ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
ベトナム最大の家電・小売チェーンを展開するMWG(モバイル・ワールド・グループ、ホーチミン証券取引所上場・ティッカー:MWG)の取締役会会長グエン・ドゥック・タイ氏が、中東情勢の緊迫化など外部環境の逆風にもかかわらず、2025年度の利益目標を前年比30%増に据え置くことを明言した。「ビジネスが厳しいことは、経営目標を引き下げる理由にはならない」——この力強い発言は、同社の株主総会で大きな注目を集めた。
グエン・ドゥック・タイ会長の発言の真意
MWGは2004年にグエン・ドゥック・タイ氏が創業した企業で、携帯電話販売チェーン「テーゾイジードン(thegioididong.com)」、家電量販チェーン「ディエンマイサイン(Điện máy XANH)」、食品・日用品スーパー「バックホアサイン(Bách Hoá XANH)」の3本柱で全国数千店舗を展開するベトナム小売業界の巨人である。タイ会長はベトナムのビジネス界では「小売の革命児」として知られ、その経営判断は常に市場の注目を集めてきた。
今回の株主総会でタイ会長は、中東地域の地政学的リスクやグローバルなサプライチェーンの不安定化といったマクロ環境の悪化を認めつつも、「外部環境の困難さを理由に業績目標を下方修正するのは経営者の姿勢としてふさわしくない」と断言した。経営陣として自ら「やりくり(xoay xở)」し、あらゆる手段を講じて目標を達成する覚悟を示した形である。
利益30%増の目標——その根拠と背景
MWGが掲げる利益30%増という目標は、決して根拠のない精神論ではない。同社はここ数年、いくつかの構造的な成長ドライバーを着実に育ててきた。
第一に、食品スーパー「バックホアサイン」の収益化が本格的に軌道に乗りつつある点が挙げられる。バックホアサインは長年にわたり赤字を計上し、投資家の間で懸念材料となっていたが、店舗フォーマットの刷新や商品構成の最適化により、直近の四半期では黒字基調が定着してきた。ベトナムの食品小売市場は依然として伝統的な市場(チョー)や個人商店が主流であり、近代的なスーパーマーケットチェーンが浸透する余地は極めて大きい。
第二に、主力のテーゾイジードンおよびディエンマイサインにおける「買い替えサイクル」の到来である。ベトナムではスマートフォンや家電の普及が一巡し、新規需要は鈍化しているものの、2020年前後に購入された端末・家電の買い替え需要が2025年にかけて顕在化すると見込まれている。
第三に、海外事業の拡大である。MWGはカンボジアやインドネシアでも小売事業を展開しており、東南アジアの成長市場での売上拡大が中長期的な利益押し上げ要因となっている。
中東情勢とベトナム小売業への影響
タイ会長が言及した「中東の緊張」は、ベトナム経済にとっても無縁ではない。原油価格の上昇は輸送コストの増加につながり、小売業の仕入れコストや物流費に直結する。また、世界的なリスクオフムードが広がれば、新興国市場からの資金流出が加速し、ベトナムドンの為替レートにも影響を及ぼす可能性がある。
しかしMWGの場合、売上の大半がベトナム国内の内需に依存しているため、輸出企業と比較して地政学リスクの直接的な影響は限定的である。むしろ同社にとっての主要リスクは、国内消費者の購買意欲の低下やインフレによる家計の可処分所得の圧迫といった内需要因であろう。
投資家・ビジネス視点の考察
MWGはホーチミン証券取引所(HOSE)の時価総額上位銘柄であり、VN-Index(ベトナムの代表的株価指数)への寄与度も大きい。同社の業績見通しの堅持は、ベトナム小売セクター全体に対する市場のセンチメントにプラスに作用すると考えられる。
とりわけ注目すべきは、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げとの関連性である。格上げが実現すれば、グローバルなパッシブ資金がベトナム市場に大量流入すると見込まれており、MWGのような時価総額の大きい内需銘柄は、その恩恵を最も受けやすい銘柄の一つとなる。タイ会長の強気な目標設定は、こうした中長期的な資金流入を見据えた「市場へのメッセージ」としても機能している可能性がある。
日本企業やベトナム進出企業にとっても、MWGの動向は重要な示唆を与える。MWGの店舗網は日本メーカーの家電・電子機器にとって最大の販路であり、同社の成長はそのまま日本製品のベトナムでの販売機会拡大を意味する。また、バックホアサインの拡大は日本の食品メーカーにとっても、モダントレード(近代的小売チャネル)を通じた市場参入の好機となる。
一方でリスクとしては、30%増という高い目標を未達に終わった場合の株価への反動が挙げられる。過去にもMWGは強気の目標を掲げながら下方修正を余儀なくされた局面があり、投資家としては四半期ごとの進捗を丁寧にモニタリングする必要がある。ベトナムの個人消費動向、CPI(消費者物価指数)の推移、そしてグローバルな地政学リスクの展開を注視しながら、同社株のポジションを判断すべき局面である。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント