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2026年7月1日より、ベトナムの医療保険制度が大幅に改正される。正規の受診ルート(đúng tuyến=「正しい紹介経路」)で受診した場合、1回あたりの診療費が379,500ドン未満であれば、医療保険基金が全額を負担する。基礎給与(mức lương cơ sở)の引き上げに伴う措置であり、約1億人の保険加入者に直接影響する重要な政策変更である。
新制度の概要と法的根拠
今回の改正は、改正医療保険法、政府の第188/2025/NĐ-CP号政令、および第161/2026/NĐ-CP号政令に基づく。核心となるのは、基礎給与の15%(253万ドン×15%=379,500ドン)を下回る診療費について、保険基金が100%を支払うという規定である。
ベトナム保健省(Bộ Y tế)医療保険局のチャン・ティ・チャン(Trần Thị Trang)局長によると、正規ルートで受診した場合、初級・基本・専門の全レベルの医療機関において100%給付が適用される。
紹介経路外(trái tuyến)受診の場合
正規の紹介経路を経ずに受診した場合は、医療保険法第22条第4項の各号に定められた比率に応じて給付額が計算される。保健省は以下の具体例を示している。
【例1】総額370,000ドンの診療を、同条a号(希少疾病・難病、手術・高度技術を要する場合)に該当する形で受診した場合:370,000ドン×100%=370,000ドンが給付され、患者の自己負担はゼロとなる。
【例2】同じ370,000ドンの診療を、同条c号(専門病院での入院、a・b・đ・h号以外)に該当する形で受診した場合:370,000ドン×100%×40%=148,000ドンが給付され、患者は222,000ドンを自己負担する。
5年以上の継続加入者への上限保護
新制度では、5年以上連続で医療保険に加入している者について、年間の自己負担額合計が基礎給与の6倍(253万ドン×6=15,180,000ドン)を超えた場合、それ以降の費用は保険基金が100%負担する。これは高額医療費に対するセーフティネットとして機能する。
紹介経路外の外来受診にも50%給付が新設
7月1日からは、基本レベルおよび専門レベルの一部医療機関(50点超の基本級施設、暫定的に基本級に分類された施設、2025年1月1日以前に省級に分類されていた専門級施設)での紹介経路外の外来受診についても、保険給付範囲内で50%の給付が行われる。従来はこれらのケースで保険給付がなかったため、大きな改善である。
保健省の計算例は以下の通りである。
【患者A】給付率100%の対象者が、省級病院(基本級に分類)で紹介経路外の外来受診をし、総額1,000,000ドンの場合:1,000,000ドン×100%×50%=500,000ドンが給付。自己負担は500,000ドン。
【患者B】給付率80%の対象者が同条件で受診した場合:1,000,000ドン×80%×50%=400,000ドンが給付。自己負担は600,000ドン。
なお、各病院のレベルと点数は、保健省医療管理局(Cục Quản lý Khám, chữa bệnh)のウェブサイト、各地方の保健局サイト、または各病院のサイトで確認できる。保健省はこれらの情報公開を各機関に義務付けている。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の医療保険制度改正は、複数の観点からベトナム市場に影響を及ぼす。
第一に、民間病院・医療関連銘柄への影響である。保険給付の拡充は医療サービスへのアクセスを促進し、受診件数の増加が見込まれる。ホーチミン証券取引所に上場するビンメック(VCI)やホアンアインザライ病院系など、民間医療セクターの銘柄にとっては中長期的なポジティブ材料となり得る。
第二に、基礎給与引き上げの波及効果である。基礎給与が253万ドンに引き上げられたことは、社会保険料・医療保険料の算定基準も上昇することを意味し、保険基金の収入増につながる。一方で給付範囲も拡大するため、基金の収支バランスには注視が必要である。
第三に、日系企業への実務的影響である。ベトナムに進出している日系企業は、現地従業員の医療保険料負担が基礎給与連動で増加する可能性がある。人事・労務管理の観点から、7月1日以降の保険料率と給付内容の変更を確認しておくべきである。
第四に、社会保障制度の整備はFTSE新興市場指数への格上げ(2026年9月決定見込み)に向けた「制度的成熟度」の一つのシグナルでもある。直接的な格上げ要件ではないものの、ベトナムが中所得国として社会インフラを着実に整備しているという評価につながる。
総じて、今回の改正は国民の医療アクセス改善と経済的負担軽減を図る重要な一歩であり、ベトナムの内需拡大と社会安定に寄与する政策として位置づけられる。
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出典: 元記事












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