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2026年3月、ベトナム株式市場の代表的指標であるVN-Indexは4カ月ぶりに急反落し、月間で約11%もの下落を記録した。市場全体が売り圧力に覆われる中、証券セクターへの資金流入比率が底打ちから回復に転じるという注目すべき動きが確認された。投資家心理が極度に悪化した局面で、次の相場サイクルを見据えた資金の「仕込み」が始まっている可能性がある。
VN-Index、3月は-10.95%の急落——4カ月連続上昇に終止符
VN-Indexは2026年3月末時点で1,674.49ポイントとなり、前月比で-205.84ポイント(-10.95%)という大幅な下落を記録した。これは、2025年11月から2026年2月まで4カ月連続で上昇していたトレンドが明確に反転したことを意味する。
注目すべきは、この急落局面においても売買代金はむしろ増加していた点である。ホーチミン証券取引所(HOSE)における1日あたりの板寄せ取引の平均売買代金は2兆7,357億ドンに達し、前月比+5.93%、直近5カ月平均比でも+3.25%の増加となった。これは、下落局面でポジション解消の「投げ売り」が活発化したことを反映している。
3つの取引所(HOSE、HNX、UPCOM)合計では、1日あたりの平均売買代金は3兆3,822億ドン、うち板寄せ取引が3兆400億ドンとなり、前月比+6.84%、5カ月平均比+7.97%の増加であった。市場は明らかに売り方優勢の展開となり、資金は防御的な性格を帯びていた。
海外投資家は大幅売り越し、個人投資家と国内機関が受け皿に
3月の投資主体別売買動向は、市場参加者ごとの明確な温度差を浮き彫りにした。
海外投資家は合計1兆7,595.1億ドンの売り越しとなり、板寄せベースでも1兆6,413.3億ドンの売り越しであった。売り越しの中心は銀行セクターで、VIC(ビングループ=ベトナム最大手コングロマリット)、FPT(ベトナム最大手IT企業)、STB(サコムバンク)、VHM(ビンホームズ=不動産大手)、BID(BIDV=国営大手銀行)、HPG(ホアファット=鉄鋼最大手)などが上位に並んだ。一方で、小売セクターや食品・飲料セクターでは買い越しに転じており、MWG(モバイルワールド=家電量販最大手)、DCM(ペトロベトナム肥料化学)、MSN(マサングループ)、VNM(ビナミルク=乳業最大手)などが買い越し上位となった。
個人投資家は合計2,913.8億ドンの買い越し(板寄せベースでは4,758.9億ドンの買い越し)で、海外勢の売りを吸収する役割を果たした。板寄せベースでは18業種中7業種で買い越しとなり、銀行セクターが最大の買い越し先であった。買い越し上位にはFPT、VIC、STB、POW(ペトロベトナムパワー)、VHM、BID、SHB(サイゴンハノイ銀行)、VCB(ベトコムバンク=最大手国営銀行)などが並んだ。一方、食品・飲料セクターや小売セクターでは売り越しとなった。
自己売買部門(証券会社のプロップトレーディング)は合計2,445.9億ドンの買い越し(板寄せベース1,053億ドン買い越し)で、金融サービスセクターと小売セクターを中心に買いを入れた。買い越し上位にはFUEVFVND(VN30連動ETF)、MWG、SSI(ベトナム最大手証券会社)、HPG、VIX(VIX証券)などが並んだ。
国内機関投資家は最も積極的な買い手となり、合計1兆2,235.4億ドンの買い越し(板寄せベース1兆601.5億ドン買い越し)を記録した。銀行セクターが最大の買い越し先で、FPT、STB、VIC、VHM、VCB、HDB(HDバンク)、BID、SSIなどが上位に入った。
証券セクターに資金回帰の兆候——流動性比率が底打ち反転
今回のデータで最も注目されるのが、証券セクター(ベトナムの証券会社銘柄群)への資金流入の変化である。証券セクターの売買代金が市場全体に占める比率(流動性比率)は、2月の10.67%という底値から3月には14.51%へと明確に上昇した。
