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2026年6月17日、レー・ミン・フン(Lê Minh Hưng)首相はロシア連邦タタールスタン共和国カザンで開催されたASEAN・ロシア関係樹立35周年記念首脳会議に出席した際、ロシアの二大エネルギー企業であるロスアトム(Rosatom)およびザルベジネフチ(Zarubezhneft)の首脳と相次いで会談した。エネルギー協力をベトナム・ロシア関係の「戦略的柱」と位置づけ、原子力発電、石油ガス、再生可能エネルギーまで幅広い分野での連携強化を打ち出した。
ロスアトムとの会談:ダラット原子炉の延命とニントゥアン原発推進
フン首相はロスアトムのアレクセイ・リハチョフ(Alexey Likhachev)総裁との会談で、40年以上にわたるロシアの原子力分野での協力に謝意を表明した。具体的には、ダラット(Đà Lạt、ベトナム中南部の高原都市ラムドン省所在)の研究用原子炉の運転が挙げられた。同炉は放射性医薬品の製造を通じたがんの診断・治療に貢献しており、ベトナムの原子力人材育成の基盤ともなってきた。
首相はロスアトムに対し、以下の事項を要請した。
- ダラット原子炉の「移行期間」における運転延長への支援
- ドンナイ省(Đồng Nai、ホーチミン市近郊の工業省)で計画中の「原子力科学技術センター」プロジェクトの推進支援
- 人材育成の強化、設備の国産化率向上、投資コストの最適化
- ニントゥアン第1原子力発電所(Nhà máy điện hạt nhân Ninh Thuận 1)プロジェクトにおける課題の迅速な解決
ニントゥアン原発計画は、ベトナムが2016年に一度凍結したものの、急増する電力需要と脱炭素目標を背景に復活させた大型国家プロジェクトである。リハチョフ総裁は、同原発の建設協定締結を「ベトナム・ロシア協力関係における歴史的意義を持つ」と評価し、ベトナム側パートナーと緊密に連携して推進していると述べた。
さらにロスアトム側は、原子力産業の構築支援、最新型原子力センターの開発、高度な原子力専門家の育成に加え、再生可能エネルギー、ハイテク、物流、北極海航路向け船舶建造といった新分野での協力の可能性にも言及した。
ザルベジネフチとの会談:石油ガスから洋上風力まで
続いて首相はザルベジネフチのセルゲイ・クドリャショフ(Sergey Kudryashov)総裁と会談した。ザルベジネフチは、ベトナムとロシアの石油ガス協力の中核を担う企業であり、ベトナムの大陸棚での探鉱・開発や、ロシア国内でのベトナムとの合弁事業「ルスベトペトロ(Rusvietpetro)」を運営している。また、ベトナム市場への石炭供給においてもロシア最大の企業である。
首相はザルベジネフチに対し、以下を要請・支持した。
- ベトナム大陸棚の未開放鉱区における新規石油ガス契約の締結・投資拡大(ベトナム法令遵守、投資効率確保、利益の均衡が前提)
- ペトロベトナム(Petrovietnam、ベトナム国営石油ガスグループ)とザルベジネフチによる、ビエトソブペトロ(Vietsovpetro、越ソ合弁石油会社として歴史的に著名)およびルスベトペトロに関する政府間協定改定議定書の着実な履行
- 第三国でのプロジェクト協力の検討
- 洋上風力発電設備の製造拠点およびサプライチェーンのベトナム国内での構築に向けた提案の早期取りまとめ
- ロシア・ネネツ自治管区(Nhenhetxky)周辺でのルスベトペトロの採掘区域拡大・新規鉱区取得
クドリャショフ総裁は、2025年5月のトー・ラム(Tô Lâm)共産党書記長兼国家主席の訪ロ時に署名された文書の履行を引き続き進める方針を確認した。また、洋上風力発電、再生可能エネルギー、第三国での共同プロジェクトなど新分野への協力拡大を提案した。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の会談は、ベトナムのエネルギー戦略の多角化を鮮明に示すものである。以下の点が注目される。
関連銘柄への影響:ペトロベトナム傘下の上場企業群、特にPVS(ペトロベトナム・テクニカルサービシズ)、PVD(ペトロベトナム・ドリリング)、GAS(PVガス)などは、大陸棚での新規鉱区開放や探鉱活動拡大の恩恵を受ける可能性がある。洋上風力サプライチェーン構築の言及は、PVS等の造船・エンジニアリング企業にとって中長期的な成長ドライバーとなり得る。
ニントゥアン原発の再始動:同プロジェクトが本格化すれば、建設資材、電力インフラ、周辺地域開発など広範な経済波及効果が見込まれる。ただし、ロシアが国際制裁下にある中で、ファイナンスや技術供与の実務がどう進むかは引き続き注視が必要である。
日本企業への示唆:ベトナムは原子力分野で日本とも協力関係を持つ。ベトナムが原発計画でロシアとの協力を加速させる一方、安全基準や人材育成では日本の知見への需要も根強い。また、洋上風力や再エネサプライチェーンでは、日本企業がベトナム市場で競合・協業する場面が増えるだろう。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE格上げに直接影響する案件ではないが、エネルギー安全保障の強化はベトナム経済の安定性評価にプラスに作用する。電力不足リスクの軽減は、製造業FDI誘致の追い風にもなる。
ベトナムは急速な経済成長に伴い電力需要が年率10%前後で伸びており、原子力・石油ガス・再エネを組み合わせたエネルギーミックスの最適化が国家的課題となっている。今回のロシアとの協力深化は、その解の一つとして具体的に動き出したことを示している。
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