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世界の株式市場が軒並み史上最高値を更新する「宴」が続く中、ベトナムのVN-Indexだけが2週連続の下落で5月を終えた。6月は日銀(BOJ)や欧州中央銀行(ECB)をはじめとする主要中央銀行の政策決定会合が相次ぎ、市場は本格的な「ストレステスト」に直面する。ベトナム大手証券MBS(MBセキュリティーズ)やミレアセット証券が示す6月の見通しと戦略を詳しく読み解く。
世界株は記録更新ラッシュ、ベトナムだけ蚊帳の外
先週の取引で、MSCI ACWI(先進国・新興国を包括する世界株指数)は週間+1.6%、年初来+11.5%を記録し、中東紛争勃発時点と比較しても+7%の水準にある。米国市場ではAI関連を中心にテクノロジー株が牽引し、Nasdaqが週間+2%超、S&P500が+1%超、ダウ平均が約+1%と三指数そろって史上最高値で引けた。5月月間ではNasdaqが+8%超と突出し、S&P500は+5%、ダウは約+3%であった。
アジアでも日本の日経225が週間+4.7%、韓国KOSPIが+8%、台湾が+3.2%と大幅上昇。年初来ではKOSPIが+101%、日経225が約+32%、台湾が+50.7%という驚異的なパフォーマンスを見せている。
一方、VN-Indexは5月最終週に1,863.49ポイントで引け、週間-13.64ポイント(-0.73%)と2週連続の下落となった。ビングループ(VIC、ベトナム最大コングロマリット)が指数を-8.5ポイント、ベトコムバンク(VCB、ベトナム最大手国有商業銀行)が-2.7ポイント押し下げるなど、主力銘柄の軟調が目立った。
6月の「ストレステスト」——中央銀行の利上げドミノ
MBS証券は6月の最大リスクとして、BOJとECBが利上げに動く可能性を挙げている。すでにアジアではオーストラリア、シンガポール、フィリピン、インドネシアの4カ国が金融引き締め方向に転じており、地域全体の資本コストに上昇圧力がかかっている。
さらに、米FRB(連邦準備制度理事会)の利下げ期待も後退しており、市場では2026年10月まで据え置き、年末にかけて追加利上げの可能性すら織り込まれ始めた。原油価格(ブレント)は年初来約50%上昇し、5月29日時点で92ドル/バレルに達しており、企業のコスト増要因としても警戒が必要である。
資金はAI・半導体に集中、東南アジア新興市場に「流動性の空白」
マイクロン(Micron)やSKハイニックス(SK Hynix、韓国の半導体大手)が時価総額1兆ドルクラブに仲間入りするなど、世界の投資資金はAI・半導体関連の成長資産に吸い寄せられている。その結果、東南アジアの新興市場には「流動性の空白」が生じており、ベトナム市場もその影響を直接受けている格好である。VN-Indexの売買代金は過去1年間で最低水準にまで落ち込んでおり、外国人投資家の売り越しも継続している。
ワールドカップ効果——過去データが示す「二面性」
6月にはワールドカップの開幕も控えている。MBSが2014年、2018年、2022年の過去3大会を分析したところ、大会期間中の市場流動性は平均-12%減少する一方、特定セクターには追い風が吹くパターンが繰り返されている。具体的には、大会前にテレビ・家電の売上が+18%増加し、大会期間中にはF&B(食品・飲料)セクターが+8〜10%の売上成長を記録する傾向がある。流動性は開幕から2週目に底を打つことが多く、個人投資家の関心分散が主因とみられる。
テクニカルと戦略——「慎重と忍耐」が6月のキーワード
VN-Indexは中長期の移動平均線(MA50、MA100、MA200)の上方に位置しているものの、短期的なテクニカル指標は高値圏からの2週連続調整を受けて悪化している。MBSは6月第1週も調整圧力が継続するとみており、主力株の弱さ、外国人の売り越し、中央銀行の利上げ傾向、情報空白期間の慎重な資金動向が引き続き市場を抑制すると指摘する。
下値サポートとしてはVN-Index 1,800ポイント付近が意識されており、流動性が急低下する中で「下方向にレンジを広げて買い需要を探る」展開が想定される。ミレアセット証券も同様に1,800〜1,850ポイントを支持帯とし、ファンダメンタルズの健全な銘柄への入れ替えを推奨している。
バリュエーション面では、VN-IndexのPER(株価収益率)が15.3倍まで低下しており、長期平均の17倍と比較して割安水準にある。MBSは2026年通年の上場企業利益成長率を+20%と予測しており、中長期的な投資妙味は依然として高いとの見解を維持している。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の局面で注目すべきポイントは複数ある。第一に、BOJの利上げ観測はベトナムにとって二重の意味で重要である。日本からベトナムへの直接投資(FDI)は常にトップクラスであり、円金利の上昇は日本企業のベトナム向け投資コストに影響し得る。また、円キャリートレードの巻き戻しがアジア新興市場全体からの資金流出を加速させるリスクもある。
第二に、2026年9月に判定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げとの関連である。VN-Indexの流動性低下と外国人の売り越しが長期化すれば、格上げ判定にとって逆風となりかねない。一方で、PER 15.3倍という割安なバリュエーションは、格上げが実現した際のパッシブ資金流入によるリターンを大きくする可能性がある。まさに「嵐の前の仕込み時」と見ることもできる。
第三に、ベトナム進出日系企業にとっては原油高と金利上昇のダブルパンチが懸念材料である。製造拠点としてのベトナムのコスト競争力が短期的に低下する可能性があり、為替動向(ドン安圧力)も含めて注視が必要である。
戦略としては、両証券会社が口をそろえる「慎重と忍耐」に加え、調整局面でこそ財務基盤の強い銘柄を仕込むという姿勢が妥当であろう。特にPER 15.3倍×利益成長+20%という組み合わせは、PEGレシオ(PER÷利益成長率)で0.77倍と、グローバル比較でも魅力的な水準にある。
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