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ベトナムIT大手VNG会長「株価は実態を反映していない」—流動性課題と成長戦略を読む

Ông Lê Hồng Minh: 'Cổ phiếu VNG chưa phản ánh đúng giá trị thực'
📘 この記事は「ベトナム経済研究会」が提供するベトナム最新ニュース解説です。
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ベトナムを代表するテクノロジー企業VNG(ティッカー:VNG)の創業者兼会長であるレ・ホン・ミン氏が、自社の株価と流動性について「実際の企業価値を正しく反映していない」と率直に語った。上場株式数の少なさと、経営陣が「派手な約束をしない」姿勢が背景にあるとの見解であり、ベトナム株式市場におけるテック銘柄の評価問題を改めて浮き彫りにする発言として注目される。

目次

レ・ホン・ミン氏の発言の要旨

VNGの会長であるレ・ホン・ミン氏は、同社の株価について「価格も取引量(流動性)も、VNGの本来の価値を正確に映し出していない」と明言した。その理由として同氏が挙げたのは、大きく分けて2点である。

第一に、市場に流通している株式数(フリーフロート)が極めて少ないことだ。VNGは2023年1月にホーチミン証券取引所(HOSE)へテクニカル上場(UPCoM経由ではなく技術的な上場形式)を果たしたが、創業者一族や戦略的株主の持ち分が大きく、一般投資家が売買できる浮動株の比率が限られている。このため、株価は需給の偏りによって大きく振れやすく、企業のファンダメンタルズを適切に反映しづらい構造となっている。

第二に、経営陣のコミュニケーションスタイルの問題である。ミン氏自身が認めるように、VNGの経営陣は「派手な約束(hoành tráng)」をしない方針を貫いてきた。ベトナム株式市場では、企業トップが強気な業績見通しや大型投資計画を高らかに掲げることで株価を押し上げるケースが少なくないが、VNGはそうしたIR(投資家向け広報)手法を取ってこなかった。結果として、市場における注目度や期待感の醸成が十分でなく、株価の上値が抑えられているというのがミン氏の見立てである。

VNGとは何者か——ベトナム初の「ユニコーン」の軌跡

VNG Corporation(旧称:VinaGame)は2004年に設立されたベトナム最大級のテクノロジー企業である。創業者のレ・ホン・ミン氏はオーストラリアで学んだ後にベトナムへ帰国し、オンラインゲームの配信事業から出発した。その後、事業領域を急速に拡大し、現在では以下の4つの柱を持つ。

  • Zalo(ザロ):ベトナム国内で最も利用されているメッセージングアプリ。月間アクティブユーザー数は7,000万人を超え、LINEやFacebook Messengerを上回る国民的プラットフォームとなっている。ZaloPay(モバイル決済)やZalo OA(公式アカウント)など、スーパーアプリ化を推進中である。
  • オンラインゲーム事業:創業以来の主力事業であり、ベトナム国内のみならず東南アジア各国でゲームの開発・配信を手掛ける。
  • ZaloPay(ザロペイ):モバイル決済・フィンテック部門。ベトナムのキャッシュレス化の波に乗り成長しているが、MoMo(モモ)やViettel Money(ベトテルマネー)との競争が激しい。
  • クラウド・AI事業:VNG Cloudを通じてクラウドインフラサービスを展開。ベトナム政府のデジタルトランスフォーメーション(DX)政策とも連動しており、近年は人工知能(AI)分野への投資も加速させている。

VNGは2014年にベトナム初の「ユニコーン」(企業評価額10億ドル以上の未上場企業)として認定された経歴を持ち、テンセント(中国)やGIC(シンガポール政府投資公社)といったグローバルな戦略投資家が株主に名を連ねる。ベトナムのテック産業を象徴する存在であり、同国のデジタル経済の成長ストーリーそのものと言える企業である。

株価低迷の構造的背景——フリーフロート問題

VNGの株価が「割安」に放置されている問題は、ミン氏が指摘するフリーフロートの少なさに大きく起因している。ベトナム株式市場では、大株主や創業家が発行済み株式の大半を握っているケースが珍しくないが、VNGは特にその傾向が顕著である。市場で実際に取引可能な株式が少ないと、機関投資家がまとまったポジションを構築しづらく、結果として国内外のファンドからの資金流入が限定的になる。

流動性の低さは「株価のボラティリティ(変動性)が高い」という副作用も生む。少額の売買でも株価が大きく動くため、ファンダメンタルズに基づいた適正価格の形成が阻害される。これは個人投資家が市場参加者の大半を占めるベトナム市場特有の構造とも重なり、VNG株の評価をさらに難しくしている。

「派手な約束をしない」経営——誠実さか、IR不足か

ミン氏が語った「ban lãnh đạo không hứa hẹn hoành tráng(経営陣は壮大な約束をしない)」という表現は、ベトナムのビジネス文化の文脈で興味深い意味を持つ。ベトナムの上場企業の中には、年初に非常に強気な業績目標を掲げ、株主総会でバラ色のビジョンを語ることで株価を維持する企業が少なくない。それと対照的なVNGの姿勢は、一方では「誠実で堅実」と評価できるが、他方では「市場とのコミュニケーション不足」というマイナス面を伴う。

グローバルな機関投資家が重視するのは、透明性の高い情報開示と明確な中長期戦略のプレゼンテーションである。VNGが今後、海外投資家からの評価を高めたいのであれば、「派手な約束」をする必要はないにせよ、定量的な中期経営計画やセグメント別の収益見通しをより積極的に発信する姿勢が求められるだろう。

投資家・ビジネス視点の考察

ベトナム株式市場への影響:ミン氏の発言は、VNG個別の問題にとどまらず、ベトナム市場全体が抱える「優良テック銘柄の流動性不足」という構造的課題を映し出している。不動産・銀行セクターに比べ、テクノロジーセクターの上場企業はまだ少なく、市場全体の多様化という観点からもVNGの流動性改善は重要なテーマである。

FTSE新興市場指数への格上げとの関連性:2026年9月に最終決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げは、市場全体の流動性を大幅に向上させる可能性がある。格上げが実現すれば、グローバルなパッシブファンドからの資金流入が加速し、VNGのようなフリーフロートの少ない銘柄にも間接的な恩恵が期待できる。ただし、FTSE格上げの前提条件として、ベトナム市場全体の外国人投資家によるアクセス改善(プリファンディング撤廃など)が必要であり、VNG自身もフリーフロートの拡大策を検討する必要があるだろう。

日本企業・日本人投資家への示唆:VNGはZaloを通じてベトナムの消費者に最も近い位置にいるテック企業であり、日本企業がベトナム市場でのデジタルマーケティングやEC展開を検討する際に避けて通れないプラットフォーマーである。また、日本の個人投資家にとっては、「経営陣が自ら割安と認める銘柄」としてウォッチリストに入れておく価値がある。ただし、流動性リスクが大きいため、投資判断には慎重な分析が必要である。

ベトナム経済全体のトレンドにおける位置づけ:ベトナム政府はデジタル経済の比率をGDPの30%以上に引き上げるという目標を掲げており、VNGはその中核を担う企業の一つである。クラウド、AI、フィンテックといった成長分野での投資拡大は、中長期的にVNGの企業価値を押し上げる要因となり得る。ミン氏の「株価は実態を反映していない」という発言が、将来的にフリーフロート拡大やIR強化といった具体的なアクションにつながるかどうかが、今後の注目ポイントである。


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出典: 元記事

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