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2025年6月5日午前、ベトナム国内の金市場でSJC金地金および純度99.99%(「4つの9」)の金リングが軒並み急落した。わずか2〜3時間のうちに複数回にわたる値下げが繰り返され、南部の一業者は午前中だけで6回もの連続値下げを実施。週初(6月1日)からの5営業日で累計520万ドン/ルオン(約37.5グラム)もの下落を記録し、金地金の売値は6カ月ぶりの安値圏に沈んだ。
午前の取引:全社一斉に220万ドン幅の下落
5日午前の取引終了時点で、SJC社(ベトナム最大の金地金ブランドを展開する国営系企業)は金地金の買い・売りの両方を前日(4日)終値から各220万ドン/ルオン引き下げ、1億5,080万〜1億5,380万ドン/ルオンに設定した。
この価格帯はDOJI(ドジ、大手貴金属チェーン)、PNJ(フー・ニュアン・ジュエリー、ホーチミン市証券取引所上場の宝飾大手)、バオ・ティン・ミン・チャウ、バオ・ティン・マイン・ハイ、フー・クイといった主要業者でも共通して適用された。いずれも前日比で買い・売りともに220万ドン/ルオンの下落である。
注目すべきは、週初の6月1日から5日までの5営業日連続で下落が続いており、累計の下落幅は520万ドン/ルオンに達している点である。売値の1億5,380万ドン/ルオンは6カ月ぶりの安値水準であり、ピーク時の1億9,090万ドン/ルオンからは19.43%の下落となる。
南部のミーホン社は午前だけで6回連続値下げ
ホーチミン市を拠点とするミーホン社(Mi Hồng)は、開店からわずか2時間のうちに6回もの連続値下げを実施した。午前の取引終了時、同社のSJC金地金の買値は1億5,080万ドン、売値は1億5,250万ドン/ルオンとなり、前日比で買値が220万ドン、売値が230万ドンの下落を記録した。
同じくホーチミン市のゴック・タム社(Ngọc Thẩm)は、前日に50万ドン/ルオン値上げしたばかりだったが、5日朝の開店時に一気に300万ドン/ルオンの大幅値下げを実施。午前終了時の金地金価格は1億5,000万〜1億5,300万ドン/ルオンとなった。
なお、ホーチミン市の各業者の売値は北部(ハノイ)の業者に比べて80万〜130万ドン/ルオン低い水準で推移しており、南北間の価格差が依然として存在している。
金リング(99.99%)も全面安
純度99.99%の金リング市場も下落基調が鮮明であった。ただし、業者間での下落幅のばらつきは金地金より大きく、150万〜220万ドン/ルオンの範囲に分散した。
主要業者の午前終了時の金リング価格は以下の通りである。
- SJC社:1億5,060万〜1億5,360万ドン/ルオン(前日比220万ドン安)
- DOJI(フン・ティン・ヴオン・ブランド):1億5,080万〜1億5,380万ドン/ルオン(同220万ドン安)
- PNJ:1億5,080万〜1億5,380万ドン/ルオン(同220万ドン安)
- バオ・ティン・マイン・ハイ:1億5,080万〜1億5,380万ドン/ルオン(同220万ドン安)
- フー・クイ:1億5,080万〜1億5,380万ドン/ルオン(朝の開店時200万ドン安、その後さらに200万ドン下落。午前中に計4回値下げ)
- バオ・ティン・ミン・チャウ:1億5,140万〜1億5,440万ドン/ルオン(同160万ドン安)。同社は唯一、金リングの価格が金地金を上回り、市場で最も高い金リング価格を提示した。
- ゴック・タム社:1億4,250万〜1億4,600万ドン/ルオン(同150万ドン安)。市場最安値であった。
国際金価格との乖離は大幅に縮小
6月5日13時時点で、国際金スポット価格は前日比0.6%超の下落となる4,446.8ドル/オンスで推移していた。ベトコムバンク(Vietcombank、ベトナム最大の国営商業銀行)の為替レート(税・手数料込み)で換算すると、国内の金地金価格と国際価格の乖離は約1,080万ドン/ルオンとなっている。金リングについても1,060万〜1,080万ドン/ルオンの乖離が一般的であるが、ゴック・タム社に限っては乖離がわずか300万ドン/ルオンまで縮小している。
この国内外価格差は、3月20日に記録したピーク時と比較して66.3%も縮小しており、ベトナム政府・中央銀行が推進してきた金市場の安定化政策が一定の成果を上げていることを示唆している。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の金価格急落は、ベトナムの投資市場に複数の示唆を与えている。
第一に、金から株式・不動産への資金シフトの加速が見込まれる。金地金がピークから約2割下落し、6カ月ぶりの安値圏に入ったことで、含み損を抱えた個人投資家が金の保有を見直し、株式市場や不動産市場に資金を振り向ける動きが強まる可能性がある。ベトナムの個人投資家は伝統的に金を「安全資産」として保有する傾向が強く、金価格の長期下落は消費・投資マインドの転換点となり得る。
第二に、PNJ株への影響である。PNJ(銘柄コード:PNJ)はホーチミン市証券取引所に上場するベトナム最大手の宝飾企業であり、金の販売が主要な収益源の一つである。金価格の下落は短期的には在庫評価損のリスクを伴うが、一方で金アクセサリーの需要喚起につながる側面もある。PNJの株価動向には注視が必要である。
第三に、2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数への格上げ判定との関連である。金市場の安定化、すなわち国内外価格差の縮小は、ベトナムの金融市場の成熟度を示す一つの指標となり得る。ベトナム国家銀行(中央銀行)が金市場の正常化に成功すれば、外国人投資家からの市場信頼度が高まり、FTSE格上げにもプラスに作用する可能性がある。
第四に、日本企業・在越日本人への影響である。ベトナムに駐在する日本人の中には資産保全の手段として金を保有する層も存在する。金価格の急落局面では、買い場と見るか、さらなる下落リスクを警戒するかの判断が求められる。また、ベトナムドンの安定と金市場の正常化は、ベトナムに進出する日本企業にとってもマクロ経済環境の安定という観点で好材料である。
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