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ベトナム農業環境省の発表によると、2026年1〜5月の農林水産物輸入総額は222.8億ドルに達し、前年同期比12.6%増となった。米国が最大の供給国として浮上する一方、肥料や飼料など生産投入財の輸入は減少しており、ベトナム農業セクターの構造変化が鮮明になっている。
5月単月は47.3億ドル、前年同月比17.3%増
2026年5月単月の農林水産物輸入額は推計47.3億ドルで、前月比では5.6%減少したものの、前年同月比では17.3%の増加となった。5カ月累計の222.8億ドルという数字は、ベトナムの農業・食品加工産業が引き続き拡大基調にあることを示している。
品目別:農産物14.35億ドル、畜産物が29.7%の大幅増
品目別の内訳を見ると、農産物が143.5億ドルで前年同期比16.4%増、畜産物が22.4億ドルで同29.7%増、林産物が14.9億ドルで同20.4%増と、いずれも力強い伸びを見せた。一方、水産物は13億ドルで同0.5%減とほぼ横ばいにとどまった。
畜産物の中では、食肉・食用副産物が9.105億ドル(同26.1%増)、乳製品が6.953億ドル(同20.3%増)と、いずれも高い伸びを記録している。ベトナムの所得水準向上に伴うタンパク質需要の拡大が背景にあるとみられる。
米国が最大供給国、中国・カンボジアが続く
地域別では、アジアが全体の32.6%、南北アメリカが21.8%を占め、欧州3.7%、オセアニア3.7%、アフリカ2.9%と続く。アジアからの輸入は前年同期比16.9%増、オセアニアは22.9%増、アフリカは13.9%増となった一方、アメリカ大陸は0.2%減、欧州は4.5%減であった。
国別では、米国がシェア10.0%で最大の供給国となり、前年同期比25.8%増と大幅に拡大した。中国が9.6%(同20.4%増)、カンボジアが9.4%(同23.2%増)で続いている。米国からの輸入増は、大豆や飼料原料、木材製品など幅広い品目にわたっている。
注目品目:大豆は数量72.4%増、小麦は54.6%増
個別品目で特に目立つのが大豆である。5カ月累計で160万トン、7.663億ドルを輸入し、前年同期比で数量72.4%増、金額78.6%増という急拡大ぶりだ。飼料用・食用油脂用の需要増が主因とみられる。
小麦も5カ月で420万トン、10.9億ドルに達し、数量ベースで54.6%増、金額ベースで49.8%増となった。平均輸入単価は257.6ドル/トンで前年同期比3.1%下落しており、量的拡大と単価下落が同時に進行している。即席麺やパン・菓子類の生産拡大が需要を牽引しているとみられる。
カシューナッツ(殻付き原料)は5カ月で150万トン、26億ドルを輸入(数量16.1%増、金額25.2%増)。ベトナムは世界最大のカシューナッツ加工・輸出国であり、原料の大半をカンボジア(シェア67.1%)、タンザニア(12.2%)、コートジボワール(8.3%)から調達している。コートジボワールからの輸入が前年同期比5.5倍に急増した点は、調達先の多角化が進んでいることを示唆する。
天然ゴムは69.8万トン、12.2億ドル(数量2%増、金額2.4%増)。平均単価は1,741ドル/トンでほぼ横ばいであった。カンボジア(22.5%)、中国(19.7%)、韓国(12%)が主要供給元だが、カンボジアからの輸入は24.1%減少した一方、中国からは21%増加している。
青果物は5カ月で13億ドル(前年同期比31.9%増)と大幅に伸びた。中国がシェア39.5%(同46.7%増)、米国26.4%(同36.9%増)、オーストラリア6.9%(同59.3%増)となっている。
木材・木製品は14.6億ドル、米国からの輸入が2.1倍
木材・木製品の5カ月累計は14.6億ドルで前年同期比20.4%増。中国がシェア38%、米国21.9%、ラオス3.5%と続く。特に米国からの輸入が2.1倍に急増しており、ベトナムの木材加工・家具輸出産業の原料調達構造に変化が起きている可能性がある。米中貿易摩擦の長期化に伴い、ベトナム経由での加工・再輸出が拡大している構図とも読める。
水産物はインド・ノルウェー・インドネシアが主要供給元
水産物は5カ月で13億ドル(前年同期比0.5%減)とほぼ横ばい。インド(シェア16.3%、同11.5%増)、ノルウェー(11.3%、同2.7%増)、インドネシア(11.2%、同29%減)が主要供給国である。インドネシアからの大幅減少が全体の伸びを抑制した形だ。
生産投入財の輸入は減少傾向
農業生産投入財全体では28.8億ドルで前年同期比9.3%減となった。内訳を見ると、肥料は180万トン・6.005億ドルで数量24.1%減・金額19.8%減と大幅に縮小。平均単価は334.7ドル/トンで5.7%上昇しており、量の減少を単価上昇が一部相殺した構図である。中国(シェア45.5%)、ロシア(17%)、ラオス(8.6%)が主要供給元だ。
飼料・飼料原料は17.7億ドルで前年同期比11%減。米国(22%)、アルゼンチン(17%)、中国(12.5%)が主要供給元である。大豆輸入の急増との対比で見ると、大豆そのものの輸入を増やし国内で飼料に加工する動きが進んでいる可能性がある。
一方、農薬・原料は5.056億ドルで前年同期比16.9%増と逆行して増加した。中国(45.2%)、インド(15.3%)、韓国(6.5%)が主要供給元である。また、塩の輸入は1,830万ドルで48.4%増と急伸した。
投資家・ビジネス視点での考察
今回のデータからは、ベトナム農業セクターにおける以下の構造変化が読み取れる。
第一に、食品加工・畜産の高度化である。畜産物輸入の29.7%増、大豆の72.4%増(数量ベース)は、国内の食肉加工・飼料製造が急拡大していることを示す。上場企業では、飼料最大手のマサングループ(MSN)や食肉加工のビサン(VSN)、乳業最大手のビナミルク(VNM)などへの追い風となり得る。
第二に、原料輸入→加工輸出モデルの深化である。カシューナッツや木材は、大量の原料を輸入して加工・付加価値を付けた上で再輸出するモデルが定着している。木材関連ではフーアン木材(GDT)やチュオンタイン木材(TTF)などが関連銘柄として注目される。
第三に、肥料・飼料の自給率向上である。肥料の輸入が24.1%減少した背景には、ペトロベトナム化学肥料(DPM)やラムタオアパタイト(LAS)など国内メーカーの増産がある可能性がある。これらの銘柄にとってはポジティブな材料だ。
第四に、2026年9月のFTSE新興市場指数への格上げ判断との関連で言えば、農業セクターの貿易拡大はベトナムのGDP成長率を下支えする要因の一つである。農林水産物の輸出が好調であれば経常収支にもプラスに働き、マクロ経済の安定性がFTSE格上げ判断にとって追い風となる。
日本企業にとっては、ベトナムの食品加工・農産物貿易の拡大は、コールドチェーン、倉庫・物流、食品加工機械、品質管理技術などの分野でビジネスチャンスが広がることを意味する。また、ベトナム産カシューナッツや水産加工品の日本向け輸出拡大の裏側で、こうした大規模な原料調達が行われていることを理解しておくことは、サプライチェーン分析の上で重要である。
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