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2026年4月26日、ベトナムの党書記長兼国家主席であるトー・ラム氏が、フン王記念日(雄王忌日)にあたりフン廟(デンフン)で演説を行い、「文化を守り、信頼を守り、国を日々豊かに強くする」という決意を表明した。ベトナムの国民的アイデンティティと国家発展の方向性を結びつけた重要な政治メッセージであり、経済・投資面からも注目に値する内容である。
フン王記念日とは何か——ベトナム建国神話と国民統合の象徴
フン王記念日(Giỗ Tổ Hùng Vương)は、旧暦3月10日に行われるベトナム最大の祖先祭祀行事である。ベトナム建国神話によれば、国祖ラック・ロン・クアン(貉龍君)と母祖アウ・コー(嫗姫)の間に生まれた100人の子(「百卵伝説」)が、ベトナム民族(キン族)の起源とされる。フン王はこの系譜に連なる伝説上の王朝であり、ベトナム北部フート省(Phú Thọ)にあるフン廟は国家特別史跡に指定されている。2012年にはユネスコ無形文化遺産にも登録されており、毎年数百万人が参拝に訪れる。
「同胞(ドンバオ)」というベトナム語は、文字通り「同じ胞(はら)から生まれた者」を意味し、百卵伝説に由来する。トー・ラム氏は演説でこの言葉に触れ、「フン廟に立つと、『同胞』という二文字がいっそう神聖に響く。同胞とは、同じ百卵から生まれ、同じ聖なる伝説を共有し、歴史の喜びも悲しみも分かち合い、困難の中で互いに寄り添い、国家の運命に対して共に責任を負う存在である」と述べた。
「歩み始めたなら、必ず目的地に到達せよ」——ホー・チ・ミンの言葉を引用
トー・ラム氏は、ホー・チ・ミン主席が1954年にフン廟の井戸殿(デン・ジエン)で語った有名な言葉「フン王たちは国を建てた。我々はともに国を守らなければならない」を引用した上で、1962年に再びフン廟を訪れた際の「歩み始めたなら、必ず目的地に到達せよ(Đã đi thì phải tới đích)」という言葉にも言及した。
トー・ラム氏はこの言葉を現代に当てはめ、「目標を掲げたなら粘り強く、国民に約束したなら必ず実行し、責任を引き受けたなら最後までやり遂げ、国家繁栄の道を選んだならいかなる困難にも怯んではならない」と強調した。
「国を守る」ことの現代的再定義
演説の中で特に注目されるのは、「国を守る」という概念の再定義である。トー・ラム氏は次のように述べた。
「今日、国を守るとは、かつての世代が経験した戦場での銃弾の話だけではない。国を守るとは、森を守り、水源を守り、社会の平穏を守り、家風の秩序を守り、各民族の言語と美しい風習を守り、幹部隊伍の清廉さを守り、党と国家、そして国の未来に対する国民の信頼を守ることでもある」。
この発言は、環境保全、社会秩序、少数民族文化の保護、そして何より「幹部の清廉さ」と「国民の信頼」に言及している点で、現在進行中の大規模な反汚職キャンペーンとも文脈が重なる。トー・ラム氏は2024年にグエン・フー・チョン前書記長の後任として党書記長に就任して以降、反汚職路線を継続・強化しており、今回の演説はその政治的メッセージを国民統合の文脈に織り込んだものと読み取れる。
「国民が中心」——具体的な生活改善への言及
トー・ラム氏は「党と国家は常に国民を中心・主体・力の源泉と位置づけている」と述べた上で、極めて具体的な問いかけを並べた。「子どもの通学路はより便利になったか。診療所は住民により良いサービスを提供しているか。労働者はより安定した仕事を得ているか。村落や街区はよりきれいになったか。貧困層や社会的弱者はより手厚い支援を受けているか。幹部は民に近く、民を敬い、民を理解し、民のために働いているか」。
少数民族地域や山岳地帯、困難な地域に対しては「政策が集落の一つひとつ、世帯の一つひとつ、個人の一人ひとりにまで届かなければならない」とし、「資源は適切な場所に、適切な用途に使われなければならず、成果は国民の生活における実際の変化で測られるべきだ」と語った。
フート省への期待と文化観光の展望
トー・ラム氏はフン廟を守り続けてきたフート省の住民に感謝を述べるとともに、「遺跡の保存は景観・環境・文化空間の保護と両立しなければならない。観光開発は住民の正当な利益、文明的な生活様式、長期的な持続可能性と結びつかなければならない」と述べた。フート省はフン廟のほか、ソアン歌(Hát Xoan、ユネスコ無形文化遺産)の発祥地としても知られ、文化観光のポテンシャルが高い地域である。
若い世代に対しては、「フン廟に来たのは綺麗な写真を撮るためでも、楽しいイベントに参加するためでもない。祖先は我々に一つの国を託した。若い世代はその国をより強く、より人間的に、より高い地位へと発展させなければならない」と呼びかけた。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の演説は直接的な経済政策の発表ではないが、ベトナムの政治動向を読む上でいくつかの重要な示唆を含んでいる。
第一に、政権の安定性と継続性のシグナルである。トー・ラム氏がホー・チ・ミンの言葉を繰り返し引用し、「目標を掲げたなら最後までやり遂げる」と強調したことは、現政権が掲げる経済成長目標(2045年までの先進国入り)や制度改革を着実に推進する意思の表れと見ることができる。ベトナムは2025年のGDP成長率目標を8%以上に設定しており、政治的安定は外国投資家にとって最も重要なファクターの一つである。
第二に、反汚職の継続である。「幹部の清廉さを守る」「国民の信頼を守る」という表現は、反汚職キャンペーンが引き続き最優先課題であることを示唆している。反汚職の徹底はビジネス環境の透明性向上につながる一方、短期的には大型プロジェクトの承認遅延リスクも伴う。不動産・インフラ関連銘柄を保有する投資家は引き続き注意が必要である。
第三に、FTSE新興市場指数への格上げとの関連である。2026年9月に決定が見込まれるFTSE格上げに向け、ベトナム政府は市場制度改革を加速させている。トー・ラム氏が「各国と肩を並べる」と述べた国家的野心は、資本市場の国際化にも直結するテーマであり、格上げが実現すれば数十億ドル規模の資金流入が期待される。
第四に、文化観光セクターへの追い風である。フン廟を含む文化遺産の保存・活用に国家トップが直接言及したことは、観光インフラ整備や地方創生関連の予算配分にプラスに働く可能性がある。フート省周辺の観光開発や、ベトナム全体のインバウンド観光戦略との関連で、観光・航空・ホスピタリティ関連銘柄にも中長期的な恩恵が見込まれる。
総じて、今回の演説は「文化的アイデンティティ」と「国家発展」を一体のものとして語る、トー・ラム政権の統治哲学を凝縮したものである。ベトナム投資において、政治指導者のメッセージを正確に読み解くことは、政策の方向性を予測する上で欠かせない作業である。
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ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
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