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ベトナムのEC(電子商取引)市場で、TikTok Shop(ティックトック・ショップ)がShopee(ショッピー)との市場シェア差をわずか1年で半分にまで縮めたことが、シンガポールを拠点とする調査会社Momentum Works(モメンタム・ワークス)の最新レポートで明らかになった。東南アジア最大級の成長市場であるベトナムのEC勢力図が急速に書き換わりつつある。
急接近するTikTok ShopとShopee——数字が示す構造変化
Momentum Worksの調査によれば、ベトナムにおけるTikTok ShopとShopeeの市場シェアの差は、わずか1年間で約半分に縮小した。長らくベトナムEC市場の圧倒的王者として君臨してきたShopeeにとって、これは無視できない脅威である。
Shopeeはシンガポール上場のSea Limited(シー・リミテッド)傘下のEC プラットフォームで、東南アジア全域で最大の取引規模を誇る。一方、TikTok Shopは中国ByteDance(バイトダンス)傘下の短尺動画アプリTikTok上に組み込まれたEC機能であり、2022年頃からベトナム市場に本格参入した。ライブコマース(ライブ配信を活用した販売手法)を武器に、特に若年層を中心に急速に利用者を拡大してきた。
なぜTikTok Shopは急成長しているのか
TikTok Shopの躍進の背景には、ベトナム特有のいくつかの要因がある。
1. 若年人口の厚さとSNS浸透率の高さ
ベトナムの人口は約1億人で、平均年齢は約32歳と若い。スマートフォンの普及率も急速に上昇しており、TikTokの月間アクティブユーザーは国内で数千万人規模に達しているとされる。「動画を見ながらそのまま購入する」というシームレスな購買体験は、デジタルネイティブ世代との相性が極めて良い。
2. ライブコマース文化の定着
ベトナムでは、KOL(Key Opinion Leader=インフルエンサー)によるライブ配信販売が爆発的に広がっている。中国で先行して普及したライブコマースの手法が、文化的にも近いベトナムでそのまま受け入れられた形である。TikTok Shopはこのライブコマース機能をプラットフォームの中核に据えており、エンターテインメントと購買行動を融合させるモデルがShopeeとの差別化要因となっている。
3. 積極的な販売者獲得施策
TikTok Shopは、出店手数料の割引やプロモーション支援など、セラー(出品者)に対する積極的なインセンティブ施策を展開してきた。特に中小規模の事業者やD2C(Direct to Consumer)ブランドにとっては、従来のShopee・Lazada(ラザダ)中心のEC戦略に加え、TikTok Shopを新たな販路として活用する動きが加速している。
Shopeeの対抗策と市場全体の動き
一方で、Shopeeも手をこまねいているわけではない。Shopeeは自社プラットフォーム内でのライブ配信機能「Shopee Live」を強化しているほか、物流インフラの拡充やShopee Pay(ショッピー・ペイ)を軸としたフィンテック事業の展開を進めている。ベトナム全土に広がる配送ネットワークと、長年蓄積した消費者の購買データは依然として大きな強みである。
また、ベトナムのEC市場にはLazada(アリババグループ傘下)やTiki(ベトナム発のECプラットフォーム)、Sendo(ベトナムのFPTグループ系列)といったプレーヤーも存在するが、近年は上位2社(Shopee・TikTok Shop)への集中が進んでいる。市場全体が成長するなかで、上位プラットフォーム間の競争がさらに激化している構図である。
ベトナムEC市場の規模と成長ポテンシャル
ベトナムのEC市場は東南アジアでもインドネシアに次ぐ規模を持ち、年平均20%以上の成長率を維持しているとされる。政府もデジタル経済の推進を国家戦略として掲げており、2025年までにGDP比の一定割合をデジタル経済が占めることを目標に掲げてきた。こうした政策的後押しもあり、EC市場の拡大基調は当面続くと見られている。
特に地方都市や農村部へのEC浸透はまだ発展途上であり、物流網の整備が進むにつれて新たな消費者層が取り込まれる余地は大きい。TikTok ShopとShopeeの競争は、こうした未開拓市場への到達速度をめぐる戦いでもある。
投資家・ビジネス視点の考察
関連銘柄への影響:Shopeeの親会社Sea Limited(NYSE: SE)にとって、ベトナムは東南アジアにおける重要市場の一つである。TikTok Shopの追い上げが今後も続けば、Shopeeの収益性や成長見通しに影響を与える可能性がある。一方、ByteDanceは未上場であるため直接的な株式投資は困難だが、TikTok Shopに商品を供給するベトナムの消費財メーカーや物流企業にとっては追い風となりうる。ベトナム株式市場では、物流関連のViettel Post(VTP)やEC関連サービスを手掛ける企業の動向が注目される。
日本企業への示唆:ベトナム市場に進出している、あるいは進出を検討している日本の消費財メーカーやD2Cブランドにとって、販売チャネル戦略の見直しが求められる局面である。従来はShopeeやLazadaへの出店が定石だったが、TikTok Shopのシェア拡大を踏まえると、ライブコマースを活用したマーケティング戦略の構築が不可欠になりつつある。現地KOLとの連携や動画コンテンツの制作体制を早期に整えることが、ベトナム市場での競争優位につながるだろう。
FTSE新興市場指数との関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、海外からの資金流入が加速し、ベトナム国内のデジタル経済関連企業にも恩恵が及ぶ可能性がある。EC市場の拡大はベトナム経済のデジタルトランスフォーメーション(DX)を象徴するテーマであり、格上げ審査においてもプラス材料と位置づけられるだろう。
ベトナム経済全体の文脈:EC市場の競争激化は、ベトナムの内需拡大と消費構造の高度化を映し出している。製造業の輸出拠点としてだけでなく、1億人の消費市場としてのベトナムの魅力が改めて浮き彫りになっている。今後、ShopeeとTikTok Shopの二強体制がどのように推移するかは、ベトナムのデジタル消費市場の方向性を占ううえで最も重要な指標の一つとなる。
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