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ベトナムのEC(電子商取引)市場の成長が止まらない。2025年第1四半期、ベトナムの消費者はShopee、TikTok Shop、Lazada、Tikiの主要4プラットフォームを通じて1日あたり約1,700億ドンをオンラインショッピングに費やしたことが、ECデータ分析企業Metric(メトリック)の最新データで明らかになった。人口約1億人を擁し、若年層比率が極めて高いベトナムにおいて、デジタル消費の急拡大は経済構造の変化を如実に物語っている。
1日1,700億ドン──数字が示すベトナムEC市場の規模感
Metricが集計したデータによると、2025年1〜3月期にベトナムの消費者が上記4大プラットフォームで支出した金額は、1日あたり約1,700億ドンに達した。四半期ベースで単純計算すれば約15兆ドン規模に相当する巨大な市場である。この数字はプラットフォーム上の実際の取引データに基づいており、ベトナムのオンライン消費がもはや「新興」の域を超え、日常の消費行動として完全に定着したことを示している。
主要4プラットフォームの勢力図
ベトナムのEC市場は、以下の4大プラットフォームが支配的なポジションを占めている。
Shopee(ショッピー)──シンガポールのSea Limited(SEA)傘下で、東南アジア最大のECプラットフォーム。ベトナムでも圧倒的なシェアを持ち、豊富なプロモーションやライブコマース機能で消費者を引きつけている。Sea LimitedはニューヨークSE上場(ティッカー:SE)であり、ベトナムEC市場の成長は同社の業績に直結する。
TikTok Shop(ティックトックショップ)──中国ByteDance(バイトダンス)が運営するショート動画アプリTikTokのEC機能。ベトナムでは特にZ世代(1990年代後半〜2010年代前半生まれ)を中心に爆発的な人気を誇り、ライブ配信を活用した販売手法が急速に浸透している。2023年にインドネシアで一時規制を受けた後も、ベトナムでは政府との協調姿勢を見せつつ存在感を拡大してきた。
Lazada(ラザダ)──中国アリババグループ傘下の東南アジア向けECプラットフォーム。かつてはベトナム市場のトップシェアを握っていたが、Shopeeの攻勢によりシェアを後退させている。ただし、ブランド公式ストアの充実度や物流インフラへの投資では依然として強みを持つ。
Tiki(ティキ)──ベトナム発の国産ECプラットフォーム。書籍販売からスタートし、家電やファッションなど総合ECへと成長した。外資勢に押されシェアでは苦戦しているものの、ベトナム国内企業としてのブランド力と、品質管理に重点を置いた戦略で一定のロイヤルユーザーを確保している。JD.com(京東商城)からの出資を受けた時期もあったが、近年は独自路線を模索中である。
急成長を支える構造的要因
ベトナムEC市場の拡大には、いくつかの構造的な背景がある。
第一に、人口ボーナスとデジタルネイティブ世代の消費力である。ベトナムの人口は約1億人で、平均年齢は約32歳と若い。スマートフォン普及率は80%を超え、都市部だけでなく地方でもモバイルインターネットを通じたオンラインショッピングが日常化している。
第二に、デジタル決済インフラの急速な整備である。ベトナム国家銀行(中央銀行)はキャッシュレス化を国策として推進しており、MoMo(モモ)、ZaloPay(ザロペイ)、VNPay(ヴィエヌペイ)といった電子ウォレットの利用者が急増している。銀行間の即時送金サービス「NAPAS 247」の普及も、EC決済のハードルを大きく下げた。
第三に、ライブコマースの爆発的拡大である。TikTok Shopの台頭に象徴されるように、動画配信を通じてリアルタイムに商品を紹介・販売するライブコマースが、ベトナムの消費文化に極めてフィットしている。ベトナム人は元来「対面でのやり取り」を好む傾向があり、ライブ配信者(KOL=Key Opinion Leader)との双方向コミュニケーションが購買意欲を刺激する構図である。
第四に、物流ネットワークの改善である。Giao Hang Nhanh(GHN)、Giao Hang Tiet Kiem(GHTK)、Viettel Post(ベトナム軍隊通信グループ傘下の物流企業)といった宅配事業者が地方部まで配送網を拡充しており、EC利用の地理的障壁が年々低下している。
政府の規制動向とEC課税の行方
一方で、市場の急拡大に伴い、ベトナム政府はEC分野への規制・課税強化にも動いている。2025年からはECプラットフォームに対して、出店者の税務情報を税務当局へ報告する義務が本格的に適用されている。これまで個人事業主や小規模セラーの課税捕捉が難しかったが、プラットフォーム経由の取引データを活用することで、税収の拡大を図る狙いである。また、越境EC(海外から直接ベトナムの消費者へ販売する取引)への関税・付加価値税の適用強化も議論されており、今後の制度設計次第ではプラットフォーム各社のコスト構造にも影響し得る。
投資家・ビジネス視点の考察
関連銘柄への影響:ベトナム国内の上場企業で直接的にEC事業を展開する大手は限られるが、EC物流の恩恵を受けるViettel Post(VTP、ホーチミン証券取引所上場)や、デジタル決済関連のFPTコーポレーション(FPT、ベトナム最大手IT企業)は間接的な受益銘柄として注目に値する。また、EC市場の拡大は小売セクター全般のデジタルシフトを加速させるため、モバイルワールド・インベストメント(MWG、ベトナム最大の家電・日用品小売チェーン)のオンライン事業の成長性にも目を向けるべきである。
日本企業への影響:ベトナムEC市場の拡大は、日本の消費財メーカーやコスメブランドにとって大きなビジネスチャンスである。Shopee MallやLazada Mallを通じた公式ストア展開、TikTok Shopでのインフルエンサーマーケティングなど、ベトナム消費者へのダイレクトアクセスの手段が多様化している。資生堂やユニ・チャームといった日本企業はすでにベトナムEC市場での販売を強化しているが、今後はライブコマースへの対応力が競争力を左右する局面に入るだろう。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げは、海外機関投資家の資金流入を大幅に増加させると予想されている。EC市場の急拡大に象徴されるベトナムの「内需成長ストーリー」は、輸出依存だけではないベトナム経済の多面的な魅力を海外投資家にアピールする材料となる。内需関連銘柄のバリュエーション再評価が進む可能性がある点は、中長期の投資テーマとして見逃せない。
ベトナム経済全体における位置づけ:ベトナム政府は2025年のGDP成長率目標を8%以上に設定しており、その成長エンジンの一つとしてデジタル経済の拡大を明確に位置づけている。EC市場は2025年に前年比25〜30%の成長が見込まれるとの業界予測もあり、ベトナムが東南アジアにおけるデジタル経済の主要プレイヤーとしての地位を固めつつある現状がうかがえる。
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ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
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出典: VnExpress 元記事












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