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ベトナム政府は、2026〜2030年を対象とするデジタル経済・デジタル社会発展プログラムを正式に承認した。ホー・クオック・ズン(Hồ Quốc Dũng)副首相が決定第1033号に署名し、データ経済をデジタル経済成長の重要な推進力と位置づける野心的な計画が始動する。GDP に占めるデジタル経済の付加価値比率を約30%に引き上げ、少なくとも50万社の中小企業(SME)のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するなど、15の重点任務を掲げている。
プログラムの主要目標
本プログラムは、デジタル基盤・データ・人工知能(AI)を軸とした活力あるデジタル経済の構築を目指す。新たな生産方式の形成、成長モデルの刷新、労働生産性の向上、グリーンかつ持続可能な発展を推進するとともに、すべての国民が科学技術とDXの恩恵を享受できる安全で包摂的なデジタル社会の実現を掲げている。
デジタル経済分野の数値目標
- GDPに占めるデジタル経済の付加価値比率:約30%
- DX支援対象の中小企業:最低50万社
- 先進国水準のデジタル技術企業:最低5社
- データ取引プラットフォーム:最低5基盤の開発・運用
- キャッシュレス決済額:GDPの30倍
- 大学教育におけるSTEM(科学・技術・工学・数学)分野の割合:40%
デジタル社会分野の数値目標
- 光ファイバーブロードバンド(1Gbps)への家庭アクセス率:100%
- 5Gモバイルブロードバンド(最低100Mbps)の人口カバー率:99%
- 14歳以上の全国民に電子IDアカウントを付与:100%
- 15歳以上の銀行口座保有率:95%
- 18歳以上のデジタル署名・電子署名保有率:70%超
- 労働年齢人口のデジタルリテラシー研修:最低1,000万人
15の重点任務の概要
プログラムは以下の15の重点任務・施策を定めている。
第1:制度・法的枠組みの整備。データに関する制度整備、データ経済の発展、新たな経済モデルに対する規制サンドボックスの導入、公正なデジタル市場競争の促進、国際基準に沿った標準化、デジタル経済の統計指標・測定手法の構築を行う。
第2:デジタルインフラの迅速かつ同期的な整備。国家は戦略的デジタルインフラおよび公共デジタルインフラへの投資を主導し、民間企業は市場メカニズムに基づきその他のインフラを整備する。ブロードバンド、5G、次世代モバイル、低軌道衛星インターネットの普及を推進するほか、データセンター、クラウドコンピューティング、高性能計算基盤、AI向けインフラをサービスモデルとして発展させる。国内外の公共デジタルインフラの相互接続・相互認証も強化する。
第3:共通デジタルプラットフォーム・国家デジタルプラットフォームの開発。ベトナムが主導するデジタルエコシステムを構築し、分野横断・地域横断の経済・社会・環境課題の解決を優先する。
第4:データ経済の発展。国家データベースおよび専門分野データベースの構築、官民間のデータ共有・連携・活用の促進、オープンデータおよびデータ市場の発展を図る。データ資産・所有権・利用権に関する制度を整備し、データ取引所の試験運用やサイバーセキュリティ・個人データ保護規定に適合するデータ流通メカニズムを構築する。データ産業・分析基盤・測定手法の発展を通じ、イノベーションとデジタル経済社会の発展に寄与する。
第5:AI活用の推進。各産業・分野でのAI応用により生産性向上、運営最適化、データに基づく意思決定の刷新を図る。AI倫理、安全性、プライバシー保護の原則を遵守しつつ、特にSMEのAI導入を支援し、経済社会全体にAI活用エコシステムを形成する。
第6:サイバーセキュリティの確保。デジタル経済・社会におけるデジタル信頼の基盤を構築する。
第7:デジタル人材の包括的育成。デジタル技術人材、テクノロジー専門家、デジタルリテラシーを持つ労働力の育成、社会全体へのデジタル能力普及を推進する。戦略的デジタル技術分野の高度人材育成、生涯学習およびリスキリングの促進、国内外のデジタル人材・専門家の招聘制度の整備、AI活用プラットフォームを通じた労働市場マッチングなどを含む。
第8:デジタル市民・デジタル文化の発展。安全で健全かつ包摂的なデジタル社会の基盤とする。