この流動性比率は、2025年7月の高値から一貫して低下傾向にあったが、2026年2月にようやく底を打ち、3月に反転上昇した格好である。証券セクターの株価指数は直近1カ月で-10.6%の下落を記録しているものの、直近1週間では+2.54%と初期的な反発の兆しも見られる。これは、証券セクターが「底値圏での買い集め」(アキュミュレーション)の段階に入りつつある可能性を示唆している。
証券会社の業績は市場の売買代金に直接連動するビジネスモデルであるため、市場が回復局面に入れば真っ先に恩恵を受けるセクターである。プロの資金が証券セクターに流入し始めているという事実は、「スマートマネー」が次の上昇サイクルを見据えて動き始めている可能性を示す重要なシグナルと言える。
セクター別資金動向:銀行は横ばい、不動産は底なし
セクター別の資金配分を見ると、市場全体の弱さが改めて浮き彫りになる。
銀行セクターは引き続き最大の流動性シェア(20.67%)を維持しているが、数カ月にわたり資金流入・流出が「行ったり来たり」の状態が続いており、明確な方向感が定まっていない。セクター株価指数も前月比-9.17%と調整圧力が続いている。資金の大規模な流出は見られないものの、牽引役としての力強さには欠ける状況である。
不動産セクターはさらに深刻で、流動性比率は12.30%と底値圏に接近し、株価も1カ月で-13.82%と急落した。資金が戻る気配はなく、調整圧力が依然として支配的である。
時価総額別の資金動向:大型株から中型株への資金シフト
時価総額別の資金配分にも興味深い変化が見られた。VN30(大型株30銘柄)は取引全体の53.1%を占めたが、2月の58.7%からは低下した。一方、VNMID(中型株)は37.4%に上昇し、VNSML(小型株)も5.7%に微増した。
株価パフォーマンスでは、VN30が-11.26%と最も大きく下落し、VNMID(-4.55%)やVNSML(-6.24%)を大きく下回った。大型株ほど売り圧力に対する感応度が高かったことがわかる。
売買代金の変化も顕著で、VN30は前月比-4.1%(-621億ドン)と減少した一方、VNMIDは+18.9%(+1,626億ドン)、VNSMLは+9.3%(+132億ドン)と増加した。大型株から中小型株への資金シフトが進行しており、大型株への集中的な売り圧力が市場全体の下落を主導した構図が読み取れる。
投資家・ビジネス視点の考察
証券セクターへの資金回帰は「先行指標」となるか。証券会社株は、ベトナム株式市場の売買代金と直結する収益構造を持つため、「市場回復の先行指標」として機能することが多い。今回、流動性比率が底打ちから反転したことは、市場参加者の一部が「最悪期は過ぎた」と判断し始めている可能性を示す。特に自己売買部門がSSIやVIXなどの証券株を積極的に買い越している点は注目に値する。
海外投資家の売り越しは構造的な要因も。海外勢の大幅な売り越しは、米国の関税政策や金利動向など外部要因に加え、新興国ファンドのリバランスの影響も考えられる。ただし、小売や食品といったディフェンシブセクターでは買い越しに転じており、完全な「ベトナム離れ」ではなく、セクターローテーションの側面も持つ。
FTSE新興市場指数への格上げ(2026年9月決定見込み)との関連。ベトナムがFTSE新興市場指数に格上げされれば、海外パッシブ資金の大量流入が見込まれる。その恩恵を最も直接的に受けるのは、取引量拡大で手数料収入が増加する証券セクターである。現在の証券株への資金流入は、この格上げイベントを先取りした動きである可能性も否定できない。格上げ決定前の「仕込み期」として、証券セクターの動向は今後も注視すべきである。
日本企業・投資家への示唆。ベトナムに進出している日本企業にとって、VN-Indexの急落自体は直接的な影響は限定的だが、不動産セクターの低迷が長期化すれば、工業団地や商業施設開発への波及も考えられる。一方、証券セクターの回復が本格化すれば、日系証券会社のベトナム子会社の業績にもプラスに働く。個人投資家の立場では、市場全体が調整局面にある今こそ、次の上昇局面で恩恵を受けるセクターの選別が重要な局面と言える。
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