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ベトナム株式市場、2025年の新規発行株数が7年ぶり最高の482億株—短期的な需給悪化リスクを読む

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ベトナムの金融データ分析大手フィイングループ(FiinGroup)の最新リポートによると、2025年にベトナム株式市場で発行される株式数は約482億株に達し、2019年以来7年ぶりの高水準となる見通しである。大量の新規株式が市場に流入することで、短期的には株式の需給バランスが崩れ、相場に下押し圧力がかかる可能性が指摘されている。

目次

482億株発行の背景—なぜ今、企業は増資に走るのか

ベトナムでは近年、上場企業による資金調達ニーズが急速に拡大している。その主な背景としては以下の点が挙げられる。

第一に、銀行セクターの自己資本比率(CAR)引き上げ要請がある。ベトナム国家銀行(中央銀行)はバーゼルII・IIIへの段階的移行を推進しており、各商業銀行は資本増強のために大規模な増資を実施する必要に迫られている。実際、ベトナムの主要上場銀行はここ数年、株式配当や公募増資、第三者割当増資を繰り返しており、2025年もこの流れが加速している。

第二に、不動産デベロッパーやインフラ関連企業が、プロジェクト資金を確保するために株式発行に踏み切るケースが増えている。ベトナム政府は公共投資の大幅な拡大を掲げており、南北高速道路やロンタイン国際空港(ドンナイ省)など大型インフラプロジェクトが同時並行で進行中である。こうしたプロジェクトに関与する企業が、設備投資や用地取得のための資金を株式市場から調達する動きが顕著になっている。

第三に、ベトナム政府が企業の上場を促進する政策を推し進めていることも見逃せない。国営企業の株式会社化(エクイタイゼーション)やUPCoM市場(未上場公開企業市場)からホーチミン証券取引所(HOSE)への市場変更も引き続き進んでおり、新規上場に伴う株式発行も全体の数字を押し上げている。

2019年以来の高水準が意味するもの

フィイングループが「2019年以来」と比較対象に挙げたのには理由がある。2019年はベトナム株式市場が比較的安定した上昇基調にあり、多くの企業が好環境を利用して積極的に増資を行った年であった。その後、2020年にはCOVID-19パンデミックにより市場が混乱し、2021〜2022年には社債市場の崩壊や不動産セクターの信用不安が相次ぎ、企業の資金調達環境は一時的に冷え込んだ。2023年から2024年にかけて市場が徐々に正常化し、2025年にはついに7年前の水準を上回る大量発行に至ったという流れである。

482億株という規模は、ベトナム株式市場全体の時価総額や日々の取引量との対比で見ると極めて大きい。HOSEの1日あたり平均売買代金は2025年に入ってからおおむね15,000億〜25,000億ドン程度で推移しており、市場の吸収力には限界がある。新規発行株式の多くがロックアップ期間終了後に市場に放出されれば、需給の悪化は避けられない。

株式発行の主な手法と投資家への影響

ベトナムにおける株式発行には、大きく分けて以下の手法がある。

①株式配当(ボーナス株):利益剰余金や資本準備金を原資として既存株主に無償で株式を割り当てる方式。株主にとっては保有株数が増える一方、1株あたりの価値は希薄化するため、理論上は株価が調整される。ベトナムの銀行株ではこの手法が極めて多く用いられており、毎年のように20〜30%の株式配当を実施する銀行も珍しくない。

②公募増資(PO):既存株主に対して時価より割安な価格で新株引受権を付与する方式。資金調達を伴うため企業の財務基盤強化に直結するが、払込みに応じない株主の持分は希薄化する。

③第三者割当増資:特定の戦略的投資家やファンドに対して新株を発行する方式。外国人投資家への割当も多く、外資参入の重要なチャネルとなっている。

④ESOP(従業員持株制度):役員・従業員に対して優遇価格で新株を割り当てる方式。経営陣のインセンティブ設計として広く活用されているが、発行規模が大きい場合には希薄化懸念が生じる。

いずれの手法であっても、発行済株式数の増加は1株あたり利益(EPS)の希薄化をもたらし、PER(株価収益率)の上昇要因となる。投資家にとっては、個別銘柄を評価する際に「調整後EPS」で見る視点が不可欠である。

投資家・ビジネス視点の考察

短期的な需給悪化リスク:482億株という大量の新規発行は、市場に対して明確な売り圧力として作用する可能性がある。特にロックアップ解除が集中する時期には、一時的な株価下落が起きやすい。VN-Index(ホーチミン証券取引所の代表的指数)は2025年に入り1,200〜1,350ポイント前後で推移しているが、需給面からの調整局面では1,200ポイント割れのリスクも意識しておくべきである。

銀行セクターへの注目:発行株式数の大部分を銀行セクターが占めると見られる。VCB(ベトコムバンク)、BID(BIDV)、CTG(ビエティンバンク)といった国有商業銀行の大型増資計画は市場全体のセンチメントにも直結するため、そのスケジュールと条件を注視する必要がある。一方で、増資による自己資本の拡充は中長期的には信用格付けの向上や融資拡大余地の確保につながるため、ファンダメンタルズ面ではポジティブに評価できる側面もある。

FTSE新興市場指数への格上げとの関連:ベトナムは2026年9月にもFTSE新興市場指数(セカンダリー・エマージング)への格上げが決定される見込みである。格上げが実現すれば、グローバルのパッシブファンドからの資金流入が期待される。今回の大量株式発行は市場の流動性と時価総額を拡大させる効果があり、FTSEの評価基準である「市場の流動性」や「自由流通株比率(フリーフロート)」の改善に寄与する可能性がある。つまり、短期的にはネガティブに映る増資ラッシュも、中期的にはベトナム市場の「器」を大きくし、格上げ後の大規模資金流入に耐えうるインフラ整備として機能しうる。

日本企業・投資家への示唆:ベトナムに進出している日本企業にとって、現地パートナー企業の増資動向は資本政策や持分比率に直接影響する。第三者割当増資に応じるか否かの判断を迫られるケースも想定される。また、ベトナム株式ファンドを通じて投資している個人投資家にとっては、短期的なパフォーマンスの低迷を覚悟しつつも、増資による企業体質の強化と市場全体の拡大を見据えた中長期目線でのポジション維持が合理的な選択肢となるだろう。


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出典: 元記事

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