ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
ベトナム株式市場で、これまで指数を牽引してきたVinグループ系銘柄が失速する中、銀行セクターへの資金シフトが鮮明になりつつある。5月26日の取引では、午後に入って銀行株が一斉に上昇し、市場全体のセンチメントを改善させた。「柱の交代(xoay trụ)」が実現するかどうかが、今後の相場の鍵を握る。
午後に一変した市場心理──銀行株が主役に
この日の午前中、市場は「外は赤、中は青(đỏ vỏ xanh lòng)」、つまり指数こそ冴えないものの個別銘柄では上昇が多い状態だった。しかし商いは薄く、上昇幅も限定的。VN30構成銘柄の銀行株はほぼ全面高だったが、ACB(アジア商業銀行)を除けば上げ幅はわずかにとどまっていた。
状況が一変したのは午後である。中東情勢をめぐる「ホットな紛争シグナル」が交渉の障害となり原油価格が反発するというネガティブ材料が出たにもかかわらず、市場心理は急速に強気に傾いた。
結果として、この日上昇した銀行株24銘柄のうち16銘柄が1%超の上昇を記録。銀行セクター全体の売買代金は前日比36%増加し、ホーチミン証券取引所(HSX)の板取引全体の約35.2%を占めた。これは過去7週間で最高の水準である。VN30の中でも銀行14銘柄が指数ウェイトの56.8%を占め、同じく7週間ぶりの高水準となった。
Vinグループ系の失速が深刻化
一方、これまでベトナム株式市場の「柱」として指数を支えてきたVinグループ(ベトナム最大手コングロマリット)系の銘柄は苦戦が続いている。この日、VIC(ビングループ)は2.65%安、VHM(ビンホームズ、不動産開発大手)は3.09%安で取引を終えた。この2銘柄は過去2週間以上にわたって軟調な展開が続いている。
仮に銀行株の上昇がなければ、VN-Index(ベトナム主要株価指数)はさらに大きな打撃を受けていたと見られる。実際、ACB、VCB(ベトコムバンク)、MBB(ミリタリー商業銀行)、VPB(VPバンク)、BID(BIDV=ベトナム投資開発銀行)、CTG(ベトインバンク)といった主要銀行株の上昇分を全て合わせても、VHM1銘柄の下落による指数押し下げ分をようやく相殺できる程度だった。
銀行株の上昇は証券株にも波及
銀行セクターの活況は証券株にも好影響を及ぼした。銀行・証券の両セクターは、ここ数週間にわたって株価水準がかなり低い位置で推移しており、まだ大きく上昇していない銘柄が多い。もし資金が本格的に「安定した株価水準を形成しつつある未上昇銘柄」へシフトしているのであれば、他の優良銘柄にも順番が回ってくる可能性がある。ここ最近の「柱銘柄だけを引き上げる」相場展開は、多くの良質な中小型株を置き去りにしてきた。
楽観は禁物──流動性はまだ低水準
ただし、この日の好転を過度に楽観視すべきではない。1日だけの変動は日常的に発生するものであり、トレンド転換の確証とはならない。この日の株価上昇は、買いの強さというよりも売り圧力の低下(供給の細り)による面が大きい。HSXとHNX(ハノイ証券取引所)の2市場合計の売買代金は15〜16兆ドン前後(協議取引を除く)にとどまっており、依然として低調な水準である。大口資金が本格的に市場に戻ってきたと判断できるのは、売買代金が明確に拡大した時である。
先物市場は難易度が高い展開
デリバティブ(先物)市場はこの日も難しい展開だった。銘柄グループ間の位相のズレが指数を振り回し、明確なトレーディングセットアップが形成されなかった。午前中はVinグループが弱い一方で銀行も目立たず、午後は銀行が上昇するとVinグループがさらに弱まるという構図である。VN30先物は2015〜2032ポイントの狭いレンジで推移し、ベーシス(現物と先物の乖離)が激しく変動したため、見た目の値幅ほどトレードしやすい局面ではなかった。
テクニカルポイント
VN30は2027.9ポイントで引けた。翌営業日の上値抵抗は2033、2042、2051、2060、2073、2081。下値支持は2019、2003、1991、1983、1970となっている。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の「柱の交代」期待は、ベトナム株式市場の構造的な特徴を浮き彫りにしている。VN-Indexは時価総額加重型であり、Vinグループ系や銀行大手など少数の大型株が指数に対して過大な影響力を持つ。そのため、特定セクターの不調が市場全体の印象を大きく左右する。
銀行セクターへの注目度が高まっている背景には、2025年に入ってからの業績改善期待がある。不良債権処理の進展や信用成長率の回復が見込まれており、株価が依然として割安な水準にとどまっている銘柄も多い。
2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数への格上げ判定も引き続き重要なテーマである。格上げが実現すれば、外国人投資家による大型株の買い需要が大幅に増加する見通しであり、VN30構成銘柄の中でも流動性が高い銀行株は最大の恩恵を受けるセクターの一つとなる。この観点からも、銀行株への資金シフトは中長期的なポジショニングの一環として理解できる。
日本の投資家にとっては、短期的なスイングトレードよりも、流動性が本格回復するタイミングを見極めた上でのエントリーが望ましい。現状の15〜16兆ドン水準の売買代金では、「T+(短期売買)の波乗り」が主体であり、中長期の買い資金が本格参入したとは言い難い。売買代金が20兆ドンを超えてくるような局面が、次の本格的な上昇相場の入口となる可能性が高い。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント