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2025年5月12日午前のベトナム株式市場で、VN-Indexが前日比0.83%安(▲15.68ポイント)の1,879.82ポイントへ下落した。大型株(ブルーチップ)の全面安が指数を直撃し、直近の高値奪還の試みが失敗に終わったことが確認された格好である。流動性も前日午前比で25〜26%減少し、大口資金の退潮が鮮明になっている。
大型2銘柄だけで下落幅の8割を説明
今回の下落を語るうえで最も象徴的なのが、ホーチミン証券取引所(HoSE)時価総額トップ10銘柄の惨状である。VIC(ビングループ、ベトナム最大のコングロマリット)が▲2.78%、VHM(ビンホームズ、ビングループ傘下の不動産大手)が▲1.43%と大幅安となり、この2銘柄だけでVN-Indexを12ポイント以上押し下げた。全体の下落幅15.68ポイントの約77%をたった2銘柄が占めた計算である。
トップ10のうち唯一プラスだったのはGAS(ペトロベトナムガス)の+0.54%のみで、MBB(MBバンク)が横ばい(参照価格)、残りはすべて赤(下落)だった。銀行セクターの主力であるVCB(ベトコムバンク)、BID(BIDV)、CTG(ベトインバンク、▲1.12%)、TCB(テクコムバンク)、VPB(VPバンク)もそろって下落しており、いわゆる「柱(trụ)」銘柄群が総崩れとなった。
VN30でも上昇はわずか8銘柄、「質」も不足
ベトナム市場の主力30銘柄で構成されるVN30指数も▲0.47%で引けた。構成銘柄のうち上昇は8銘柄、下落は19銘柄。上昇組の顔ぶれはVRE(ビンコム・リテール、+2.38%)、LPB(リエンベトポストバンク、+1.70%)、STB(サコムバンク、+1.66%)、HDB(HDバンク、+1.12%)など、上げ幅はそこそこあるものの時価総額が相対的に小さい銘柄ばかりで、VIC1銘柄の下落インパクトすら相殺できなかった。VN30指数は時価総額キャップ(上限調整)が効いているため、VN-Indexほど大型株の影響を受けずに済んだという事情がある。
流動性が急減—ブルーチップは22日ぶり低水準
市場全体の流動性は、HoSEとHNX(ハノイ証券取引所)の2市場合算で前日午前比▲26%と大幅に縮小した。HoSE単独でも▲25%である。とりわけブルーチップの売買代金は前日午前比▲19%減で、過去22営業日で最低水準に沈んだ。HoSEの売買代金上位10銘柄のうち、VN30構成銘柄は5つにとどまり、大型株への資金流入が細っていることが数字でも裏付けられた。
大口資金(いわゆる「dòng tiền lớn」)の勢いが鈍化している背景には、VN-Indexが直近で高値を試したものの突破に失敗し、上値追いの買いが報われにくい状況が続いていることがある。指数が下がると多くの銘柄も連れ安するため、投機資金も積極的に動きにくい悪循環が生まれている。
中小型株には局所的な資金流入も
一方、指数の下落とは裏腹に、銘柄数ベースの「市場の広がり」はそこまで悪くない。VN-Index構成銘柄で上昇123、下落162と、下落の方が多いものの壊滅的ではなかった。1%超の上昇を見せた銘柄は49に上り、その合計売買代金はHoSE全体の約22.2%を占めた。ただし大半は薄商いで、実質的に資金が集中していたのは上位15銘柄程度にすぎない。
上昇組で売買代金が目立ったのは以下の銘柄である。
- DXG(ダットサイゴン・グループ、不動産):約375.7億ドン、+3.18%
- BSR(ビンソン製油所):約297.4億ドン、+1.08%
- GEL:約164.9億ドン、+1.01%
- DIG(DICグループ、不動産・インフラ):約158.1億ドン、+2.42%
さらにDXS(ダットサイゴン・サービシズ)がストップ高、CDC(+6.62%)、HII(+6.18%)、HHP(+2.15%)など、流動性の低い中小型株が大きく値を飛ばす場面もあった。
下落サイドは売り圧力よりも買い不在
VN-Index構成銘柄で1%超下落した65銘柄の合計売買代金はHoSE全体の約28%にとどまり、上昇組との差は小さい。つまり、大きな投げ売りが出ているわけではなく、買い手が不在のまま値がずるずると下がるパターンである。売買代金1,000億ドン超の下落銘柄はVIC、VHMのほか、VIX(▲1.55%)、MSN(マサングループ、▲1.03%)、SHB(▲1.06%)、CTG(▲1.12%)、GEE(▲6.09%)、DGC(▲1.85%)の8銘柄だった。
外国人投資家はネット売り約583.8億ドン
海外投資家はHoSEで約583.8億ドンのネット売りとなった。前日午前の約720億ドンからはやや縮小したものの、依然として売り越し基調が続いている。売り越し上位はVHM(▲117.3億ドン)、FPT(▲83.5億ドン)、MSB(▲60.4億ドン)、VCB(▲53.1億ドン)。一方、買い越し上位はVRE(+87.3億ドン)、GEX(+31.9億ドン)、VIC(+27.7億ドン)であった。VICは株価が下落する中で外国人が拾っている点はやや興味深い。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の午前の動きは、VN-Indexの「高値更新失敗」を市場が織り込み始めたことを示唆している。テクニカル的には直近の上昇トレンドに対する調整局面入りの可能性が高まった。特にブルーチップの流動性が22日ぶり低水準まで落ち込んだ点は、機関投資家や大口の「様子見」が強まっていることの証左である。
2026年9月に判断が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナムの格上げに向けて、市場の流動性や外国人売買動向は重要な指標となる。足元の外国人ネット売りが継続する場合、格上げ期待が剥落するリスクも頭の片隅に入れておく必要がある。ただし、売り越し額自体はまだ小幅であり、過度に悲観する段階ではない。
日本企業やベトナム進出企業にとっては、不動産セクター(VIC・VHM・DXG・DIG)の値動きが現地の景況感を映す鏡となる。ビングループ関連の下落が続くようであれば、不動産市場の回復期待に水を差す可能性があり、現地で事業展開する日系デベロッパーや建設会社にも間接的な影響が及びうる。
短期的には、午後の取引で大型株に買い戻しが入るかどうかが焦点である。流動性が回復しないまま指数がずるずると下げるようであれば、1,850ポイント台のサポートラインが次の攻防ポイントとなるだろう。
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