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ベトナムの中堅銀行であるティエンフォン銀行(TPBank、ホーチミン証券取引所ティッカー:TPB)が2026年6月24日にハノイで年次株主総会を開催し、2026年の税引前利益目標を1兆300億ドンに設定するとともに、資本金を約3兆2,901億ドンへ引き上げる方針を承認した。さらに、ホーチミン市のベトナム国際金融センター(VIFC-HCMC)に100%出資の子銀行を設立する計画も明らかになり、同行の成長戦略が新たな段階に入ったことを示している。
2025年度業績:全指標で計画超過達成
総会で報告された2025年度の業績は、株主総会が設定した全指標を上回る好調な内容であった。税引前連結利益は9,203億ドンに達し、前年比21%増を記録。総資産は505兆ドンを突破した。信用残高は18.08%増、市場1(個人・法人からの預金)の資金調達は21%増と、貸出・調達の両面でバランスの取れた成長を実現している。
特筆すべきは資産の質である。不良債権比率は1%未満にまで低下し、ベトナム銀行業界全体でも低水準に位置する。これは同行の慎重な与信方針とリスク管理体制が機能していることの証左である。規模の拡大と質の維持を両立させた点が、2025年度の最大の成果といえる。
顧客基盤の拡大とデジタル化の深化
2025年末時点で顧客数は1,600万人を突破し、定常的に取引を行うアクティブ顧客は630万人(全体の39%)に達した。新規アクティブ顧客は120万人増加しており、「量から質への転換」が着実に進んでいることがうかがえる。
TPBankはデジタルバンキングの先駆者として知られており、「AI-Top」「Data-First」「Cloud Ready」の3つの柱を戦略の中核に据えている。現時点でシステムの80%以上にAIが統合済みで、デジタルチャネルでの取引比率は99.5%と業界最高水準にある。この数字は、店舗に行かずともほぼすべての銀行取引がオンラインで完結する状態を意味しており、ベトナムのデジタルバンキングの到達点を示すものである。
2026年計画:利益1兆300億ドン、資本金3兆2,901億ドンへ
2026年第1四半期の業績はすでに好調で、税引前利益は2,310億ドン超(前年同期比9.5%増)、総資産は519兆ドンを超え、不良債権比率は1.5%未満に抑えられている。
通期では税引前利益1兆300億ドン(前年比11.9%増)を目標に掲げた。配当については総配当率20%(うち現金5%、株式15%)を決議。株式配当の発行により、資本金は現行の2兆7,740億ドンから3兆2,901億ドンへ増加する見込みである。内部留保を厚くしつつ株主還元も行うバランスの取れた方針といえる。
国際金融センターへの子銀行設立と保険事業参入
今回の総会で注目度が高かったのが、ホーチミン市に設置が予定されているベトナム国際金融センター(VIFC-HCMC)に資本金3,000億ドンの100%子銀行を設立する方針が承認された点である。VIFCはベトナム政府が国際的な金融ハブとして育成を目指す戦略的プロジェクトであり、TPBankがいち早く参入を表明したことは、同行の先見性を示している。
加えて、資本金約400億ドン規模の損害保険会社への出資を通じて保険分野にも進出する方針が示された。銀行・保険を組み合わせた金融エコシステムの構築を目指す動きであり、収益源の多角化が期待される。
人事面では、ドー・クイン・アイン氏が取締役会メンバーに、グエン・ティ・フォン・チャン氏が独立取締役に選任され(任期2023〜2028年)、ガバナンスの多様性と独立性が強化された。取締役会議長は引き続きドー・ミン・フー氏が務める。
投資家・ビジネス視点の考察
TPBank(TPB)の今回の総会決議は、複数の観点から注目に値する。
①株価への影響:15%の株式配当は短期的には希薄化要因だが、不良債権比率1%未満という資産の質の高さと、11.9%の利益成長目標は中期的なバリュエーション改善を支える。2025年度ROEは業界中位以上を維持しており、PBR(株価純資産倍率)の水準次第では割安感が出る可能性がある。
②FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月にベトナムがFTSE新興市場指数に格上げされる見込みが高まる中、銀行セクターは同指数における主要構成業種となる。TPBankの資本金増強は時価総額の拡大と流動性向上に直結し、海外機関投資家の資金流入の受け皿となり得る。
③VIFC子銀行の戦略的意義:ベトナム国際金融センターはオフショア金融やフィンテック企業の集積地として構想されており、ここに子銀行を持つことは、外貨建て取引や国際的な資金仲介ビジネスへの足がかりとなる。日本を含む海外企業のベトナム進出における金融パートナーとしてのポジションも期待できる。
④日本企業への示唆:TPBankのデジタル化率99.5%は、ベトナムにおけるキャッシュレス決済・デジタル金融サービスの普及度を象徴している。ベトナム市場でBtoC事業を展開する日本企業にとって、こうしたデジタルバンキングインフラの成熟は、決済手段の多様化や顧客接点のデジタル化を後押しする要素となる。
ベトナム銀行セクター全体が、DX推進・資本増強・エコシステム拡大という三つの方向性で競争を繰り広げる中、TPBankはテクノロジー活用の深度と先行投資の積極性で差別化を図っている。2026年後半の業績推移とVIFC子銀行の具体的な進捗が、同行の中長期的な評価を左右する鍵となるだろう。
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