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ベトナムで年間約1億5,680万トンに上る農業副産物が、健康食品(thực phẩm bảo vệ sức khỏe)の高付加価値原料として注目を集めている。2026年5月にホーチミン市で開催された国際展示会「Fi Vietnam 2026」の併催セミナーで、循環型経済と深加工技術を組み合わせた新たな産業モデルが提示された。
年間1.5億トン超——未活用の農業副産物という「金脈」
ベトナム農業機電・収穫後技術研究所(VIAEP)のファム・アイン・トゥアン准教授によると、ベトナムでは年間約1億5,680万トンの農業副産物が発生するが、その大部分は有効活用されていない。一方で、これらの副産物には高い価値を持つ生物活性化合物が含まれており、健康食品・医薬品・化粧品の原料として大きな可能性を秘めている。
具体例として、以下のような副産物の活用が紹介された。
- ブドウの皮:ポリフェノール、レスベラトロール(抗酸化製品向け)
- 海産魚の副産物:オメガ3(心臓・脳の健康サポート)、魚の皮・骨からコラーゲンペプチド
- コーヒー粕:クロロゲン酸、食物繊維
- エビ・カニの殻:キチン、キトサン、アスタキサンチン
- ドラゴンフルーツやガック(ナンバンカラスウリ)の皮:天然カロテノイド、生物由来色素
トゥアン准教授は、現代の生産思考において副産物はもはや廃棄物ではなく、循環型経済とグリーンテクノロジーのための投入原料であると強調した。
ベトナム農産物輸出710億ドル——メコンデルタの圧倒的存在感
ベトナム食品科学技術協会(VAFoST)の統計によれば、2025年のベトナム農産物輸出額は710億ドルに達し、世界トップ15の農産物輸出国に名を連ねた。とりわけメコンデルタ(đồng bằng sông Cửu Long)は、輸出米の90%、水産物輸出額の65〜70%(特にパンガシウスとエビ)、主力果実輸出額の60%以上を担う圧倒的な生産拠点である。
VAFoST副会長のゴー・スアン・ビン教授は「これほど豊富な原料資源を、深加工と先端技術を通じてグローバルバリューチェーンにどう組み込むかが課題だ」と問題提起した。
深加工を支える先端技術——酵素技術と発酵技術
従来型の加工から深加工への転換が、健康食品業界における最大の構造変化とされている。具体的には以下の技術が注目されている。
- 酵素技術:生物反応の効率を高め、廃棄物を削減しつつ生産プロセスを最適化
- 現代的発酵技術:食品保存にとどまらず、プロバイオティクス、生物活性ペプチド、有機酸、抗酸化化合物の生成に活用
機能性飲料市場の急拡大——Z世代が牽引
GlobalDataの調査によると、消費者の42%が腸内環境・メンタルヘルス・エネルギーレベルの改善を日常の食品・飲料に求めている。この流れを受け、プロバイオティクス、プレバイオティクス、プロテイン、アダプトゲンなどを配合した機能性飲料が急成長している。
特にZ世代やミレニアル世代が、脳の健康・消化・感情バランスをサポートする製品を積極的に選好しており、SNS上ではソーダとプロテインシェイクを混ぜるトレンドが、低糖・高アミノ酸のボトル入りプロテインドリンクの開発を促進している。「クリーンラベル(nhãn sạch)」、すなわち成分の透明性を重視する動きも加速中である。
食品安全という「もう一つの課題」
ホーチミン市食品安全局のファム・カイン・フォン・ラン局長は、Fi Vietnam 2026の開幕式で「食品安全は義務的要件であるだけでなく、企業の信頼と持続的価値を築く要素だ」と述べた。同局長は「おいしくて、体に良くて、安い食品は存在しない。基準を遵守した食品は安くはならない」と明言し、最近摘発された豚肉を添加物で偽牛肉に加工する事件にも言及。「まっとうな企業が豚肉を偽の牛肉に変える添加物を製造するはずがない」と厳しく批判した。
ホーチミン市は、クリーンな食品市場の発展と不正食品の取り締まりを並行して進める方針を掲げている。
業界が直面する課題
成長機会がある一方で、健康食品業界は以下の課題に直面している。
- 高額な技術投資コスト
- 輸入設備への依存
- トレーサビリティ(原産地追跡)要件の厳格化
- ESG(環境・社会・ガバナンス)基準への対応
- 生物活性の科学的証明に対する要求の高まり
投資家・ビジネス視点の考察
今回の動きは、ベトナムが農産物の「量」で稼ぐモデルから「付加価値」で稼ぐモデルへ転換しようとする大きな潮流の一部である。投資家にとっては以下の点が注目に値する。
関連銘柄への影響:水産加工大手のヴィンホアン(VHC)、ミンフー(MPC)、乳業・食品のビナミルク(VNM)、食品添加物・原料を手がける企業群に中長期的な追い風となる可能性がある。副産物の高付加価値化が実現すれば、原価構造の改善と新たな収益源の創出が期待できる。
日本企業への示唆:日本は機能性食品の先進市場であり、酵素技術や発酵技術にも強みを持つ。ベトナムの豊富な農業副産物と日本の加工技術を組み合わせる共同開発・技術供与の余地は大きい。味の素やキリンHDなど、すでにベトナムで事業展開する日本企業にとっては、機能性飲料・健康食品分野での事業拡大チャンスとなろう。
FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE格上げが実現すれば、ベトナム市場全体への資金流入が加速する。その中で、ESG対応やトレーサビリティを備えた食品・農業セクターの企業は、海外機関投資家の選好を受けやすくなる。循環型経済モデルへの転換はESGスコアの向上に直結するため、この分野に取り組む企業は格上げ恩恵を享受しやすいポジションにあると言える。
ベトナムの農業副産物1.5億トン超という規模は、東南アジアでも突出した水準である。この「金脈」をどこまで掘り起こせるかが、ベトナム食品産業の次のステージを決定づけることになるだろう。
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