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ベトナムのフラッグキャリアであるベトナム航空(Vietnam Airlines、ホーチミン証券取引所上場・証券コード:HVN)が、2026年第1四半期(1〜3月)に税引き後利益4,500億ドン超を計上したことが明らかになった。前年同期比で約30%の増益であり、旧正月(テト)の旅行需要の高まりと、欧州路線の拡充が大きく寄与した格好である。コロナ禍で巨額の累積赤字を抱え、一時は上場廃止の危機すら囁かれた同社にとって、この好業績は構造的な回復局面が本格化していることを強く印象づける数字と言えるだろう。
テト(旧正月)需要が業績を押し上げ
ベトナムにおいてテト(旧正月)は最大の祝祭日であり、毎年1月下旬から2月にかけて国内外の移動需要が爆発的に増加する。帰省や旅行のために航空需要がピークを迎えるこの時期は、航空各社にとって年間最大の「稼ぎ時」である。2026年のテトも例外ではなく、ベトナム航空はこの高需要期に増便や臨時便を積極的に運航し、搭乗率の向上と単価の上昇という二重の恩恵を享受した。ベトナムの人口は約1億人に達しており、中間層の拡大とともに航空需要は構造的な成長トレンドにある。特にテト期間中の国内線は満席便が続出するのが恒例であり、同社にとって極めて収益性の高い四半期となった。
欧州路線の拡大が新たな収益柱に
もう一つの業績牽引役が、欧州路線の拡充である。ベトナム航空は近年、ロンドン、パリ、フランクフルトといった西欧主要都市への直行便ネットワークを強化してきた。欧州はベトナムにとって重要な貿易パートナーであるだけでなく、観光面でも欧州からのインバウンド需要が急回復している。EU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)の発効以降、ビジネス渡航需要も増加傾向にあり、長距離国際線は単価が高く利益率も大きいことから、同社の収益構造の改善に大きく貢献している。ベトナム航空はスカイチーム(SkyTeam)のメンバーであり、欧州のエールフランスKLMグループなどとのコードシェアにより、ネットワーク全体の搭乗率向上にもつなげている点は見逃せない。
累積赤字からの脱却——構造改革の成果
ベトナム航空は、コロナ禍で甚大な打撃を受けた航空会社の一つである。2020年以降、数兆ドン規模の累積赤字を計上し、2022年にはホーチミン証券取引所(HOSE)での上場維持が危ぶまれる事態にまで追い込まれた。ベトナム政府は同社の筆頭株主(国有資本投資総公社=SCIC経由で約86%を保有)として、緊急融資や増資による資本増強を行い、経営再建を後押しした。その後、国際線需要の回復とともに業績は急速に改善し、2024年には通期黒字を確保。2025年にはさらに利益水準を引き上げ、そして2026年第1四半期においても前年同期比30%近い増益を達成した。路線の選択と集中、機材の効率運用、コスト管理の徹底といった構造改革の成果が数字に表れている。
ベトナム航空業界の競争環境
ベトナムの航空市場は、ベトナム航空のほかにも、ベトジェットエア(VietJet Air、証券コード:VJC)やバンブーエアウェイズ(Bamboo Airways)など複数のキャリアがしのぎを削る競争環境にある。LCC(格安航空会社)のベトジェットは国内線シェアでベトナム航空を上回る勢いを見せており、価格競争は依然として厳しい。しかし、ベトナム航空はフルサービスキャリアとしてのブランド力、ビジネスクラス需要の取り込み、そして長距離国際線の展開という差別化戦略により、収益性の面ではLCCとは異なるポジショニングを確立しつつある。ロンタイン国際空港(ドンナイ省)の第1期開業が2026年後半に控えており、ハブ機能の強化による路線拡大余地も大きい。
投資家・ビジネス視点の考察
HVN株への影響:今回の好決算は、ベトナム航空(HVN)の株価にとって明確なポジティブ材料である。同社はかつて累積赤字により管理銘柄に指定されるリスクがあったが、連続した黒字決算により財務体質は着実に改善している。今後、累積赤字の完全解消が視野に入れば、機関投資家のポートフォリオ組み入れ対象としての再評価が進む可能性がある。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:ベトナム株式市場は2026年9月にFTSE新興市場指数への格上げ判定が予定されている。格上げが実現すれば、ベトナム市場全体への海外資金流入が大幅に増加する見込みであり、時価総額の大きい国営企業であるベトナム航空もその恩恵を受ける可能性が高い。特に外国人投資家の買い余地が大きい銘柄として注目されるだろう。
日本企業・投資家への示唆:ベトナム航空はANA(全日本空輸)との戦略的パートナーシップ関係にあり、ANAホールディングスはかつてベトナム航空への出資を検討した経緯がある。日本とベトナム間の航空需要は、観光・ビジネスの両面で堅調に推移しており、日系航空関連企業やベトナム進出を検討する日本企業にとっても、ベトナム航空の業績回復は航空インフラの安定という観点でプラス材料である。また、ベトナムの航空需要拡大は、空港関連インフラ(ロンタイン空港建設に関与する日本のゼネコン等)やMRO(航空機整備)分野の日系企業にとってもビジネス機会の拡大を意味する。
ベトナム経済全体の文脈:航空業界の回復はベトナム経済全体の内需拡大と国際的なプレゼンス向上を映す鏡でもある。GDP成長率7〜8%台を目指すベトナムにとって、航空ネットワークの拡充は観光収入の増加、FDI(外国直接投資)の誘致、サプライチェーンの効率化に直結する重要なインフラである。ベトナム航空の好業績は、同国の経済成長の「体温計」として捉えるべきだろう。
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