ベトナム税制改革:小規模企業の免税基準を1.5〜2兆ドンに引き上げへ—個人事業主との格差是正なるか

'Ngưỡng miễn thuế cho doanh nghiệp nhỏ nên cao hơn hộ kinh doanh'
📘 この記事は「ベトナム経済研究会」が提供するベトナム最新ニュース解説です。
ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中

ベトナムで小規模企業向けの免税基準(課税免除の売上高上限)を、個人事業主(ホーキンドアン)より20〜30%高い水準、すなわち約15億〜20億ドンに設定すべきだとする専門家の提言が注目を集めている。これは、正規の企業登記に伴う追加的な運営コストを補填し、個人事業主から法人への転換(チュエンドイ)を促進する狙いがある。

目次

提言の背景:個人事業主と法人企業の「不公平な競争環境」

ベトナムには現在、約500万以上の個人事業主(hộ kinh doanh)が存在するとされ、その多くが小規模な商店、飲食店、サービス業などを営んでいる。一方、正規の企業登記を行った法人企業は約90万社前後に留まる。この圧倒的な差の背景には、法人化に伴う会計処理義務、社会保険料の負担、税務申告の複雑さといったコスト増が大きく影響している。

現行のベトナム税制では、個人事業主に対しても一定の売上高を超えた場合に課税が行われるが、その免税基準は比較的低い水準に設定されている。問題は、法人企業に課される免税基準が個人事業主と同等、もしくはそれに近い水準であるため、わざわざ法人化するインセンティブが乏しいという点である。法人になれば会計帳簿の整備、社会保険への加入、労働法令の遵守など、追加的な管理コストが発生する。それにもかかわらず税制上の優遇がほとんどないとなれば、多くの事業者が個人事業主のまま留まるのは当然の選択と言える。

専門家の具体的提案:免税基準を15億〜20億ドンに

今回の提言を行った専門家は、小規模企業の免税基準を個人事業主より20〜30%高い水準に設定すべきだと主張している。具体的には、約15億〜20億ドン(tỷ đồng)程度の年間売上高を免税ラインとする案である。この水準であれば、法人化に伴う追加的な運営コスト——会計士の雇用費用、社会保険料の事業主負担分、各種ライセンス取得費用など——を十分に補填できるとしている。

この提案の核心は単なる減税措置ではなく、ベトナム経済の「フォーマル化(正規化)」を加速させることにある。個人事業主のままでは銀行融資へのアクセスが制限され、国際的なサプライチェーンへの参入も困難である。法人化を促進することで、透明性の高い経営が広がり、税収基盤の拡大にもつながるという長期的なビジョンが背景にある。

ベトナム政府の「企業化」推進政策との整合性

ベトナム政府は以前から、個人事業主の法人化を推進する方針を掲げてきた。2020年に施行された企業法(Luật Doanh nghiệp)の改正でも、個人事業主から法人への転換手続きの簡素化が図られた。また、2025年の企業法改正の議論においても、小規模・零細企業への支援措置の強化が重要テーマとなっている。

しかし、法的枠組みの整備だけでは不十分であり、税制面でのインセンティブがなければ実際の転換は進まないというのが現場の実感である。ベトナム商工会議所(VCCI)が実施した調査でも、個人事業主が法人化を躊躇する最大の理由として「税負担・管理コストの増加」が挙げられている。今回の提言は、こうした現実的な障壁を税制面から取り除こうとするものであり、政府の企業化推進政策と方向性が一致している。

アジア近隣国との比較

近隣のASEAN諸国でも、中小零細企業への税制優遇は重要な政策課題となっている。たとえばタイでは、年間売上高が180万バーツ以下の事業者はVAT(付加価値税)の登録義務が免除される。インドネシアでも、年間売上高が一定基準以下の中小企業に対して所得税率を0.5%に軽減する措置が導入されている。ベトナムが競争力のある投資環境を維持するためには、こうした地域内の税制トレンドとの整合性も考慮する必要がある。

投資家・ビジネス視点の考察

この税制改革の議論は、ベトナム株式市場に直接的なインパクトを与えるものではないが、中長期的な視点では複数の重要な示唆を含んでいる。

第一に、ベトナム経済の構造的な課題の可視化である。個人事業主が圧倒的多数を占めるベトナムの産業構造は、GDP統計や税収の捕捉率に影響を与えている。法人化が進めば、経済統計の精度が向上し、ベトナムの実質的な経済規模がより正確に評価されるようになる。これは、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げ審査において、市場の透明性・ガバナンスの向上として間接的にプラスに作用する可能性がある。

第二に、会計・税務サービス関連企業への追い風である。法人化が進めば、会計ソフトウェアや税務申告サービスへの需要が拡大する。ベトナム上場企業の中では、FPTコーポレーション(FPT、ベトナム最大手IT企業)傘下のデジタルソリューション部門や、MISA(会計ソフト大手、未上場)などが恩恵を受ける可能性がある。

第三に、日系企業への影響である。ベトナムに進出している日系企業の多くは、現地の中小サプライヤーとの取引を行っている。これらのサプライヤーが法人化すれば、契約の透明性や品質管理の向上が期待でき、サプライチェーン全体の信頼性が高まる。特に製造業においては、裾野産業の法人化促進は日系メーカーにとっても歓迎すべき動きである。

第四に、ベトナムの税収構造の安定化である。法人化によって課税ベースが拡大すれば、政府のインフラ投資や社会保障支出の財源が安定する。これは長期的にベトナム国債の信用力向上にもつながり、資本市場全体の発展に寄与する。

ただし、免税基準の引き上げが実現するかどうかは、財政当局との調整次第である。短期的な税収減を懸念する財務省との間で、どのような落としどころが見出されるかが焦点となる。今後の国会審議や財政部門の反応に注目したい。


いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。

この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。

📊 ベトナム経済研究会メンバーシップ
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する

出典: 元記事

noteメンバーシップのご案内

ベトテク太郎noteメンバーシップ
'Ngưỡng miễn thuế cho doanh nghiệp nhỏ nên cao hơn hộ kinh doanh'

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次