第9:ベトナム発デジタル技術企業の育成。戦略的デジタル技術を自主的に保有する中核的存在として育成し、「Make in Vietnam」の重点デジタル製品・サービスのエコシステムを発展させ、国際市場への展開を図る。大手テクノロジー企業や国有企業の牽引的役割を活かし、グローバルバリューチェーンへの参画を促す。
第10:データに基づく国家デジタルガバナンスの発展。行政サービスのデジタル化・自動化、リアルタイムデータに基づく意思決定を推進する。
第11:デジタル経済を支える先進的市場の発展。イノベーション・技術市場、データ市場、カーボンクレジット市場、資産取引所、独立評価機関、サプライチェーンリスク分析・警報センターなどの整備を含む。
第12:各産業・分野別のデジタル経済・社会の発展。農業、天然資源・環境、観光、文化・スポーツ、商業、ロジスティクス、加工・製造、エネルギー、教育、労働・雇用、社会保障など多分野にわたる。
第13:官民・学術・産業間の連携強化。デジタルインフラ、プラットフォーム、データ、デジタルサービスの投資・構築・運用、デジタル人材育成、新技術・サービスの規制サンドボックス実施、効果的モデルの共有・拡大を推進する。
第14:広報・意識啓発の推進。国内外のフォーラム、会議、展示会を通じてデジタル経済・社会に関する認知を高め、デジタル時代に積極的に取り組むベトナムのイメージを発信する。
第15:国際経験の研究・吸収。最新技術トレンドや先進的発展モデルを学び、政策を適時調整し、グローバルなDXの文脈においてプログラムの柔軟性と適応力を確保する。
投資家・ビジネス視点の考察
今回のプログラムは、ベトナムが国家レベルでデジタル経済・データ経済を成長エンジンと明確に位置づけたという点で、極めて重要なシグナルである。以下の観点から注目すべきポイントを整理する。
ベトナム株式市場への影響:IT・デジタル関連銘柄への中長期的な追い風となる。具体的には、FPT(ベトナム最大手IT企業)、CMG(CMCグループ)、VNG(テクノロジー大手)など、デジタルインフラ構築やAIソリューション提供に関わる企業が恩恵を受ける可能性が高い。データセンター、クラウド、サイバーセキュリティ関連の投資拡大も見込まれる。また、キャッシュレス決済のGDP30倍という野心的目標は、銀行セクター(VCB、TCB、MBBなど)やフィンテック関連にもプラス材料である。
50万社SMEのDX支援:ベトナムには約90万社のSMEが存在するとされ、その過半数を対象にDX支援を行うという目標は、SaaS、クラウド、ERPなどのBtoB向けデジタルサービス市場の急拡大を意味する。日系企業を含む外資系ITベンダーにとっても大きなビジネスチャンスが生まれる。
日本企業への示唆:日本企業にとっては、ベトナムのデジタルインフラ投資に参画する機会が広がる。NTTデータ、NEC、富士通などはすでにベトナムでの事業展開を進めているが、データセンター、5G、AI分野での協業ニーズが一段と高まるだろう。また、「Make in Vietnam」政策と両立する形での技術移転・合弁が求められる点には留意が必要である。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げにとって、デジタルガバナンスの整備、キャッシュレス決済の普及、電子ID・デジタル署名の全国民への普及は、市場の透明性・効率性向上という観点から極めてポジティブな要素である。特に証券取引の電子化・本人確認のデジタル化が進むことで、海外投資家の市場アクセスが改善され、格上げの評価基準を満たす後押しとなり得る。
マクロ経済上の位置づけ:ベトナムは2024年時点でデジタル経済のGDP比率が約18.5%とされており、2030年に30%という目標は年平均で大幅な上積みが必要となる。しかし、ベトナムの若い人口構成(中央年齢約32歳)、高いスマートフォン普及率、急速なキャッシュレス化の進展を考えれば、他のASEAN諸国と比較しても達成可能性は十分にある。本プログラムは、単なるスローガンではなく、規制サンドボックスやデータ取引所の試験運用、カーボンクレジット市場の整備など具体的な施策を盛り込んでおり、実行力が問われる段階に入った。
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