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ベトナム洋上風力発電「場所取り」防止へ—副首相が投資独占を牽制、今後の制度設計に注目

Phó thủ tướng: Không để phát sinh cơ chế 'giữ chỗ' dự án điện gió ngoài khơi
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ベトナムのチャン・ホン・ハー副首相は、洋上風力発電プロジェクトの調査許可について、それが投資方針の承認と同義ではないと明言し、「場所取り(giữ chỗ)」や投資の独占が生じることのないよう制度設計を徹底するよう関係機関に指示した。再生可能エネルギー大国を目指すベトナムにとって、洋上風力は最重要セクターの一つであり、今回の発言は内外の投資家に対する重要なシグナルとなる。

目次

副首相の発言の背景と要旨

ベトナム政府は近年、2050年のカーボンニュートラル達成を掲げ、第8次国家電力開発計画(PDP8)において洋上風力発電の大幅な拡大を盛り込んでいる。PDP8では2030年までに洋上風力で6GW(ギガワット)の導入を目標としており、南部沖やビントゥアン省沖、北部のクアンニン省沖など、有望な海域が複数特定されている。

こうした中、国内外の企業が洋上風力の開発権を巡って相次いで調査申請を行っており、一部では「調査許可を取得すること自体が事実上の開発権確保になるのではないか」との懸念が浮上していた。実際、ベトナムの再エネ開発においては過去に陸上風力や太陽光発電で類似の問題が発生しており、調査許可を取得したまま着工しない「場所取り」的な行為が横行し、本来の開発が滞るケースが報告されていた。

チャン・ホン・ハー副首相は今回の指示で、以下の点を明確にした。

  • 洋上風力の「調査許可(giao khảo sát)」は、あくまで海域の地質・風況・環境などを調べるための許可であり、投資方針の承認(chấp thuận chủ trương đầu tư)とは完全に別のプロセスである。
  • 調査許可を得た企業が、その海域における投資の優先権や独占権を自動的に得るわけではない。
  • 制度設計において、場所取りや独占が発生しない仕組みを整備するよう関係省庁に求めた。

なぜ「場所取り」が問題なのか—過去の教訓

ベトナムでは2019年から2021年にかけて、固定価格買取制度(FIT)を背景に太陽光発電および陸上風力発電が爆発的に増加した。FIT適用の期限に間に合わせるために多数のプロジェクトが駆け込み申請され、中には実際の開発能力や資金力が不足したまま許認可を取得するケースが散見された。これらのプロジェクトの一部は、許可だけ取得して第三者に転売する、いわゆる「ペーパープロジェクト」となり、電力供給計画に遅延が生じる原因となった。

洋上風力発電は陸上の再エネと比べて桁違いの投資額と技術力を必要とする。1プロジェクトあたり数十億ドル規模の投資が見込まれるため、場所取りが発生した場合の社会的・経済的コストは極めて大きい。副首相の今回の発言は、こうした過去の反省を踏まえたものである。

ベトナム洋上風力市場を巡る各国企業の動向

ベトナムの洋上風力ポテンシャルは世界銀行の調査でも東南アジア最大級と評価されており、沿岸部の平均風速は毎秒7〜9メートルに達する地域もある。この巨大な市場を巡り、デンマークのオーステッド(Ørsted)、ノルウェーのエクイノール(Equinor)、日本の電力各社やJERA、韓国のSKグループなど、世界有数のエネルギー企業が参入の機会を窺っている。

日本企業にとっても、ベトナムの洋上風力は重要な投資先候補である。JERAやJパワー(電源開発)、丸紅、住友商事などがベトナムのエネルギーセクターで既に一定のプレゼンスを築いており、洋上風力への本格参入が期待されている。今回の副首相の発言は、透明で公正な競争環境が整備される方向性を示唆するものであり、日本を含む外国企業にとっては前向きな材料と受け取れる。

制度面の課題—まだ道半ば

一方で、ベトナムの洋上風力に関する法制度は依然として整備途上にある。PDP8では導入目標が示されたものの、具体的な入札制度、電力買取価格(FITまたは競争入札方式)、海域使用の許認可手続き、環境影響評価の基準など、投資家が意思決定を行うために必要な「細則」が未整備のままとなっている部分が多い。

特に問題となっているのが以下の点である。

  • 電力購入契約(PPA)の枠組み:ベトナム電力公社(EVN)との売電契約の条件が明確でないため、プロジェクトファイナンスの組成が困難。
  • 海域利用権と漁業権の調整:洋上風力の建設予定海域と既存の漁業権が重複するケースへの対応策が不十分。
  • 送電インフラ:大規模な洋上風力の電力を陸上の送電網に接続するための設備投資計画が具体化していない。

副首相の今回の指示は、こうした制度整備の一環として「調査段階」と「投資承認段階」を明確に分離し、透明性の高いプロセスを構築しようとするものと位置づけられる。

投資家・ビジネス視点の考察

今回の副首相発言は、ベトナム株式市場や関連セクターに対して複数のインプリケーションを持つ。

1. 再エネ関連銘柄への影響:ベトナム株式市場に上場するエネルギー関連企業のうち、洋上風力への参入を表明している企業にとっては、制度の透明化は中長期的にプラス材料である。一方、調査許可だけで「先行者利益」を確保しようとしていた企業にとっては、思惑が外れるリスクがある。具体的には、ペトロベトナム傘下のPVパワー(POW)やペトロベトナムテクニカルサービス(PVS)など、洋上エネルギーの技術・インフラを有する企業が注目される。

2. 日本企業への影響:制度の透明化と公正な競争環境の整備は、日本のエネルギー企業がベトナム洋上風力に参入する際の障壁を下げる可能性がある。特に、日本政府が推進する「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」の枠組みにおいて、ベトナムは重点パートナー国の一つであり、官民連携による洋上風力開発の加速が期待される。

3. FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに向けて、ベトナム政府は市場の透明性やガバナンス向上に注力している。エネルギー政策においても、不透明な許認可プロセスの是正は「制度の質」を示す重要なシグナルであり、FTSE格上げの評価にも間接的にプラスに働く可能性がある。

4. ベトナム経済全体の位置づけ:ベトナムは製造業の拠点として急速に存在感を高めているが、安定的な電力供給は外資誘致の根幹を成す課題である。2023年には北部で深刻な電力不足が発生し、日系を含む多くの工場が操業停止を余儀なくされた。洋上風力を含む再エネの拡大は、電力供給の多様化と安定化の観点から、ベトナム経済の持続的成長に不可欠な要素であり、今回の制度整備の動きはその基盤づくりの一歩と評価できる。


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出典: 元記事

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