の真意

Phó thủ tướng: Khởi nghiệp cần bắt đầu từ khát vọng lớn
📘 この記事は「ベトナム経済研究会」が提供するベトナム最新ニュース解説です。
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ベトナムのグエン・ヴァン・タン(Nguyễn Văn Thắng)副首相は、2026年の優秀若手起業家表彰式において「起業に巨大な資本は必要ない。必要なのは大きな志(khát vọng)から始めることだ」と力強く訴えた。この発言は、ベトナム政府がスタートアップ・エコシステムの育成を国家戦略の柱として位置づけている姿勢を改めて鮮明にしたものであり、同国の経済成長の方向性を読み解くうえで極めて重要なメッセージである。

目次

表彰式の概要と副首相の発言

2026年6月10日、ハノイで開催された「2026年優秀若手起業家(Doanh nhân trẻ xuất sắc 2026)」の表彰式に出席したグエン・ヴァン・タン副首相は、受賞した若手経営者たちを前に講演を行った。タン副首相はベトナム共産党中央委員でもあり、経済政策の実務面を担うキーパーソンの一人である。

副首相は「起業(khởi nghiệp)は、莫大な資金やリソースがなくても始められる。最も重要なのは、大きな志を持ち、それを出発点にすることだ」と述べた。これは単なる精神論ではなく、ベトナム政府が近年推進してきた「スタートアップ国家」構想の理念を端的に表現した言葉である。

ベトナムでは若手起業家の表彰は毎年行われており、ベトナム青年実業家協会(Hội Doanh nhân trẻ Việt Nam)が主催する。IT、農業テック、フィンテック、製造業など多様な分野から選出されるこの表彰は、ベトナム社会における起業家精神の象徴的なイベントとして定着している。

「大志」の背景——ベトナムのスタートアップ政策の変遷

ベトナム政府が本格的にスタートアップ支援に乗り出したのは、2016年に当時のグエン・スアン・フック首相(後に国家主席)が「国家イノベーション・スタートアップ計画(Đề án 844)」を承認したことに遡る。以来約10年、政府はスタートアップ向けの税制優遇、インキュベーション施設の整備、海外ベンチャーキャピタル(VC)の誘致などを段階的に進めてきた。

ベトナムは人口約1億人、平均年齢が約30歳台前半という若い国であり、デジタルリテラシーの高い若年層が厚い。ホーチミン市やハノイを中心にスタートアップ・ハブが形成され、東南アジアの中でもインドネシアに次ぐスタートアップ大国としての地位を築きつつある。2025年までにユニコーン企業(企業評価額10億ドル以上の未上場企業)を複数輩出するという目標は、VNPay(電子決済大手)やVNLife(フィンテック)などの台頭により現実のものとなった。

タン副首相の今回の発言は、こうした流れの延長線上にある。資金調達環境が必ずしも成熟していないベトナムにおいて、「まず志を持て」というメッセージは、政府として起業の心理的ハードルを下げると同時に、既存の支援制度を積極的に活用するよう促す意味合いがある。

若手起業家たちが担うベトナム経済の未来

ベトナムでは「ドイモイ(刷新)」政策が始まった1986年以降に生まれた世代が、今まさに経済活動の中核を担いつつある。彼らは市場経済下で育ち、インターネットとスマートフォンが当たり前の環境で教育を受けた「デジタルネイティブ世代」である。

この世代の起業家たちは、従来のベトナム企業に多かった製造業・不動産業への偏重から脱却し、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)、エドテック、ヘルステック、グリーンエネルギーなど多様な領域に進出している。ベトナム政府が掲げる「2045年までに高所得国入り」という長期目標を達成するためには、こうした新産業を牽引する若手起業家の存在が不可欠である。

今回の表彰式で副首相が直接若手起業家を「tôn vinh(称揚)」したことは、共産党一党体制のベトナムにおいて、民間セクターの起業家が国家建設の担い手として正式に認められていることを示す象徴的な場面であった。かつて民間企業の活動に制約が多かったベトナムにおいて、これは大きな時代の変化である。

日本との関係——スタートアップ連携の深化

日本とベトナムのスタートアップ連携も近年急速に拡大している。日本貿易振興機構(JETRO)はハノイ・ホーチミン市でスタートアップ支援プログラムを展開しており、日本のVCによるベトナムスタートアップへの出資事例も増加傾向にある。ソフトバンク・ビジョン・ファンドをはじめとする大型ファンドがベトナム市場に注目していることは周知の事実である。

また、日本の大手企業がベトナムのスタートアップと提携し、DX(デジタルトランスフォーメーション)やサプライチェーンの効率化を進める動きも活発化している。ベトナム政府が起業家精神を国を挙げて奨励する姿勢は、日本企業にとっても現地パートナー企業の層が厚くなるという意味で歓迎すべき動きである。

投資家・ビジネス視点の考察

今回の副首相の発言自体は、特定の銘柄や産業セクターに直接的なインパクトを与えるものではない。しかし、ベトナム政府がスタートアップ・イノベーション支援を国家の重要方針として継続していることを確認できた点は、中長期の投資テーマとして押さえておくべきである。

ベトナム株式市場(ホーチミン証券取引所=HOSE)においては、IT・テクノロジー関連銘柄の時価総額はまだ小さいものの、FPTコーポレーション(FPT、ベトナム最大手IT企業)に代表されるように、テクノロジーセクターの存在感は年々増している。スタートアップ・エコシステムの成熟は、将来的にIPO(新規株式公開)を通じた上場企業の多様化につながり、市場全体の魅力向上に寄与する可能性がある。

2026年9月に判定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、海外からの機関投資家マネーが大量に流入することが期待されている。その際、ベトナム市場の「成長ストーリー」として、若い人口構成とスタートアップ・エコシステムの発展はセールスポイントになる。今回のような政府トップレベルの起業家支援メッセージは、こうした成長ストーリーの信頼性を補強する材料として位置づけられる。

日本企業やベトナム進出を検討する企業にとっては、現地でスタートアップとの協業を模索する際に、政府の支援姿勢が追い風となる。特にデジタル分野、グリーンテクノロジー、農業テックなどは、日越双方の利害が一致しやすい領域であり、今後さらなる連携強化が見込まれる。


いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。

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出典: 元記事

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