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2025年6月30日、ベトナム国内の主要貴金属ブランドがSJC金地金(ベトナム政府公認の金地金ブランド)の販売価格を一斉に引き下げ、1テール(ルオン=約37.5グラム)あたり1億4,600万ドンとなった。前日比で200万ドンの下落であり、高値圏で推移してきたベトナム金市場にとって注目すべき動きである。
何が起きたのか——SJC金地金200万ドン安の衝撃
6月30日、SJC(サイゴン・ジュエリー・カンパニー、ベトナム最大の国営金取扱企業)をはじめとする各ブランドは、金地金の売値を1テールあたり1億4,600万ドンに設定した。これは前営業日と比較して200万ドンの値下がりであり、ここ数週間にわたり過去最高値圏を更新し続けてきたベトナム金市場の流れに一服感が生じたことを示している。
ベトナムにおける金地金市場は、世界の金スポット価格の動向に加え、国内独自の需給構造やベトナム国家銀行(中央銀行)の政策によって大きく左右される。SJC金地金はベトナム政府が品質を保証する唯一の公認ブランドであり、その価格は国際金価格に対してしばしばプレミアム(上乗せ分)が付くことで知られる。近年はこのプレミアムが拡大傾向にあり、政府は市場安定のためにSJC金地金の入札販売を繰り返し実施してきた経緯がある。
背景——なぜ金価格は高騰し、なぜ今下げたのか
ベトナムの金価格が歴史的高値圏にある背景には、複数の要因が絡み合っている。
第一に、国際金価格の上昇である。2024年から2025年にかけて、米中貿易摩擦の再燃、地政学的リスクの高まり、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測などを背景に、国際金価格は1トロイオンスあたり2,500ドルを超える水準で推移してきた。安全資産としての金への資金流入は世界的な潮流であり、ベトナム市場もその影響を直接的に受けている。
第二に、ベトナム国内の需給のひっ迫である。ベトナムでは伝統的に金が資産保全の手段として根強い人気を持つ。特に不動産市場が調整局面にある時期や、ドン安への懸念が高まる局面では、個人投資家の金購入意欲が急激に高まる傾向がある。一方、SJC金地金の供給はベトナム国家銀行が管理しており、需要に対して供給が制限されることで国内価格と国際価格の乖離(いわゆるSJCプレミアム)が生じやすい構造となっている。
今回の200万ドンの下落については、国際金価格の短期的な調整に加え、ベトナム国家銀行による金地金入札の拡大や、月末・四半期末の利益確定売りが重なったものと見られる。ただし、1テールあたり1億4,600万ドンという水準自体は依然として歴史的に見て高い水準であり、本格的な下落トレンドへの転換と断定するのは時期尚早である。
ベトナムの金市場の特殊性——日本との違い
日本の読者にとって理解しておきたいのは、ベトナムの金市場が日本とは大きく異なる構造を持つ点である。日本では金地金は田中貴金属工業や三菱マテリアルなど複数の業者が国際価格に連動した価格で販売しているが、ベトナムではSJCブランドの金地金が実質的な「国家公認金」として特別な地位を持ち、他ブランドの金地金やジュエリー用金とは明確に区別される。
このため、国際金価格が同じ水準であっても、ベトナム国内のSJC金地金価格は国際価格を大幅に上回る場面が頻繁に見られる。2024年にはこのプレミアムが1テールあたり1,000万ドン以上に達する局面もあり、ベトナム国家銀行は市場安定のために金地金入札を複数回実施し、プレミアム縮小に努めてきた。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の金価格下落は、ベトナム株式市場や関連銘柄に対して間接的な影響を及ぼす可能性がある。
株式市場との資金フロー:ベトナムでは金と株式が個人投資家の主要な投資先として競合関係にある。金価格の上昇局面では株式市場から金市場へ資金が流出する傾向があり、逆に金価格が下落すれば株式市場への資金回帰が期待できる。VN-Index(ホーチミン証券取引所の主要株価指数)が調整局面にある現在、金価格の一服は株式市場にとってポジティブな材料となり得る。
金融・ジュエリー関連銘柄:SJC自体は上場企業ではないが、PNJ(フーニュアン・ジュエリー、ホーチミン証券取引所上場)はベトナム最大の上場ジュエリー企業であり、金価格の変動が業績に直結する。金価格の急落は短期的には在庫評価損のリスクを生むが、一方で消費者の購買意欲を刺激し販売量の増加につながる可能性もある。
為替・マクロ経済への影響:金価格の安定はベトナムドンの安定にも寄与する。金市場の過熱はドル買い・ドン売り圧力を伴うことが多く、金価格の落ち着きはベトナム国家銀行の為替管理にとっても好材料である。特に2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナムの格上げに向けて、為替の安定と資本市場の信頼性向上は極めて重要なテーマであり、金市場の安定はその文脈においてもプラスに作用する。
日本企業・投資家への示唆:ベトナムに進出している日本企業にとって、金価格の変動は直接的なビジネスインパクトは小さいものの、ベトナム国内の消費者心理やインフレ動向を測るバロメーターとして有用である。金価格が安定すれば消費者の購買力が他の消費財に向かいやすくなり、小売・消費セクターにとってはプラス材料となる。
いずれにせよ、1テールあたり1億4,600万ドンという水準は依然として高く、今後の国際金価格の動向やベトナム国家銀行の政策次第では再び上昇に転じる可能性も十分にある。引き続き注視が必要である。
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出典: 元記事(VnExpress)












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