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ベトナムの医療ツーリズム(医療目的の外国人渡航者を受け入れる観光形態)が急速な成長を遂げている。2025年の同分野の収入は8億5000万ドルを超える見込みとなり、年平均成長率(CAGR)は約18%という高水準を記録している。統計は不完全ながらも、毎年30万人以上の外国人患者がベトナムを訪れ、診察や治療を受けているという実態が明らかになった。医療という「命」に関わる分野で、ベトナムが地域のハブとしての存在感を強めている点は、経済的にも社会的にも見逃せないニュースである。
急成長する医療ツーリズム市場の実態
医療ツーリズムとは、自国では受けられない、あるいは高額になりがちな医療サービスを求めて、外国人が渡航先で診察・治療を受ける観光形態を指す。タイやシンガポール、マレーシアなどがこの分野で先行してきたアジア地域において、ベトナムは近年、急速にその存在感を高めている。
今回の情報によれば、2025年のベトナムにおける医療ツーリズム収入は8億5000万ドルを超える見通しであり、年平均成長率は約18%に達するという。これは東南アジア域内でも際立って高い伸び率であり、単なる一過性のブームではなく、構造的な成長トレンドであることを示唆している。
さらに注目すべきは、毎年30万人を超える外国人患者がベトナム国内の医療機関を訪れ、診察・治療を受けているという点だ。ただし、これは「不完全な統計(thống kê chưa đầy đủ)」に基づく数字であるとされており、実際の受診者数はさらに多い可能性がある。統計整備が発展途上国特有の課題であるベトナムにおいて、正確な実態把握そのものが今後の政策課題になると考えられる。
なぜベトナムに外国人患者が集まるのか
ベトナムが医療ツーリズムの目的地として選ばれる背景には、いくつかの要因が考えられる。まず、近年の医療技術の急速な向上だ。ホーチミン市(旧サイゴン、南部の経済中心地)やハノイ(首都、北部の政治・文化の中心)を中心に、国際基準に準拠した民間総合病院グループが相次いで設立され、心臓外科や整形外科、美容医療、歯科治療などの分野で高い評価を得つつある。
次に、価格競争力の高さである。シンガポールなど医療先進国と比較して治療費が大幅に抑えられる一方、近年は医師の技術水準や設備の質が向上しており、「コストパフォーマンスの良い医療」という評価が海外の患者層に浸透しつつある。
加えて、ベトナム系海外居住者(越僑、いわゆるベトキュウ)のネットワークも見逃せない要素だ。アメリカやオーストラリア、フランスなどに居住するベトナム系移民が、里帰りを兼ねて母国で治療を受けるケースも一定数存在するとみられ、これが患者数の底上げに寄与している可能性がある。
政府の医療産業振興策との関連
ベトナム政府はこれまでも、観光業を国家的な重点産業と位置づけ、外国人観光客の誘致に力を入れてきた。医療ツーリズムはその中でも「高付加価値観光」として期待される分野であり、通常の観光客と比較して滞在日数が長く、消費額も大きい傾向がある点が政策的な魅力となっている。患者本人だけでなく、付き添いの家族の宿泊・飲食・移動需要も生まれるため、周辺産業への経済波及効果も大きい。
投資家・ビジネス視点の考察
この医療ツーリズムの成長は、ベトナム株式市場においても複数のセクターに波及効果をもたらす可能性がある。まず直接的な恩恵を受けるのは、民間病院運営会社や医療機器関連企業だ。ベトナム証券市場には、医療サービスを手掛ける上場企業も存在しており、外国人患者の増加は病床稼働率や自由診療収入の増加を通じて、これら企業の業績に直接的なプラス影響を与えると考えられる。
また、医療ツーリズムは観光・ホテル・航空セクターとも密接に関連する。長期滞在型の患者や付き添い家族の存在は、中〜長期滞在型ホテルや高級ホテルチェーンの稼働率向上にも寄与するため、観光関連銘柄への波及も注目に値する。
日本企業への影響という観点では、日本の医療機器メーカーや製薬会社にとって、ベトナムの医療インフラ高度化は新たな輸出・提携機会を意味する。すでに一部の日本の医療機関やクリニックがベトナムでの合弁展開を進めているが、今後は健診(人間ドック)や先端医療分野での日越連携がさらに拡大する可能性がある。日本の医療の「質の高さ」は東南アジアでも一定のブランド力を持っており、ベトナムの富裕層・中間層の「越境医療需要」の受け皿として、日本国内の病院が患者を受け入れる流れが強まることも考えられる。
マクロ的な視点では、この医療ツーリズムの成長は、ベトナム経済が単純な製造業輸出依存型モデルから、サービス業・高付加価値産業へとシフトしつつある大きな潮流の一部として位置づけられる。2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げ(ベトナムが現在のフロンティア市場から新興市場へと格上げされる可能性)との関連では、こうした非製造業分野の多様な成長ストーリーが、海外機関投資家に対して「ベトナム経済の成熟度」をアピールする材料となり得る点も重要だ。医療、観光、金融、不動産といった内需関連セクターの底上げは、指数格上げ後に流入が期待される新興市場ファンドの資金にとって、投資対象の厚みを増す要素となるだろう。
一方でリスク要因も存在する。医療の質や安全性に関する国際的な認証・信頼性の確保、医療従事者の人材不足、そして統計整備の遅れといった課題は、今後の持続的成長のボトルネックとなり得る。投資家としては、個別の病院運営会社の経営体制や国際認証(JCIなど)の取得状況を注視する必要があるだろう。
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出典: 元記事












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