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ベトナム商工会議所(VCCI)が、中小企業支援法(改正案)に対し、支援割合・上限額・適用期限を具体的に数値化する11項目の建議を国会経済財政委員会に提出した。民間企業の約70%が資本金100億ドン未満という「多いが小さい」構造を打破し、実効性ある政策への転換を目指す動きである。
ベトナム民間企業の現状——「多いが小さい」実態
VCCIのダウ・アイン・トゥアン副事務局長が示したデータは、ベトナム民間セクターの脆弱さを端的に物語っている。非国有企業の約70%は資本金100億ドン未満、81.4%が従業員10人未満の零細規模にとどまる。平均資本金はわずか492億ドンで、FDI企業の4,960億ドン、国有企業の7兆309億ドンと比較すると桁違いの差がある。
2023年の利益率はわずか約1.4%。技術・イノベーション面でも、過去3年間に新製品・サービスを投入した企業は7.5%にすぎず、デジタル技術を1つでも導入している企業は37.9%、92.6%がオーナー=経営トップという個人経営的な管理体制を続けている。ホーチミン市やハノイといった大都市と山岳省との間で企業密度の格差も大きい。
改正法案の「突破口」——バウチャー制度・キャッシュフロー融資など
VCCIは2026年6月1日版の法案について、いくつかの画期的な前進を評価している。具体的には、成果ベースの予算配分原則と支援バウチャー(Phiếu hỗ trợ)制度の導入(第5条・第6条)、キャッシュフロー・データ・バリューチェーン・無形資産・将来形成資産に基づく信用供与メカニズム(第8条)、事業転換する個人事業主への「先に指導、後に処罰」原則(第20条第8項)、中小企業を下請けに使う元請けへの加点制度(第33条)などが挙げられる。
11項目の建議——その核心
第1:分類基準の見直し(第4条)
現行案は従業員300人未満・売上高4,000億ドン未満を一律に適用しているが、電子部品産業など原材料費が売上の85〜90%を占める業種では、企業が「成長する前に支援対象から外れる」問題が生じる。VCCIは特定業種について売上高上限を1兆ドンに引き上げ、基準超過後も3年間の移行期間を設けることを提案した。
第2:法人税優遇の拡大(第9条)
製造業・裾野産業の「中規模企業」にも法人税優遇を適用し、既存企業の設備投資拡大・技術革新に対する投資優遇を追加すべきとした。
第3:資金アクセスの改善(第8条)
無形資産・知的財産権・受注残の評価フレームワークを政府が策定し、審査期間を短縮するとともに、グリーンプロジェクト向け利子補給を最低年2%と明記することを求めた(第21条との整合性確保)。
第4:用地確保の支援(第10条)
インフラ運営者経由の還付方式ではなく、土地賃借料からの直接控除を採用し、直接賃借企業・既存の裾野産業企業に対して7年間30%の賃料減額を適用すべきとした。2024年土地法および国会決議198/2025/QH15との整合性も求めている。
第5:研究開発費の拡充(第11条)
損金算入の対象となるR&D費用の範囲拡大と、科学技術発展基金の手続き簡素化(党決議57-NQ/TWに準拠)を提案。
第6:デジタルトランスフォーメーション(DX)支援の定量化
ERP、MES、AI、IoTなど具体的な技術名を明記し、導入費用の最低50%(上限付き)を支援すること、ソフトウェアの加速償却を認めることを建議した。
第7:グリーン転換・ESG支援(第21条)
利子補給を年3%に引き上げ、グリーンプロジェクトを持つ一般製造業にも対象を拡大。温室効果ガスインベントリ・認証費用の最低50%を助成し、EU炭素国境調整措置(CBAM)対応支援、ESGコンサルティング費用の150%損金算入を盛り込むよう求めた。
第8:手続き簡素化(第5条・第9条)
小規模企業への簡易会計制度の適用、「一度の申告で完結」するデータ連携、支援排除要件を確定判決がある場合のみに限定すること(党決議68-NQ/TWの無罪推定原則に準拠)を提案。
第9:「先に指導、後に処罰」の全面適用
現在は事業転換する個人事業主に限定されているこの原則を、中小企業全体に適用する包括的原則として第1章または第5条に明記すべきとした。
第10:公共調達における中小企業枠の厳格化(第12条)
政府調達資金の最低20%を中小企業に配分する義務に厳格な監視・制裁措置を設け、国産品・裾野産業製品を優先するよう求めた。
第11:新規条項の追加
防火・消防コンプライアンス支援、産業クラスター単位での技術移転助成(第22条)、関連専門法の直接改正を可能にする独立章の設置、イノベーションに伴う客観的リスクの免責を含むサンドボックス制度の試行、支援バウチャーの適用範囲の具体化を建議した。
投資家・ビジネス視点の考察
今回のVCCI建議は、ベトナムが抱える構造的課題——民間セクターの零細性と低収益性——に法制度面から正面に切り込む動きとして注目に値する。特に以下の点が投資家にとって重要である。
裾野産業・製造業への追い風:売上高基準の引き上げやDX・グリーン支援の定量化が実現すれば、ベトナムの製造業サプライチェーンに参画する中小企業の競争力が底上げされる。日系企業のベトナム調達先の品質・安定性向上にも直結する話である。
CBAM・ESG対応の制度化:EUのCBAM対応支援が法律レベルで明文化されれば、ベトナムからEU向け輸出を行う企業の国際競争力維持に寄与する。特に鉄鋼・セメント・アルミなどの業種にとっては重要な論点である。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に判断が見込まれるFTSE格上げにおいて、ベトナムの制度的透明性・予見可能性の向上は評価ポイントとなる。支援策の「定量化・明文化」という方向性は、外国人投資家にとっての制度リスク低減と同義であり、格上げ議論にもプラスに働く可能性がある。
公共調達20%枠:厳格化が実現すれば、国内中小企業向けの需要が制度的に担保される。建設・IT・裾野産業関連の上場中小企業にとっては中長期的な受注安定要因となりうる。
もっとも、建議はあくまでVCCIの提案段階であり、国会審議を経てどこまで法案に反映されるかは未知数である。過去にも「原則は盛り込まれたが施行細則が出ず実効性を欠いた」例は多い。今後の法案修正と政令・通達レベルでの具体化プロセスを注視する必要がある。
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出典: 元記事












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