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ベトナム土地価格算定の壁、財政損失と開発遅延の元凶を読み解く

Bàn về giải pháp tháo gỡ vướng mắc trong thẩm định giá đất
📘 この記事は「ベトナム経済研究会」が提供するベトナム最新ニュース解説です。
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ベトナムで長年懸案となってきた「土地価格算定(地価評定)」の問題が、改めて政策議論の俎上に載っている。土地価格の算定にずれが生じると、国家財政の歳入減少、補償費用の増大、住民からの苦情の多発、プロジェクトの遅延、そして土地資源の管理・活用効率の低下につながりかねない――。今回報じられた内容は、この根深い制度課題に対する解決策を議論するものであり、不動産開発、インフラ投資、そして外国企業のベトナム進出プロジェクトすべてに関わる重要なテーマである。

目次

土地価格算定とは何か、なぜ問題になるのか

ベトナムでは土地はすべて「人民全体の所有」であり、国家が管理者として個人・企業に「土地使用権」を割り当てる仕組みを採っている。企業が工業団地や住宅開発、インフラ事業を行う際には、国から土地使用権を取得したり、既存の住民から立ち退き・収用を行ったりする必要があるが、その際に基準となるのが「土地価格(地価)」である。この地価が市場実勢と乖離していると、様々な歪みが生じる。

まず、国家が土地使用権を企業に払い下げる際の地価が実勢より低く算定されれば、国家の歳入(財政収入)はその分減少する。逆に、住民から土地を収用する際の補償額の基準となる地価が低すぎれば、住民の不満が高まり、立ち退きに応じない、訴訟や陳情(ベトナムでは「khiếu nại」と呼ばれる行政不服申立てが社会問題化しやすい)に発展するケースが後を絶たない。こうした紛争はプロジェクトの用地確保を遅らせ、結果としてインフラ整備や工業団地開発、住宅供給といった開発計画全体の進捗に悪影響を及ぼす。

制度の背景にある構造的な課題

ベトナムの土地価格算定制度は、これまで幾度も法改正が行われてきた。2024年に施行された新「土地法(Luật Đất đai)」でも、地価算定の方法論(比較法、収益還元法、残余法など)の明確化や、地価の「市場価格への近接化」が重要な柱として盛り込まれている。しかし実務レベルでは、算定を担う地方当局(省・市の人民委員会や関連部局)の専門人材不足、データベースの未整備(過去の取引価格や市場動向を把握するための統一的な不動産取引データベースがいまだ発展途上)、そして算定プロセスの透明性の欠如といった課題が指摘され続けてきた。

特に、地価算定の結果が公表されるまでのプロセスがブラックボックス化しやすく、同じ地域・同じ条件の土地であっても、担当機関や算定時期によって評価額に大きな差が出ることがある。これが「思ったより収用補償額が低い」「同じ地区なのに隣の区画と補償額が違う」といった住民の不満を招き、社会的な軋轢を生む土壌となっている。

解決策として議論されている方向性

今回のニュースが指す議論では、こうした「算定のずれ(sai lệch)」を是正するための具体策が検討されている。一般的にベトナムの専門家・当局間で議論されている方向性としては、(1)土地・不動産の取引データベースの全国統一化とデジタル化の推進、(2)地価算定を担う独立した鑑定機関・専門人材の育成と資格制度の強化、(3)算定プロセスの透明性確保と結果の公開、(4)地価算定基準の頻度を高め、市場実勢との乖離を早期に是正する仕組みの導入、などが挙げられる。これらは新土地法の精神とも合致するものであり、今後の政令・通達(Nghị định、Thông tư)レベルでの具体化が注目される。

投資家・ビジネス視点の考察

この問題は一見地味な行政テーマに見えるが、実はベトナムの不動産市場、インフラ投資、そして工業団地開発を手掛ける企業全般にとって極めて重要な論点である。地価算定の透明性・迅速性が向上すれば、用地確保に伴うプロジェクト遅延リスクが低減し、不動産デベロッパーやインフラ関連企業の収益予見性が高まる。逆に、算定制度の不備が放置されれば、土地収用を巡る紛争が長期化し、工業団地やハイテク団地の開発スケジュールに悪影響を与え続けることになる。

ベトナム証券市場においては、不動産デベロッパー株(例えばヴィングループ(ベトナム最大手のコングロマリット)系の不動産部門や、ノヴァランド(ホーチミン市を拠点とする大手不動産企業)、カン・ザット(Khang Điền)といった住宅開発企業)や、工業団地開発を手掛ける企業(例えばベカメックス(Becamex IDC)、KBC(Kinh Bắc)など)にとって、地価算定制度の改善は用地取得コストの予見性向上につながり、中長期的にはポジティブな材料となり得る。一方で、算定の厳格化・市場価格への近接化は、企業側の土地使用権取得コストの上昇要因ともなり得るため、短期的にはコスト増としてマイナスに働く可能性もある両面性を持つ。

日本企業にとっても、この論点は無視できない。日系企業が工業団地に進出する際、あるいは日系デベロッパーが住宅・商業プロジェクトに参画する際、土地使用権の取得コストと収用プロセスの予見可能性は事業計画の根幹に関わる。地価算定制度が透明化・迅速化されれば、日本企業の投資判断のハードルも下がり、対ベトナム直接投資(FDI)のさらなる呼び込みにつながるだろう。

また、2026年9月に決定が見込まれるFTSEラッセルによる新興市場指数への格上げとの関連で見ると、こうした土地・不動産関連の制度整備は、ベトナム市場全体の「制度的透明性」を評価する上での間接的な材料となる。格上げの直接的な審査基準は決済制度や外国人投資家のアクセス改善が中心ではあるものの、土地・不動産セクターの制度的成熟度は、海外機関投資家がベトナム株式市場全体のガバナンスやカントリーリスクを評価する際の参考材料となり得る。不動産・インフラは依然としてベトナムGDPの重要な牽引役であり、この分野の制度改善はマクロ経済の安定性向上というより大きな文脈の中に位置づけられる。


いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。

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出典: 元記事

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