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ベトナムのレー・ティエン・チャウ(Lê Tiến Châu)副首相が、法律制定プロセスに対するKPI(重要業績評価指標)によるスコアリング制度の試験導入を指示した。2026年第3四半期からの運用開始を目指し、実態に即した評価基準の策定が求められている。法整備の質を数値化するという画期的な取り組みであり、ベトナムの制度改革の方向性を示す重要な動きである。
法律制定にKPIを導入する背景
ベトナムでは近年、経済成長のスピードに法制度の整備が追いつかないという問題が顕在化してきた。不動産関連法、投資法、企業法など主要な法律が相次いで改正される一方で、施行細則(デクリーやサーキュラー)の発布が遅れ、現場で混乱が生じるケースが少なくない。特に2024年には土地法、住宅法、不動産事業法の3法が同時施行され、地方行政機関の対応能力が問われる場面が多く見られた。
こうした状況を受け、チャウ副首相は法律制定の質と速度を客観的に評価する仕組みの必要性を強調。「法律制定における評価・スコアリング(KPI)の試験的導入に関する提案」(Đề án thí điểm)の完成を関係機関に指示した。同提案には、法律の起草から公布までのプロセスを定量的に測定する評価基準と、それを支える情報システムの構築が含まれる。
制度の具体的な内容と狙い
今回の指示で注目されるのは、「実態に即した基準(tiêu chí phù hợp với thực tiễn)」という表現である。ベトナムではこれまでも法案の起草件数や審議スケジュールの遵守率といった形式的な指標は存在したが、法律が施行後に実社会でどの程度機能しているかという実効性の観点からの評価は十分ではなかった。
新たなKPI制度では、以下のような観点が評価対象になると見られる。
- 法案起草から公布までの所要期間
- パブリックコメントの反映度合い
- 施行後の企業・市民からのフィードバック
- 関連する施行細則の発布タイミング
- 法令間の整合性・矛盾の有無
また、これらの評価を支えるための情報システム(hệ thống thông tin)の整備も並行して進められる。各省庁が法律制定の進捗をリアルタイムで共有し、透明性を高める仕組みが想定されている。運用開始は2026年第3四半期(7〜9月)を目標としており、まずは試験的な導入から始め、段階的に本格運用へ移行する方針である。
ベトナムの制度改革の文脈
この動きは、トー・ラム(Tô Lâm)書記長の下で加速する行政改革の一環として位置づけられる。2024年後半以降、ベトナム政府は省庁の統合・再編、地方行政の効率化、そしてデジタルガバメントの推進を矢継ぎ早に打ち出してきた。法律制定プロセスへのKPI導入は、こうした「国家運営の近代化」路線を立法分野にまで拡大するものである。
ベトナムは一党制の社会主義国でありながら、市場経済化を進める「ドイモイ(刷新)」路線を1986年から継続してきた。しかし、法律の制定・改正が政治的な意思決定に依存する傾向が強く、プロセスの透明性や予見可能性に対する国内外からの懸念は根強い。今回のKPI制度は、そうした懸念に対する一つの回答と言える。
投資家・ビジネス視点の考察
法律制定の質が向上すれば、ベトナムのビジネス環境全体の予見可能性が高まる。これは外国直接投資(FDI)の誘致において極めて重要な要素であり、日系企業を含む進出企業にとって歓迎すべき動きである。
特に注目すべきは、2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数への格上げ判定との時間的な一致である。FTSEは市場アクセスの改善だけでなく、法制度の透明性や予見可能性も評価基準に含めている。法律制定にKPIを導入し、そのプロセスを可視化するという取り組みは、FTSEの評価において間接的にプラスに作用する可能性がある。
ベトナム株式市場への直接的な影響は限定的であるものの、中長期的には制度リスクの低減を通じて市場全体のバリュエーション向上に寄与するだろう。不動産、金融、インフラといった規制環境に大きく左右されるセクターにおいては、法令の整合性向上や施行細則の迅速な発布が業績の安定化につながる。ビンホームズ(Vinhomes、VHM)やノバランド(Novaland、NVL)といった不動産大手、あるいはベトコムバンク(Vietcombank、VCB)をはじめとする銀行セクターは、法制度の改善による恩恵を受けやすい銘柄群と言える。
日本企業にとっても、ベトナムの法制度が定量的に評価・改善されるサイクルが確立されれば、進出時のデューデリジェンスや現地でのコンプライアンス対応の負担軽減が期待できる。今後の提案の具体的な内容と、2026年の試験運用の成果を注視していく必要がある。
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出典: 元記事












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