ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
ベトナム航空(Vietnam Airlines、ホーチミン証券取引所ティッカー:HVN)が、2026年第2四半期に赤字転落する見通しであることが明らかになった。第1四半期に過去最高となる4,500億ドン超の純利益を記録したにもかかわらず、航空燃料価格の高止まりが重くのしかかり、2026年上半期の累計利益はマイナスに沈む可能性が出ている。コロナ禍からの経営再建途上にある同社にとって、再びの赤字転落は投資家心理に大きな影を落しかねない。
第1四半期は過去最高益も、一転して第2四半期は赤字予想
ベトナム航空は2026年第1四半期、4,500億ドンを超える純利益を計上した。これは同社の四半期ベースとしては過去最高の数字であり、テト(旧正月)シーズンの旺盛な旅行需要や国際線の回復が大きく寄与したとみられる。ベトナムでは毎年1〜2月にかけてテト休暇に伴う帰省・旅行ラッシュが発生し、航空業界にとっては年間で最も収益性の高い時期にあたる。
しかしながら、同社は2026年第2四半期に赤字に転じる見通しを示している。その結果、2026年上半期(1〜6月)の累計損益はマイナスとなる公算が大きい。第1四半期に積み上げた利益を第2四半期の損失が上回る形となれば、上半期としては純損失を計上することになる。
最大の要因は航空燃料価格の高止まり
赤字転落の最大の要因として指摘されているのが、ジェット燃料(航空燃料)価格の高止まりである。航空燃料費は航空会社にとって運航コストの最大の構成要素であり、一般的に総コストの30〜40%を占める。燃料価格が高水準で推移すると、いくら旅客数が増加しても利益を確保することが困難になる。
ベトナム航空は、コロナ禍で深刻な財務危機に陥り、政府からの資本注入や各種救済措置によってかろうじて経営を維持してきた経緯がある。2024年以降は旅客需要の回復に伴い業績改善が進んでいたものの、燃料価格という外部要因が再び収益を圧迫する構図は、同社の脆弱な財務体質を改めて浮き彫りにしている。
航空燃料価格は国際原油市場の動向に連動しており、中東情勢の緊迫や産油国の減産政策、さらにはドル高などが複合的に影響している。ベトナム航空はヘッジ(燃料先物取引による価格変動リスクの軽減)の規模が限定的であるとされており、燃料価格変動の影響を直接的に受けやすい体質にある。
ベトナム航空の経営再建と構造的課題
ベトナム航空はベトナム最大のフルサービスキャリア(FSC)であり、国営企業としてベトナム政府が筆頭株主の座にある。ハノイのノイバイ国際空港とホーチミン市のタンソンニャット国際空港を主要拠点とし、国内線・国際線合わせて広範なネットワークを展開している。
コロナ禍では累計数兆ドン規模の損失を計上し、債務超過に陥った。政府は2021年に約8,000億ドンの資本注入を含む救済パッケージを承認し、同社の存続を支えた。その後、段階的な増資や経営合理化を進め、2024年から2025年にかけて黒字転換に成功していた。2026年第1四半期の過去最高益はまさにその回復軌道を象徴するものであったが、今回の赤字見通しは回復の持続性に疑問符をつけるものとなった。
ベトナム航空にとっての構造的課題は複数存在する。第一に、前述の燃料価格リスクへの脆弱性である。第二に、格安航空会社(LCC)であるベトジェットエア(VietJet Air、ティッカー:VJC)やバンブー・エアウェイズとの国内線での激しい競争がある。第三に、老朽化した機材の更新負担や、ロングタン国際空港(ドンナイ省に建設中の新空港)開業を見据えたインフラ投資の必要性も中長期的に重くのしかかる。
季節性要因——第2四半期はそもそも弱い時期
補足しておくべき点として、ベトナムの航空業界には明確な季節性がある。第1四半期はテトシーズンの恩恵で例年好調となる一方、第2四半期(4〜6月)は需要が相対的に落ち込む端境期にあたる。特に国内線においてはテト後の反動減が顕著であり、単価の低下や搭乗率の悪化が起こりやすい。
したがって、第2四半期の赤字そのものは季節要因として一定程度説明可能である。しかし、第1四半期の過去最高益をも打ち消すほどの損失が見込まれている点は、燃料コスト上昇の深刻さを物語っている。
投資家・ビジネス視点の考察
●ベトナム株式市場・関連銘柄への影響
ベトナム航空(HVN)の株価は、経営再建の進展とともに回復基調にあったが、今回の赤字見通しは短期的な売り圧力を招く可能性が高い。同業のベトジェットエア(VJC)も燃料高の影響を同様に受けるが、LCCモデルのコスト構造の違いから影響度には差が出る可能性がある。航空関連銘柄だけでなく、空港運営を手がけるACV(ベトナム空港総公社)や航空関連サービス企業にも間接的な影響が波及し得る。
●日本企業への影響
ベトナム航空はANA(全日本空輸)と資本業務提携関係にあり、ANAホールディングスはベトナム航空の株式を保有している。ベトナム航空の業績悪化はANAの持分法損益にも影響を与える。また、日越間の航空路線を共同運航(コードシェア)しており、ベトナム航空の経営不安定化は日越間のビジネス往来にも間接的な影響を与えかねない。日本からベトナムへの投資・進出が活発化する中、航空インフラの安定性は重要な関心事項である。
●FTSE新興市場指数への格上げとの関連
ベトナム株式市場は2026年9月にFTSE新興市場指数への格上げ判定を控えている。格上げが実現すれば海外からの機関投資家マネーが大量に流入すると期待されているが、HVNのような大型銘柄の業績不安定はベトナム市場全体のセンチメントに影響を与えるリスクがある。一方で、格上げに伴う資金流入が相場全体を下支えし、個別銘柄の悪材料を吸収する展開も考えられる。
●ベトナム経済全体のトレンドにおける位置づけ
ベトナムは2026年もGDP成長率7%前後の高成長が見込まれており、航空旅客需要の中長期的な拡大トレンドに変わりはない。しかし、燃料価格という外部変数が航空業界の収益を大きく左右する現実は、ベトナムの航空セクター投資におけるリスク要因として常に意識しておく必要がある。ベトナム航空が再び赤字に転落するリスクは、同社の財務基盤の脆弱さと、国営企業としてのガバナンス改革の遅れを反映しているとも言える。中長期的な投資判断においては、燃料価格の動向、政府の追加支援の有無、そして経営効率化の進捗を注視する必要がある。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント