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ベトナム民間経済白書2025発表—省庁再編後の新指標PCI 2.0とBPIが示す4つの構造的課題

VCCI công bố Báo cáo Kinh tế tư nhân Việt Nam năm 2025, ra mắt phiên bản PCI 2.0 và BPI
📘 この記事は「ベトナム経済研究会」が提供するベトナム最新ニュース解説です。
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2026年5月15日、ベトナム商工会議所(VCCI)がハノイで「ベトナム民間経済報告書2025」を正式に公表した。21年間にわたり発行されてきた同報告書は今回、方法論の大幅刷新により「PCI 2.0」へ進化し、さらに民間経済の「アウトプット」を測る新指標「BPI(民間経済効率指数)」を初めて導入した。行政単位の統合(63省・市→34省・市)、二層制地方政府への移行、そして民間経済を「最も重要な成長エンジン」と位置づける第68号決議の施行1周年という歴史的節目に発表された本報告書は、ベトナム経済の現在地と課題を鮮明に映し出している。

目次

調査の概要と民間セクターの現状

報告書は国内民間企業3,546社、外資系(FDI)企業586社、個人事業主1,001者を対象とした大規模実証調査に基づく。2025年末時点でベトナム全土の稼働企業数は100万社超(前年比6.6%増)、約610万の個人事業主と合わせ民間セクターは約2,600万人の雇用を創出し、全雇用の50.2%を占める。2025年の新規参入企業数は過去最高の29万7,500社(前年比27.4%増)に達し、85.7%の企業が「事業規模を維持または拡大中」と回答した。2023〜2024年の困難期を経て、慎重ながらも前向きな姿勢が広がっていることが読み取れる。

4つの構造的ボトルネック

報告書は民間セクターが直面する4つの大きな「詰まり」を率直に指摘している。

①販路・市場アクセス:顧客獲得に困難を感じる企業は60.2%に達し、2024年の45.3%、2022年の41%から急上昇した。内需の伸び悩みと輸出先の需要変動が重なっている構図である。

②資金調達:75.5%の企業が「担保資産がなければ融資を受けられない」と回答。融資における担保要求率は93.5%に上り、マレーシア(33.4%)、タイ(55.8%)、世界平均(68.3%)を大きく上回る。中小零細企業にとって資金調達の壁は依然として高い。

③透明性:政策変更を「常に予測できる」と答えた企業はわずか6〜8%にとどまり、51.9%がSNSを通じて法令草案の情報を入手しているという実態が明らかになった。公式チャネルの情報発信力不足は深刻である。

④非公式コスト(いわゆる賄賂的費用):営業許可取得時に非公式コストが発生したと回答した企業は26%で、東南アジア地域平均の9.5%の約3倍に達する。

加えて、イノベーション能力にも大きな課題がある。製品・サービスの革新活動を行っている企業はわずか8.8%で、マレーシア(21.7%)、タイ(18.9%)、東アジア太平洋地域平均(28.5%)に大きく劣後する。個人事業主に至っては81.5%が前年比で売上減少を報告しており、持続可能な転換への道筋が急務となっている。

PCI 2.0:省庁再編に対応した新たな地方ガバナンス評価

VCCI副事務局長のダウ・アイン・トゥアン氏によると、PCI 2.0は9つの構成指数・98指標から成る。具体的には「市場参入」「資源アクセス」「透明性」「行政手続き遵守コスト」「非公式コスト」「公平な競争」「企業支援政策」「法的制度」「創造的行政(チャインクエン・キエンタオ)」の9分野である。

省の統合により地方間の条件差が拡大したことを踏まえ、2025年は従来の順位表形式から6段階の「ガバナンス品質グループ」分類へ移行した。全国中央値は100点満点中63.90点であった。

最上位の「良好」グループに入った5地方自治体はアルファベット順に以下の通りである。

  • バクニン省:「創造的行政」(6.67点)と「行政手続き遵守コスト」(8.93点)で全国首位。サムスンをはじめとする電子産業集積地として知られる。
  • ダナン市:「市場参入」で全国最高の8.70点。中部ベトナムの経済ハブとしての地位を改めて示した。
  • ハイフォン市:9指数中7指数が全国トップ10入りと、最もバランスの取れたガバナンスを実現。北部最大の港湾都市として日系企業の進出先としても人気が高い。
  • フートー省:「資源アクセス」で全国2位。紅河デルタの北に位置し、近年工業団地の開発が進む。
  • クアンニン省:「公平な競争」と「創造的行政」で高水準を維持。ハロン湾を擁する観光地であると同時に、近年は経済特区構想で注目を集める。

新指標BPI:政策の「成果」を3年のタイムラグで測定

BPI(Business Performance Index=民間経済効率指数)は23指標から構成され、「民間セクターの発展度」と「イノベーション能力」の2軸で評価する。PCI が制度面の「インプット」を測るのに対し、BPIは市場における「アウトプット」を測る位置づけである。

2025年の試行結果では、ホーチミン市が5.67点で首位、ハノイが5.41点で2位、クアンニン省が5.33点で3位となった。全国中央値は4.20点である。

注目すべきは、2022年時点のPCIスコアと2025年のBPIスコアの間に統計的に有意な正の相関が確認されたことである。これは地方政府のガバナンス改革が民間経済の成果に反映されるまでに約3年の時間差があることを示唆しており、短期的な成果に一喜一憂せず長期的な改革を継続すべきという政策的含意を持つ。

VCCI会長の展望:「防衛から攻勢へ」

VCCIのホー・シー・フン会長(準教授・博士)は「ベトナムの民間経済セクターは防衛段階を脱し、内部体力を蓄積しつつある。市場・資金・政策透明性の3つのボトルネックが今後12〜18カ月で果断に解消されれば、飛躍の準備は整っている」と述べた。さらに「2030年までに企業数200万社」という国家目標の実現には、行政の思考を「管理」から「伴走」へ、「手続き負担の軽減」から「企業の競争力創出」へと根本的に転換する必要があると強調した。

投資家・ビジネス視点の考察

ベトナム株式市場への影響:民間セクターの活力回復は中長期的にVN-Indexの底上げ要因となる。特に新規企業数の過去最高更新は、銀行・リース・オフィス不動産セクターへの需要増を示唆する。一方、担保融資偏重の構造は、信用保証やフィンテック分野に新たなビジネス機会を生む可能性がある。

日系企業への示唆:ハイフォン市やバクニン省が引き続き高評価を得たことは、北部ベトナムの日系製造業集積地としての信頼性を裏付ける。省の統合後も行政サービスの質が維持・向上していることは、追加投資を検討する企業にとって安心材料である。一方、非公式コストの高さ(26%)は依然としてコンプライアンスリスクとして注視すべきポイントである。

FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に判断が見込まれるFTSE格上げにおいて、制度の透明性や市場アクセスの改善は重要な評価項目である。PCI 2.0やBPIの導入によりガバナンス評価の国際標準化が進むこと自体が、ベトナム市場の「制度的成熟」を対外的にアピールする材料となり得る。ただし報告書が指摘する政策予見性の低さ(6〜8%)やSNS依存の情報取得構造は、海外機関投資家にとって依然リスク要因であり、改善の進捗が注目される。

マクロトレンドにおける位置づけ:63省から34省への大規模な行政統合と同時に民間経済指標の刷新が行われたことは、ベトナムが「量的拡大」から「質的深化」のフェーズへ移行しつつあることを象徴している。企業数100万社突破という量的マイルストーンの次は、イノベーション率8.8%をいかに引き上げるかという質的課題が焦点となるだろう。


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出典: 元記事

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