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ベトナム最大の鉄鋼メーカーであるホアファット・グループ(Hòa Phát Group、ホーチミン証券取引所ティッカー:HPG)が、2025年第1四半期に支払った借入金利息が1,359億ドンに達し、同社として過去最高を記録した。これは1日あたり15億ドン超を金利として支払っている計算になる。積極的な設備投資が続く中、財務負担の増大が投資家の間で注目を集めている。
過去最高の金利負担—その背景
ホアファット・グループ(ベトナム最大の鉄鋼コングロマリット、創業者はトラン・ディン・ロン氏)は、鉄鋼製造を中核事業としつつ、不動産、農業、家電など多角的に事業を展開するベトナムを代表する民間企業である。ホーチミン証券取引所(HOSE)に上場しており、VN-Index構成銘柄の中でも時価総額上位に位置する大型株だ。
同社が2025年第1四半期(1〜3月)に計上した借入金利息は1,359億ドン。四半期ベースで過去最高となり、単純計算で1日あたり15億ドンを超える水準である。これは前年同期と比較しても大幅な増加であり、同社の財務構造の変化を如実に示している。
巨額投資が利息負担を押し上げ
金利負担が急増した最大の要因は、ホアファットが進めている大型設備投資プロジェクトにある。同社は近年、ベトナム中部クアンガイ省のズンクアット(Dung Quất)にある統合製鉄所の拡張プロジェクト「ズンクアット第2期(Dung Quất 2)」を推進してきた。このプロジェクトは同社の粗鋼生産能力を大幅に引き上げるもので、総投資額は数十兆ドン規模とされる。プロジェクトの進捗に伴い、建設費用や設備購入のための借入金が膨らみ、それが利息負担の増大に直結している形だ。
ベトナム国内の銀行借入金利は、2023年後半から2024年にかけて中央銀行(ベトナム国家銀行、SBV)の金融緩和政策により低下傾向にあったものの、大規模な借入残高を抱える企業にとっては、金利水準がやや戻しつつある局面では負担が増す構造にある。加えて、ホアファットは外貨建て借入も一定程度活用しており、為替変動リスクや海外金利動向の影響も受けやすい。
業績との兼ね合い—稼ぐ力は健在か
もっとも、金利負担の絶対額だけを見て財務悪化と断じるのは早計である。ホアファットは2024年通期で大幅な増益を達成しており、鉄鋼市況の回復やインフラ投資需要の拡大を背景に、本業の収益力は堅調に推移している。重要なのは、増大する金利負担を上回るペースで営業利益やキャッシュフローが成長しているかどうかという点だ。
ベトナム政府は2025年も公共投資の加速を掲げており、高速道路、鉄道、空港などの大型インフラプロジェクトが相次いで着工・進行している。これらのプロジェクトは鉄鋼需要を直接的に押し上げる要因であり、ホアファットにとっては追い風となる。ズンクアット第2期が本格稼働すれば、生産能力の拡大による売上増加が期待でき、現在の金利負担は将来の収益成長のための「先行投資コスト」と位置づけることもできる。
投資家・ビジネス視点の考察
■ HPG株への影響
HPGはベトナム株式市場における最も流動性の高い銘柄の一つであり、外国人投資家の保有比率も高い。金利負担の増大は短期的にはEPS(1株当たり利益)の圧迫要因となり得るが、市場はすでにズンクアット第2期の投資負担を相当程度織り込んでいるとみられる。むしろ注目すべきは、同プロジェクトの稼働時期と、稼働後の利益貢献のスピードである。稼働が計画通りに進めば、2025年後半から2026年にかけて業績の大幅な改善が期待でき、株価の再評価につながる可能性がある。
■ 日本企業への示唆
ホアファットはベトナム国内の建設・インフラ分野における鉄鋼供給の要であり、ベトナムに進出している日系ゼネコンやインフラ関連企業にとっても重要なサプライヤーである。同社の生産能力拡大は、ベトナム国内の鉄鋼価格の安定化や供給の安定につながる可能性があり、間接的に日系企業のコスト管理にも影響を与える。
■ FTSE新興市場指数への格上げとの関連
ベトナムは2026年9月にFTSE新興市場指数への格上げ判断が見込まれている。格上げが実現すれば、グローバルな機関投資家からの資金流入が加速する。HPGはVN-Index構成銘柄の中でも上位ウェイトを占めるため、格上げによるパッシブ資金の流入で最も恩恵を受ける銘柄の一つとなる。その観点からは、現在の金利負担増大局面は、中長期投資家にとってはむしろ「仕込み時」と捉える向きもある。
■ ベトナム経済全体における位置づけ
ベトナムは2025年もGDP成長率7〜8%台を目標に掲げ、製造業とインフラ投資が経済成長の両輪となっている。ホアファットの積極投資は、こうしたマクロ経済の成長トレンドに乗ったものであり、同社の動向はベトナム経済全体の活力を映す鏡でもある。金利負担が過去最高に達したという事実は、裏を返せばそれだけ大規模な投資が行われている証左であり、ベトナム経済のダイナミズムを象徴するニュースといえるだろう。
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出典: 元記事(VnExpress)












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