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ベトナム最大手の資産運用会社VinaCapital(ビナキャピタル)のデータによると、ベトナム株式市場に上場する銘柄の70%超がPER(株価収益率)10倍を下回る水準で取引されている。PER10倍割れが市場全体に広がるのは、過去の金融危機やコロナショックなど極端な局面でしか見られなかった現象であり、現在の市場が歴史的な割安圏にあることを示唆するものだ。
VinaCapitalが示した衝撃的なデータ
VinaCapitalは、ベトナムを拠点とする最大級の独立系資産運用会社であり、運用資産総額は数十億ドル規模に達する。同社は海外機関投資家向けのファンド運営でも知られ、ベトナム市場に関する分析データは国内外で高い信頼性を持つ。
そのVinaCapitalが明らかにしたのが、「上場株式の70%以上がPER10倍を下回っている」という事実である。PER10倍とは、企業の年間利益に対して株価がわずか10年分しか織り込まれていない水準を意味し、一般的には「割安」と判断される目安だ。新興国市場の平均PERは概ね12〜15倍程度で推移することが多く、10倍を切る銘柄が市場の大半を占める状況は異例中の異例といえる。
VinaCapitalによれば、このような広範なPER10倍割れが過去に観測されたのは、2008年のリーマン・ショック、2011年の欧州債務危機の余波、そして2020年のコロナ禍初期など、いずれも市場が深刻な危機に直面した局面に限られる。現在、ベトナム経済にそれほどの危機が訪れているわけではないにもかかわらず、バリュエーションだけが危機水準にまで低下しているのだ。
なぜベトナム株はここまで売り込まれたのか
現在の割安なバリュエーションの背景には、複数の要因が重なっている。
第一に、米中貿易摩擦の再燃と、それに伴う関税リスクの高まりである。2025年以降、米国がベトナムからの輸入品に対しても高関税を課す動きを見せたことで、輸出依存度の高いベトナム経済への悪影響が懸念された。ベトナムはGDPに占める貿易総額の比率が200%を超える「超開放型経済」であり、グローバルな貿易環境の変化に対して極めて敏感な構造を持っている。
第二に、外国人投資家の売り越しが長期化していることが挙げられる。2024年から2025年にかけて、海外投資家はベトナム市場で大幅な売り越しを続けてきた。この背景には、米ドル高やベトナムドン安への警戒、そして新興市場全体からの資金流出という構造的な要因がある。ベトナム市場は外国人の売買代金シェアが比較的高いため、海外勢の売りが市場全体のセンチメントを大きく左右する。
第三に、不動産セクターの調整長期化がある。ベトナムの時価総額上位銘柄には不動産関連企業が多く含まれるが、同セクターは2022年の社債危機以降、本格的な回復に至っていない。融資規制や法制度の整備遅れが重しとなり、業績回復が遅れている企業が少なくない。
「危機なき危機バリュエーション」が意味するもの
注目すべきは、ベトナムのマクロ経済指標自体はそこまで悪化していないという点である。2025年のGDP成長率は6%台後半を維持する見通しであり、製造業のFDI(外国直接投資)流入は依然として堅調だ。サムスン電子やインテルをはじめとする多国籍企業がベトナムの生産拠点を拡大し続けており、日本企業もベトナムを「チャイナ・プラスワン」の最有力候補と位置づけている。
つまり、実体経済のファンダメンタルズと株式市場のバリュエーションとの間に大きな乖離が生じている状態だ。こうした局面は、過去の経験則に照らせば、中長期的な投資機会となることが多い。VinaCapitalがあえてこのデータを公表した背景にも、「今が買い場である」というメッセージが含まれていると読み取れる。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場への影響:PER10倍割れの銘柄が70%を超えるという状況は、市場全体が「織り込み過ぎ」のフェーズに入っている可能性を示す。特に銀行株(VCB、BID、TCBなど)や消費関連株は、業績が堅調であるにもかかわらず歴史的な低PERで放置されているケースが散見される。米国の関税政策に一定の見通しが立てば、バリュエーションの巻き戻し(リレーティング)が起こる可能性がある。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げは、ベトナム株式市場にとって最大のカタリストとなり得る。格上げが実現すれば、パッシブファンドだけでも数十億ドル規模の資金流入が見込まれる。現在の「危機レベルの割安」が格上げ前の最後の仕込み局面となるシナリオも十分考えられる。VinaCapitalのような大手運用会社が割安さを強調するのも、この格上げを見据えた戦略的な情報発信と捉えることができるだろう。
日本企業・日本人投資家への示唆:ベトナムに進出済みの日本企業にとっては、取引先や現地パートナーの株価動向がM&Aや資本提携のコストに直結する。割安局面は戦略的な出資を行う好機でもある。また、日本の個人投資家にとっても、証券口座開設の手続き簡素化やETFを通じたアクセス手段の拡充が進むなか、ベトナム市場への関心を深めるきっかけとなるニュースである。
ただし注意点もある。PERが低いことは必ずしも「割安」を意味しない。業績の下方修正リスクが織り込まれている銘柄や、流動性が極端に低い小型株が全体の数値を押し下げている可能性もある。銘柄選別の重要性はかつてないほど高まっている局面だといえるだろう。
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出典: 元記事












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