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ビングループ(Vingroup、ベトナム最大手のコングロマリット)傘下のEV充電インフラ企業V-Green(Vグリーン)が、ベトナム最大の国営通信事業者VNPT(ベトナム郵便通信グループ)と戦略的提携を締結した。全国約2,500カ所のVNPT拠点に、約6,000基のバッテリー交換キャビネットと100カ所のEV充電ステーションを設置する計画であり、ベトナムのEVインフラ整備が一気に加速する可能性がある。
提携の全容——全国2,500拠点を活用した大規模展開
2025年5月26日、V-GreenとVNPTは協力協定に署名した。合意内容の柱は、VNPTが全国63省・市に保有する約2,500カ所の営業・サービス拠点の敷地を活用し、V-Greenが電動バイク向けバッテリー交換キャビネット約6,000基と、電気自動車(EV)向け充電ステーション約100カ所を設置・運営するというものである。
VNPTは旧郵便局網を含む全国津々浦々に物理的な拠点ネットワークを持つことで知られる。都市部のみならず地方や農村部にまでサービス拠点が広がっている点が強みであり、これまでEV充電インフラが都市部に偏りがちだった課題を一挙に解消する可能性を秘めている。V-Greenにとっては自前で用地を確保するコストと時間を大幅に削減でき、VNPTにとっては遊休スペースの収益化と来店客数の増加が見込めるという、双方にメリットのある座組みである。
V-Greenとは何者か——ビングループのEVインフラ戦略の中核
V-Greenは、ビングループが電気自動車メーカーVinFast(ビンファスト、米ナスダック上場)のエコシステム構築を目的に設立したEV充電・エネルギーサービス企業である。VinFastが製造・販売する電気自動車や電動バイク(VinFast製二輪EVブランド)のユーザーに対し、充電・バッテリー交換といったインフラサービスを提供する役割を担う。
ベトナムでは電動バイクの普及が急速に進んでおり、特にビングループ系のVinFast電動バイクはバッテリーサブスクリプションモデル(車体購入+バッテリー月額レンタル)を採用している。このモデルでは、充電済みバッテリーへの交換を街中のキャビネットで数十秒で完了できる仕組みが不可欠であり、バッテリー交換キャビネットの全国展開はVinFast電動バイク事業の生命線ともいえる。今回の6,000基という数字は、既存のV-Greenネットワークを大幅に拡充するものとなる。
VNPTの戦略的意図——通信インフラからエネルギーインフラへ
VNPT側にも明確な戦略的意図がある。ベトナムの通信市場はViettel(ベトテル、軍営通信最大手)、VNPT(MobiFoneブランド含む)、そして新興勢力がしのぎを削る激戦区であり、従来型の通信収入だけでは成長に限界がある。全国の物理拠点という「不動産資産」を活用してEV充電インフラのプラットフォーム提供者となることは、非通信収入の柱を育てる布石といえる。
また、EV充電ステーションや交換キャビネットにはIoTセンサー、クラウド管理システム、決済システムなどが不可欠であり、VNPTが持つ通信・IT基盤との親和性も高い。将来的にはスマートシティ関連サービスとの統合も視野に入る可能性がある。
ベトナムEV市場の現在地——二輪から四輪へ拡大する電動化
ベトナムは約1億人の人口を抱え、二輪車の登録台数は約7,000万台ともいわれる「バイク大国」である。大気汚染や騒音問題、そして政府のカーボンニュートラル目標(2050年までにネットゼロ排出)を背景に、二輪車の電動化は国策として推進されている。ホーチミン市やハノイ市ではガソリンバイクの市街地乗り入れ規制も議論されており、電動バイクへの移行圧力は年々高まっている。
四輪EVについても、VinFastが国内販売を拡大しているほか、中国系EVメーカーの参入も相次いでいる。しかし、充電インフラの不足がEV普及のボトルネックとなっており、今回のような大規模インフラ展開の動きは市場全体にとってポジティブな材料である。
投資家・ビジネス視点の考察
関連銘柄への影響:V-Green自体は現時点で上場していないが、親会社であるビングループ(VIC、ホーチミン証券取引所上場)やVinFast(VFS、米ナスダック上場)の企業価値にとってプラス材料となる。EV販売台数はインフラの充実度と正の相関があるため、充電・交換ネットワークの拡大はVinFastの国内販売見通しを改善させる要因である。VNPTは国営企業であり未上場だが、通信セクター全体でインフラ資産の再活用トレンドが広がれば、上場通信企業にも波及効果が期待できる。
日本企業への示唆:日本の自動車部品メーカーやEV充電関連技術を持つ企業にとって、ベトナムのEVインフラ市場は有望な進出先である。特にバッテリー管理システム(BMS)、急速充電器、電力変換装置などの分野では日本企業の技術優位性が活かせる余地がある。また、VNPTは日本のNTTグループとも歴史的に関係が深く、日越間の通信・IT分野の協力がEVインフラ領域にも拡張される可能性は注目に値する。
FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げは、海外機関投資家の資金流入を大幅に増やすと期待されている。EV・グリーンエネルギー分野はESG投資の観点からも注目度が高く、ベトナムのEVエコシステム拡大は格上げ後の投資資金を呼び込む「ストーリー」の一つとなり得る。ビングループのようなESG関連テーマを持つ大型銘柄は、格上げ効果の恩恵を受けやすいポジションにある。
ベトナム経済全体における位置づけ:ベトナム政府は2024年以降、EV普及促進のための税制優遇(登録税の減免など)を継続しており、グリーントランスフォーメーション(GX)を経済成長の新たなドライバーとして位置づけている。VNPTのような国営企業がEVインフラ事業に参画する動きは、政府の政策方針と民間(ビングループ)の事業戦略が合致した好例であり、今後も官民連携によるインフラ整備の加速が見込まれる。
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