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ベトナム政府は2026年5月15日、ハイテク分野における投資優先技術70件と、開発奨励対象のハイテク製品100品目を定めた新たなリストを公布した。AI、ブロックチェーン、量子技術、再生可能エネルギーなど最先端領域を幅広く網羅しており、同国のハイテク産業振興政策が新段階に入ったことを示す重要な決定である。
決定の概要——旧リストから6年ぶりの全面刷新
ホー・クオック・ズン(Hồ Quốc Dũng)副首相が署名した首相決定第23/2026/QĐ-TTg号は、2020年12月30日付の旧決定第38/2020/QĐ-TTgを全面的に置き換えるものである。施行日は2026年7月1日。旧決定に基づいて認定証や公認文書を取得済みの企業・組織については、当該証書の有効期限が切れるまで旧リストの適用が継続される経過措置も設けられている。
投資優先技術70件の主な内容
新たに定められた「投資優先ハイテク技術リスト」は70件にのぼり、以下の分野が含まれる。
- AI(人工知能)技術
- ビッグデータ・データ分析技術
- クラウドコンピューティング、エッジコンピューティング、分散コンピューティング、高性能コンピューティング
- IoT(モノのインターネット)技術
- ブロックチェーン技術
- 量子技術
- 再生可能エネルギー・クリーンエネルギー・先進蓄電技術
- AIを統合したリアルタイム災害観測・予報・早期警報技術
- 次世代微生物技術
旧リスト(2020年版)と比較すると、量子技術やエッジコンピューティング、AI統合型の防災技術など、ここ数年で急速に実用化が進んだ領域が新たに加わった点が特徴的である。ベトナムは近年、半導体サプライチェーンの移転先として世界的な注目を集めており、こうした技術リストの拡充は外資誘致の「呼び水」としても機能する。
開発奨励ハイテク製品100品目の注目ポイント
製品リストは100品目に拡大され、以下のような具体的な製品群が盛り込まれた。
- AIおよびデータに基づく認識・分析・予測・制御を行うシステム、機器、ソフトウェア
- AI研究開発・応用を支援するプラットフォーム
- ビッグデータを活用した学習経路パーソナライズソフトウェア
- STEAM教育向けスマート教育・訓練システム・機器
- 無人航空機(ドローン)
- 新エネルギー活用の環境配慮型交通手段(EV等)
- 医薬・農業分野のバイオ医薬品
- 次世代ワクチン、医療用生物製剤、次世代診断用生物製剤
注目すべきは、教育テック(EdTech)やドローン、EVといった産業横断的な製品が明示された点である。ベトナムでは、ビンファスト(VinFast、ベトナム初の自動車メーカーでEVを主力に展開)がナスダック上場を果たして以降、EV関連のサプライチェーン構築が国策レベルで加速しており、今回の製品リストもその流れを後押しする格好だ。
定期的な見直し体制
科学技術省(Bộ Khoa học và Công nghệ)が主管官庁として関係省庁と連携し、経済社会の発展状況や上位機関の指導方針に基づいてリストを定期的に見直し・評価し、必要に応じて首相に更新を上申する仕組みが制度化された。技術進化のスピードに合わせて柔軟にリストを更新できる体制を整えたことは、政策の実効性を高める上で重要な点である。
投資家・ビジネス視点の考察
1. ベトナム株式市場・関連銘柄への影響
今回のリストに含まれる技術・製品を手掛ける上場企業は、法人税優遇や投資補助金など各種インセンティブの対象となる可能性がある。ホーチミン証券取引所(HOSE)に上場するIT大手のFPT(FPT Corporation、ベトナム最大のIT企業)は、AI・クラウド・ビッグデータの全領域で事業を展開しており、恩恵を受ける筆頭候補である。また、CMC Corporation(CMG)やViettel系のハイテク子会社群にも追い風が見込まれる。再生可能エネルギー関連では、電力セクター銘柄(REE、PC1など)への波及も注視すべきである。
2. 日本企業・ベトナム進出企業への影響
日本企業にとっては、ハイテク製品リストに自社製品が該当すれば、ベトナム現地法人が優遇措置を享受できる。特に半導体製造装置、産業用ロボット、医療機器、EV部品などを手掛ける企業は、ベトナムでの製造・開発拠点設立の検討材料となろう。JICA(国際協力機構)やJETRO(日本貿易振興機構)を通じた技術協力案件との相乗効果も期待される。
3. FTSE新興市場指数への格上げとの関連性
ベトナムは2026年9月にFTSE新興市場指数への格上げ判断が見込まれている。こうしたハイテク産業振興策は、ベトナム経済の構造高度化を国際投資家に示すシグナルとなり、格上げに向けたポジティブ材料の一つとなる。格上げが実現すれば、グローバルファンドからの資金流入によってハイテク関連銘柄の流動性が大幅に改善する可能性がある。
4. マクロトレンドにおける位置づけ
ベトナムは「中所得国の罠」からの脱却を国家目標に掲げており、労働集約型製造業から知識集約型産業への転換が急務である。今回の決定は、2045年までに先進国入りを目指すベトナムの長期国家戦略と整合しており、単なるリスト更新にとどまらず、産業構造転換の方向性を明確に打ち出したものと評価できる。
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出典: 元記事












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