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ベトナムの不動産・リゾート開発大手であるCEOグループ(C.E.O Group、HNX上場・証券コード:CEO)が、2026年4月24日に年次株主総会を開催し、2026年度の事業計画および2026〜2030年の中期戦略を承認した。連結売上高3,000億ドン(原文:3.000 tỷ đồng=3兆ドン)、税引後利益300億ドン(原文:300 tỷ đồng=3,000億ドン)という意欲的な目標を掲げるとともに、約1,134億8,000万ドン(原文:1.134,8 tỷ đồng=1兆1,348億ドン)規模の増資計画を打ち出した。不動産市場の再構築が進むベトナムにおいて、産業用不動産・リゾート・実需住宅の3本柱で攻勢をかける同社の戦略を詳しく読み解く。
2025年度実績:計画比13%超の利益達成
CEOグループの2025年度連結業績は、総売上高1,432億ドン(原文:1.432 tỷ đồng=1兆4,320億ドン)、連結税引後利益206億ドン(原文:206 tỷ đồng=2,060億ドン)と、利益ベースで計画を13%上回る着地となった。世界経済の不透明感やベトナム国内不動産市場の構造改革が進行する中で、慎重な経営路線を採りながらも堅実な成長を果たした格好である。
特筆すべきはサービス・ホテル部門の回復である。2025年の宿泊客数は71万人に達し、うち外国人比率は約76%を占めた。ホテル運営の売上高は前年(2024年)比で40%以上の増加を記録しており、ベトナムのインバウンド観光回復の恩恵を如実に受けた形だ。
不動産事業:産業用・リゾート・住宅の3軸で展開
不動産分野では、同社は2025年に産業用不動産への本格参入を果たした。ハイフォン自由貿易区(Khu thương mại tự do Hải Phòng)内のティエンラン空港工業団地(Khu B)がその中核プロジェクトである。ハイフォンはベトナム北部最大の港湾都市であり、日系企業を含む外資系製造業の集積地として知られる。同市に設置が進む自由貿易区は、2024年以降のベトナム経済特区政策の目玉の一つであり、CEOグループがここに産業用不動産の拠点を構える意義は大きい。
リゾート開発では、カムラン(ベトナム中南部の沿岸都市、ニャチャン近郊)でノボテル・カムラン・リゾート(Novotel Cam Ranh Resort)が着工された。2026年末の完成・運営開始を予定しており、同社のリゾートブランド「Sonasea」を軸とした宿泊施設エコシステムのさらなる拡大を図る。
住宅分野では、フーコック特区(đặc khu Phú Quốc)の高級ヴィラプロジェクト「CEOHomes Diamond Hill」、バンドン特区(đặc khu Vân Đồn、クアンニン省)の「Sonasea Vân Đồn Harbor City」がいずれも法的手続きの整備を進めながら開発を推進中である。ハノイでは「CEOHomes Hana Garden」の法的整備が完了した。フーコックとバンドンはベトナム政府が経済特区として重点開発を進めるエリアであり、土地の希少性と将来的な資産価値の観点から注目度が高い。
都市型エコシステムの構築
CEOグループは、ハノイ近郊の大型タウンシップ「CEOHomes Sunny Garden City」において、幼稚園・小学校「CEOスクール」を開校したほか、医療・商業・オフィス複合ビルの建設を推進している。同ビルにより31,000平方メートル超のオフィス賃貸面積が追加される見込みで、住宅販売だけでなくストック型収益(オフィス賃料)の拡大を目指す方針が明確に打ち出されている。
2026年計画:売上倍増と大型増資
株主総会で承認された2026年度計画は以下の通りである。
- 連結売上高:3,000億ドン(3兆ドン)——2025年実績比で約2.1倍
- 連結税引後利益:300億ドン(3,000億ドン)——同約1.5倍
- 配当:5%(予定)
売上高を一気に倍増させる計画の裏付けとなるのが、大型増資である。総会では、発行済株式数の20%に相当する1億1,348万3,214株の新株発行が承認された。これにより定款資本金は5,674億ドン(5兆6,740億ドン)から6,808億ドン(6兆8,080億ドン)へ拡大する。調達予定額は約1,134億8,000万ドン(1兆1,348億ドン)で、既存株主向け発行とESOPが主な手段となる。
調達資金の主な使途は以下の通りである。
- CEOHomes Diamond Hill(Sonasea Residences)への投資
- CEOHomes Sunny Garden Cityの医療・商業・オフィス複合棟への投資
- C.E.O International Co., Ltd.への増資(CEOHomes Hana Gardenプロジェクト向け)
- C.E.O Industrial Park Development JSC.への増資(ティエンラン空港工業団地Khu B向け)
不動産向け融資の引き締めと高金利環境が続くベトナムにおいて、エクイティファイナンスによる資金確保は合理的な選択といえる。
ブランド体系とDX・ESG戦略
CEOグループは事業ブランドの体系化も進めている。住宅の「CEOHomes」、リゾートの「Sonasea」、産業用不動産の「CEOZone」、オフィスの「CEOOffice」、教育の「CEOEdu」と、各セグメントにブランドを割り当てることで事業ポートフォリオの可視性を高めている。加えて、AI活用を含むDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、ESG経営、「幸福企業(Doanh nghiệp hạnh phúc)」モデルの構築を掲げており、中長期的には「時価総額10億ドル企業」を目指すとしている。
投資家・ビジネス視点の考察
CEOグループの今回の戦略には、いくつかの重要な示唆がある。
1. 産業用不動産へのシフトは追い風:ベトナムでは中国からのサプライチェーン移転(チャイナ・プラスワン)需要が依然として旺盛であり、特にハイフォン周辺の工業団地需要は高水準を維持している。CEOグループの産業用不動産参入は市場トレンドに合致しており、日系を含む外資系企業の工場誘致に成功すれば安定的なキャッシュフロー源となり得る。
2. 20%希薄化リスク:新株発行による20%の希薄化は既存株主にとって無視できない。調達資金が計画通りプロジェクトの収益化に結びつくかが株価評価の鍵となる。2026年の売上倍増計画が未達に終わった場合、株価への下押し圧力は大きい。
3. FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、HNX上場銘柄への海外資金流入も期待される。ただしCEOは時価総額・流動性ともに中型株の範疇にあり、直接的なインデックス組入れの可能性は限定的である。むしろ、不動産セクター全体への資金流入による間接的な恩恵が主な経路となろう。
4. 日本企業への含意:ハイフォン自由貿易区の工業団地開発は、ベトナム進出を検討する日本の製造業にとって新たな選択肢となる可能性がある。また、ノボテルブランドとの提携はAccor系列との関係を示唆しており、日系ホテル・旅行関連企業にとっても競合環境の変化として注視すべきである。
総じて、CEOグループは不動産市場の回復局面を見据え、産業用・リゾート・住宅の多角的なポートフォリオで成長を加速させようとしている。増資による財務基盤の強化と引き換えに希薄化を受け入れるという判断が吉と出るかは、2026年後半以降のプロジェクト進捗次第である。ベトナム不動産セクターへの投資を検討する向きにとっては、同社の四半期ごとの売上・利益の進捗率が最も重要なモニタリング指標となるだろう。
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