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ベトナムの中堅証券会社であるVIXチュンコアン(VIX証券、ティッカー:VIX)が、2025年第1四半期の業績で税引前利益が前年同期比66%減の1,560億ドンにとどまったことが明らかになった。ベトナム株式市場全体の取引低迷を如実に反映した数字であり、証券セクター全体の収益構造に対する懸念が改めて浮上している。
VIX証券の第1四半期業績——何が起きたのか
VIX証券が公表した2025年第1四半期決算によると、税引前利益は1,560億ドンとなり、前年同期の約4,590億ドン規模から66%もの大幅な減少を記録した。60%超の利益減少は、同社にとってここ数年で最も厳しい四半期業績の一つである。
VIX証券は、ベトナムのホーチミン証券取引所(HOSE)に上場する証券会社の中で中堅に位置づけられる企業である。個人投資家向けの株式売買仲介を主力事業としつつ、自己勘定投資やマージンレンディング(信用取引向け貸付)でも収益を上げてきた。しかし、2025年に入ってからのベトナム株式市場は、米中貿易摩擦の再燃や世界的な関税政策の不透明感、さらにはベトナム国内の不動産市場の調整長期化といった複合的な逆風にさらされており、VN指数(ベトナムの代表的株価指数)は年初来で軟調な推移を続けている。
利益急減の背景——市場取引量の落ち込み
証券会社の収益は、株式市場の売買代金と密接に連動する構造を持つ。ベトナム株式市場では2024年後半から売買代金が減少傾向にあり、2025年第1四半期もこの流れが継続した。HOSEの1日あたり平均売買代金は、ピーク時と比較して大幅に縮小しており、仲介手数料収入が圧迫されている。
加えて、マージンレンディングの需要低下も痛手となっている。市場が下落基調にある局面では、個人投資家が信用取引を控える傾向が強まるため、証券会社にとって金利収入の柱であるマージン貸付残高が減少する。VIX証券のような中堅証券会社は、大手のSSI証券やVNダイレクト証券(VND)と比較してブランド力や顧客基盤で劣るため、市場低迷期には顧客流出のリスクも相対的に高い。
さらに、自己勘定投資においても、株価下落局面では評価損の計上や実現利益の縮小が避けられず、これが利益全体を押し下げる要因となった可能性がある。
ベトナム証券セクター全体の課題
VIX証券の業績悪化は同社固有の問題ではなく、ベトナム証券セクター全体に共通するトレンドである。2025年第1四半期には、多くの証券会社が前年同期比で大幅な減益を発表しており、業界全体の構造的な脆弱性が露呈した格好だ。
ベトナムの証券業界は、過去数年間で急速に拡大してきた。2020〜2021年のコロナ禍における個人投資家の株式市場参入ブームにより、証券口座数は急増し、売買代金も過去最高水準を記録した。しかし、2022年後半の社債市場危機や不動産大手の経営問題を契機に市場心理が冷え込み、その後の回復も一進一退が続いている。証券会社は好況期に人員や支店を拡充したため、市場低迷期には固定費負担が重くのしかかる構造となっている。
一方で、ベトナム政府は新KRXシステム(韓国取引所の技術を導入した新取引システム)の稼働を進めており、これが安定的に運用されれば空売りやデイトレードの利便性が向上し、取引量の回復に寄与するとの期待もある。ただし、システム導入の効果が本格的に顕在化するには時間がかかる見込みだ。
投資家・ビジネス視点の考察
VIX証券の業績急落は、ベトナム株式市場への投資を検討する日本の投資家にとって、いくつかの重要な示唆を含んでいる。
証券銘柄への投資タイミング:証券セクターは市場全体のベータ(感応度)が高く、市場回復局面では大きなリバウンドが期待できる一方、下落局面では市場平均以上に打撃を受ける。現在の利益水準が底値圏にあるとすれば、逆張りの投資機会と捉える見方もあるが、市場環境の回復時期を見極めることが不可欠である。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:ベトナムは2026年9月にもFTSE新興市場指数への格上げが決定される見通しであり、格上げが実現すれば海外機関投資家からの資金流入が大幅に増加し、売買代金の構造的な拡大が期待される。証券セクターはその最大の恩恵を受ける業種の一つであるため、中長期的な視点ではFTSE格上げの進捗が証券株の評価を左右する最大のカタリストとなるだろう。
日本企業への影響:SBI証券がベトナムに進出しているほか、複数の日本の金融機関がベトナム証券市場に関心を寄せている。市場の低迷期は、ベトナム証券会社への出資や業務提携を検討するうえで、バリュエーションが割安になるという点で好機となりうる。実際、過去にもベトナム市場の調整局面で外資による証券会社への資本参加が進んだ事例がある。
いずれにせよ、VIX証券の66%減益という数字は、現在のベトナム株式市場が抱える短期的な苦境を端的に示している。しかし、ベトナム経済のファンダメンタルズ——若い人口構成、GDP成長率の堅調さ、製造業の外資誘致力——は中長期的に健在であり、市場環境の転換点を見極める目が求められる局面である。
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ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
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