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ベトナム建設省が、建築士の業務資格証明(チュンチー・ハンゲー)制度を抜本的に見直す法改正案を提出した。従来の「義務的な資格証取得」から、「資格証の取得」または「法律に定める業務基準の充足」のいずれかを選択できる制度への転換を図るもので、行政手続きの簡素化と国際的な基準への対応という二つの目的を同時に追求する内容である。
法改正案の概要
2025年6月4日午後、司法省のグエン・タイン・トゥー(Nguyễn Thanh Tú)副大臣が主宰する審査会議が開催され、建築法(Luật Kiến trúc)の一部改正法案が審議された。
建設省(Bộ Xây dựng)が提案した改正案の骨子は以下の通りである。
- 建築士の業務資格証明について、現行の義務制から選択制へ移行する。具体的には、資格証を取得するか、法律に定める業務基準を満たすかのいずれかで業務が可能となる。
- 資格証の発行・更新条件を定めた第28条を廃止する。
- 資格証の発行・更新手続きを定めた第29条を簡素化する。
- 建築活動に関連する他の法律についても所要の改正を行う。
この改正は、行政手続きの簡素化(資格証を取得せずとも業務基準を満たせば実務可能)と、国際基準への整合性確保(国際慣行では資格証が求められる場面に対応)という、一見相反する二つの要請を同時に満たすことを意図している。
専門家からの提言──「インテリア建築士」の法的定義を
審議の場では、ハノイ建築大学(Đại học Kiến trúc Hà Nội)のヴー・ホン・クオン(Vũ Hồng Cương)准教授が重要な問題提起を行った。同氏は、「インテリア建築士(kiến trúc sư nội thất)」という職種を法律上明確に定義すべきだと主張した。現代の建築において、利用者が最も長い時間を過ごすのは室内空間であり、インテリアデザインは人間の健康や心理に直接的な影響を及ぼす。にもかかわらず、現行法ではこの職種が他の建築士と一括りにされており、教育体系の整備、業務管理、そして国際的な相互認証の観点からも法的な位置づけが不可欠だという指摘である。
さらに同氏は、インテリアデザイン分野に特化した段階別の資格証制度の構築と、資格試験・証明書発行の権限を業界団体(建築士会の支部など)に委譲する仕組みの導入を提言した。これにより、国家機関の負担軽減と、専門性の高い客観的な評価の両立が可能になるとの見解を示している。
業界団体の意見──7種類の資格証を1種類に統合を
ベトナム建設コンサルティング協会(Hiệp hội Tư vấn xây dựng Việt Nam)のグエン・ティ・ズエン(Nguyễn Thị Duyên)会長は、設計関連の資格証制度自体は維持すべきとしつつも、現行の7種類もの建築サービスに対応した7種類の資格証を、「建築設計」の1種類に集約すべきだと提案した。資格証の乱立は実務上の煩雑さを生んでおり、制度の簡素化が急務であるという認識は業界内で広く共有されている。
司法省副大臣の総括──投資・経営条件の削減方針との整合性が課題
会議を総括したトゥー司法副大臣は、改正案が党の方針に基本的に合致していると評価した。ただし、政府が現在推進している「投資・経営条件の削減」方針との整合性について、建設省に対してより明確な説明を求めた。
特に以下の論点が指摘された。
- 社会秩序・安全や国家利益に影響を及ぼす特殊な建築分野については、一部の規制を維持する根拠を明確にする必要がある。
- 個人事業主(ホーキンドアン=hộ kinh doanh)形態の建築事務所について、政府が個人事業主の縮小と企業法に基づく法人化を推進している方針との整合性を検討すべきである。
- 審査会メンバーの多数意見としては、重要な分野・工事については資格証制度を維持すべきだが、最終的には政府の判断に委ねるべきである。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の法改正案は、直接的に株式市場の特定銘柄を大きく動かす材料ではないが、ベトナムの制度改革の方向性を示す重要なシグナルとして注目に値する。
建設・不動産セクターへの間接的影響:資格制度の簡素化は、建築設計市場への参入障壁を引き下げる方向に作用する。中長期的には設計コストの低下につながる可能性があり、不動産デベロッパーにとってはプラス要因となり得る。ホーチミン市証券取引所に上場するビンホームズ(VHM)やノバランド(NVL)など大手デベロッパー、あるいは建設コンサルティング企業にとって、設計業務の外注コスト構造に変化が生じる可能性がある。
日本企業への示唆:ベトナムに進出している日系設計事務所やゼネコンにとって、現地スタッフの資格要件が緩和される方向であれば、人材確保の柔軟性が増す。一方、国際基準に沿った資格証を取得する選択肢が残されるため、日本の資格制度との相互認証の枠組み構築に向けた議論が今後加速する可能性もある。
ビジネス環境改善とFTSE格上げとの関連:ベトナムは2026年9月にもFTSE新興市場指数への格上げが決定される見通しであり、政府は投資・経営環境の改善を加速させている。今回の建築士資格制度の見直しも、この大きな流れの一環として位置づけられる。個人事業主から法人への移行促進、行政手続きの簡素化、国際基準への適合といった改革は、海外投資家がベトナム市場の制度的成熟度を評価する際のプラス材料となる。
ベトナム政府は現在、多くの分野で「条件付き業種」の見直しを進めており、建築分野の改革はその一つのピースに過ぎない。しかし、こうした地道な制度改革の積み重ねが、ベトナムの中長期的な競争力と市場の魅力度を高めていくことは間違いないだろう。
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出典: 元記事












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