ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
ベトナム国家銀行(中央銀行)の金融政策局長ファム・チー・クアン氏が、銀行システム全体の流動性は安定を維持していると明言した。しかし2021年以降、信用(貸出)の伸びが預金の伸びを恒常的に上回っており、各信用機関の資金バランスに対する圧力が増大しているという。銀行セクターの健全性と今後の金利動向を左右する重要なシグナルである。
流動性は確保、預金の払い戻しにも問題なし
クアン局長によれば、現時点でベトナムの各信用機関(商業銀行、政策銀行など)は、顧客への預金元本・利息の支払い義務、および引き出し需要をすべて滞りなく履行している。つまり、システミックな流動性危機が生じている状況ではない。ベトナム国家銀行(Ngân hàng Nhà nước=SBV)は公開市場操作などを通じて、銀行間市場の流動性管理を継続的に行っており、短期的な資金繰りに大きな問題は見られないとされる。
2021年以降続く「信用成長>預金成長」の構造的課題
問題の本質は、2021年以降、信用(融資残高)の増加ペースが預金(資金調達)の増加ペースを継続的に上回っている点にある。ベトナムでは新型コロナからの経済回復に伴い、企業や個人向けの融資需要が急速に拡大した。一方、預金金利が低水準に抑えられた時期には、個人投資家が株式・不動産・金などへ資金を振り向ける傾向が強まり、銀行への預金流入が相対的に鈍化した。この「貸出が預金を上回る」構図が数年にわたり続くことで、各銀行は資金調達コストの上昇圧力にさらされている。
具体的には、銀行は預金金利を引き上げて資金を呼び込むか、社債や銀行間市場での調達に依存度を高めるかの選択を迫られる。実際、2024年後半から複数の大手商業銀行が預金金利を段階的に引き上げる動きを見せており、これは資金調達競争の激化を反映したものである。
背景にあるベトナム経済の高成長
ベトナムは近年、GDP成長率6〜7%台を維持する東南アジア有数の高成長国である。製造業への外国直接投資(FDI)の流入、内需拡大、インフラ整備の加速など、実体経済の資金需要は旺盛だ。政府は2025年もGDP成長率8%以上を目標に掲げており、国家銀行に対しても信用成長目標の達成を求めている。こうした「成長優先」の政策スタンスが、銀行システムの資金バランスに構造的な緊張をもたらしている側面がある。
投資家・ビジネス視点の考察
銀行株への影響:預金金利の上昇は銀行の資金調達コスト(COF)を押し上げ、純金利マージン(NIM)を圧縮する要因となる。ベトナム株式市場(ホーチミン証券取引所=HOSE)で時価総額の大きなウエートを占める銀行セクター——VCB(ベトコムバンク)、BID(BIDV)、CTG(ヴィエティンバンク)、TCB(テクコムバンク)、MBB(MBバンク)など——の収益見通しに対し、慎重な見方が求められる局面である。一方、預金基盤が厚く調達コストの低い国有系大手銀行は相対的に有利であり、銘柄間で差別化が進む可能性がある。
日系企業への影響:ベトナムに進出する日系製造業・サービス業にとって、現地での借入金利が上昇する可能性がある点は留意すべきである。設備投資や運転資金の調達コストが増加すれば、事業計画の見直しが必要になるケースも出てくるだろう。
FTSE新興市場指数との関連:ベトナムは2026年9月にもFTSE新興市場指数への格上げが決定する見込みである。格上げが実現すれば、グローバルなパッシブ資金が大量に流入し、特に銀行株は恩恵を受ける最有力セクターの一つとなる。しかし、銀行システムの資金バランスの健全性は、格上げ審査においても注視されるポイントであり、国家銀行の政策対応が適切に行われるかどうかが鍵を握る。
マクロ的な位置づけ:今回の報道は、ベトナム経済が「高成長と金融安定のバランス」という先進国・新興国共通の課題に直面していることを示している。国家銀行がどのようなタイミングで金融政策を調整するか——例えば預金準備率の引き下げや公開市場操作の拡大——が、今後の市場の方向性を大きく左右するだろう。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント