ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
ベトナム株式市場の代表指数VN-Indexが5月8日、前日比6.36ポイント高の1,915.37ポイントで取引を終え、2026年1月に記録した史上最高値1,918.46ポイントに肉薄した。しかし指数上昇の裏で、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を大幅に上回る「指数と実態の乖離(レッチファ)」が一段と鮮明になっており、個人投資家にとっては極めて難しい相場環境が続いている。
一握りの大型株が指数を「押し上げ」、大半は売られる構図
この日の指数上昇を牽引したのは、VIC(ビングループ、ベトナム最大手コングロマリット)+0.89%、VHM(ビンホームズ、ビングループ傘下の不動産大手)+1.55%、BID(BIDV、国有商業銀行大手)+3.79%、CTG(ビエティンバンク、国有商業銀行)+1.12%のわずか4銘柄である。この4銘柄だけで指数に8ポイント以上の寄与があり、指数全体の上昇幅6.36ポイントを上回る計算だ。つまり、残りの銘柄群はネットで指数を押し下げていたことになる。
VN30(時価総額上位30銘柄で構成)を見ても、値上がりはわずか10銘柄、値下がりは18銘柄。ブルーチップ銘柄群の売買代金は前日比11%減少しており、買い意欲の減退が数字に表れている。
場中の高値からの急落が示す「売り圧力」の強さ
VN-Indexは午後1時43分に一時約13ポイント高の1,921.81ポイントまで上昇し、史上最高値を日中ベースでは更新した。しかしこの瞬間でさえ値上がり105銘柄に対し値下がり200銘柄と、指数とは裏腹に売りが優勢だった。引けにかけて売り圧力はさらに強まり、最終的に97銘柄上昇/213銘柄下落という結果に終わった。
VN30構成銘柄のうち18銘柄が、場中高値から1%以上押し戻されている。特に目立ったのは以下の銘柄である。
- DGC(ドゥクザン・ケミカル):場中高値から3.87%下落し、終値は前日比▲3.15%
- GAS(ペトロベトナムガス):高値から3.36%押し戻され、終値▲1.71%
- GVR(ベトナムゴム):2.46%反落し、終値▲0.42%
- CTG:終値では+1.12%だが高値からは1.36%後退
- LPB(リエンベト銀行):高値から2.26%下落、上昇幅を+1.17%に縮小
- VCB(ベトコムバンク):1.62%押し戻され+0.66%で着地
市場全体では約48%の銘柄が場中高値から1%以上値を下げており、短期トレーダーにとっては「指数のブレイクアウトに飛びついたら含み損」という典型的な罠(ブルトラップ)が発生した格好である。
ミッドキャップに集中する強烈な売り圧力
HoSE(ホーチミン証券取引所)では、前日比1%超下落した銘柄が112に達し、値上がり97銘柄を上回った。特に中型株(ミッドキャップ)への売りが顕著で、いずれも日次売買代金が数百億ドン規模の主力銘柄が軒並み下落している。
- CTD(コテックコンス、建設大手)▲4.71%(場中高値比▲4.48%)
- PC1(パワー・コンストラクション1)▲4.99%(同▲5.48%)
- POW(ペトロベトナム・パワー)▲2.44%(同▲3.11%)
- VCG(ビナコネックス)▲1.34%
- VND(VNダイレクト証券)▲1.20%(同▲2.37%)
- DCM(ダクノン肥料)▲2.19%
- PDR(ファットダット不動産)▲1.21%
唯一の救い—高流動性銘柄では「買い」が優勢
悲観一色というわけではない。HoSEで売買代金上位20銘柄(全体の約60%の流動性を占める)に絞ると、値下がりは7銘柄にとどまり、残りはすべて値上がりを維持した。代表的な銘柄は以下の通りである。
- VIX(VIX証券)+5.08%、約定代金1,457.5億ドンで全市場トップ
- GEX(ジェレックス、電力・不動産)+6.69%
- NVL(ノヴァランド、不動産)+3.93%
- BID +3.79%、VHM +1.55%、SHB +1.06%、CTG +1.12%
値上がり97銘柄がHoSE全体の売買代金の54.6%を占め、値下がり213銘柄は42.8%にとどまった。「数」では売りが圧倒しているが、「金額」では買い方がやや優勢という二面性のある相場だったと言える。
外国人投資家は12営業日連続の売り越し
海外投資家はこの日もHoSEで約905億ドンの純売却を行い、12営業日連続の売り越しとなった。累計売越額は約1兆1,376億ドンに達している。主な売却銘柄はFPT(FPTコーポレーション、IT最大手)▲445.3億ドン、VHM▲269.9億ドン、ACB(アジア商業銀行)▲138.5億ドン、MSB(マリタイム銀行)▲123億ドン、CTD▲80.5億ドン、STB(サコムバンク)▲69.7億ドンなどである。一方、買い越しではMSN(マサングループ)+162億ドン、VIX +147.1億ドン、VIC +134.9億ドン、BID +99.1億ドン、GEX +59.3億ドンが目立った。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の相場が示す最大のメッセージは、「指数は買えても、個別株は買えない」という市場構造の歪みである。VN-Indexが史上最高値に迫る中で、過半数の銘柄が下落しているという状況は、指数連動型のETFやVIC・VHMなど一部の超大型株を保有する投資家にとってはプラスだが、中小型株中心のポートフォリオを組む個人投資家にとっては実質的な「隠れ弱気相場」と言える。
2026年9月に判断が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに向け、ベトナム当局は市場改革を加速しており、大型株への資金集中はこの文脈でも理解できる。格上げが実現すれば、パッシブ資金の流入は時価総額上位銘柄に集中するため、現在の「一握りの大型株が指数を牽引する」構造はむしろ強化される可能性がある。
外国人の12営業日連続売り越しも注視すべきポイントである。累計1兆ドン超の売り越しが続く中で指数が高値圏を維持できているのは国内機関・個人の買いが支えているためだが、海外勢の売りが加速すれば需給バランスが崩れるリスクがある。特にFPTへの大口売りが継続しており、IT・ハイテクセクターへの外国人センチメントの変化には注意が必要である。
日本からベトナム株に投資する個人投資家にとっては、指数の数字に惑わされず、銘柄ごとの需給と値動きを精査することが従来以上に重要な局面と言えるだろう。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント