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ベトナムの有力商業銀行であるHDBank(ホーチミン市開発商業銀行、HOSE: HDB)が2026年第1四半期の業績を公表した。税引前利益は6,107億ドンに達し、前年同期比14%増。ROE(自己資本利益率)24.29%、CAR(自己資本比率)16.16%と、業界トップクラスの収益性と健全性を同時に示しており、ベトナム銀行セクターの中でも際立つ存在感を放っている。
総資産約984兆ドン、信用成長は業界平均の2.5倍
2026年3月末時点でHDBankの総資産は984,216億ドン(約984兆ドン)に達し、2025年末比で5.7%増加した。与信残高は635,085億ドンで8%の伸びを記録しており、これは業界平均の約3.18%を大幅に上回る水準である。融資先は経済成長のけん引役となる優先分野に集中しており、質を伴った成長戦略がうかがえる。
資金調達面では、総調達額が880兆ドンを突破し5.9%増。このうち顧客預金は725兆ドン超で11.9%増と二桁成長を達成した。預金の大幅な伸びは、個人・法人双方からの信認の高さを反映している。
収益構造:営業総収入1兆ドン近く、CIR26%未満の高効率
第1四半期の営業総収入は約1兆ドン(約10,000億ドン)に達し、コア業務からの安定的な収益貢献が確認された。不良債権比率(ベトナム国家銀行の通達31号基準)は1.86%と低水準を維持。預貸率(LDR)も69.8%にコントロールされており、流動性リスクも十分に管理されている。
特筆すべきはデジタル戦略の成果である。デジタルチャネル経由の取引件数は前年同期比35%増、取引金額は106%増と急拡大。全社的なデジタル化推進によりCIR(経費率)は26%未満にまで低下しており、ベトナムの銀行セクターでもトップレベルの運営効率を実現している。
エコシステム拡大:Vikki Bank、HD SAISON、HD証券が好調
HDBank傘下の金融エコシステムも力強い成長を見せている。デジタルバンク「Vikki Bank」は転換から1年を経て順調に基盤を拡大し、2026年4月にはアジア経済研究所主催の「ベトナム・リーディングブランド2026」で「最優秀デジタル貯蓄銀行」と「最優秀統合カード商品(VikkiONE Connect)」の2部門を受賞した。
消費者金融子会社のHD SAISON(ベトナム消費者金融大手)は第1四半期に339億ドンの利益を計上し、業界トップクラスの効率性を維持。モバイルアプリの累計ダウンロード数は約450万件に達している。
証券子会社のHD証券(HDS)は売上高461億ドン(前年同期比89%増)、税引後利益284億ドン(同261%増)と爆発的な成長を遂げた。ベトナム株式市場全体の活況を追い風に、グループ全体の収益多角化が進んでいる。
国際的信用力の向上:Moody’sが見通しを「ポジティブ」に引き上げ
HDBankは「HDBank Global」戦略のもと、ロンドン証券取引所との連携やベトナム国際金融センター(VIFC)関連プロジェクトへの参画を通じて、国際資本市場とのつながりを強化している。
2026年4月には、国際格付機関ムーディーズがHDBankの信用格付見通しを「安定的(Stable)」から「ポジティブ(Positive)」に引き上げた。自己資本の拡充路線と高い収益持続力が評価された結果であり、今後の格上げ余地も示唆されている。CARが前年同期の14.32%から16.16%へ大幅に上昇した点も、この評価を裏付ける材料である。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場への影響:HDB株はHOSE(ホーチミン証券取引所)でも時価総額上位の銀行銘柄であり、ROE24%超・CAR16%超という数値は外国人投資家にとっても魅力的な水準である。信用成長率が業界平均の約2.5倍というペースは、ベトナム中央銀行(SBV)からの信用枠配分でHDBank が優遇的な扱いを受けていることも示唆しており、今後も高成長を維持する可能性が高い。
FTSE新興市場指数との関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、HDBのような流動性と時価総額を兼ね備えた銘柄には大規模な海外パッシブ資金の流入が期待される。Moody’sの見通し引き上げも、格上げ審査においてベトナム金融セクターの健全性を裏付ける好材料となり得る。
日本企業への示唆:HD SAISONはもともと日本のクレディセゾンとの合弁で設立された経緯があり、日越金融協力の象徴的な存在である。HDBank エコシステムの拡大は、ベトナム進出を検討する日本の金融・フィンテック企業にとっても提携先としての有望性を高めている。CIR26%未満という効率性は、デジタル化が遅れがちな日本の地銀と比較しても極めて高い水準であり、ベトナム銀行セクターの技術革新の速さを物語っている。
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