ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
中国が数十年にわたり推進してきた砂漠化対策が、国内の砂漠拡大を逆転させるだけでなく、「一帯一路」沿線国を含むグローバルな技術移転モデルとして確立されつつある。ベトナム経済メディア「VnEconomy」が中国の取り組みを詳報した。気候変動と土地劣化が深刻化するアジア新興国にとって、この動きは環境・エネルギー・農業分野での新たなビジネス機会を示唆するものである。
「藁の碁盤格子」——1950年代から続く砂漠制御技術の進化
テンゲル砂漠(中国内モンゴル自治区〜寧夏回族自治区にまたがる中国第4の砂漠)の南東縁では、束ねた藁を砂の表面に碁盤目状に押し込む「草方格」と呼ばれる工法が長年用いられてきた。この格子構造は地表付近の風速を低減し、水分を保持して砂粒を固定することで、砂丘の移動を食い止める役割を果たす。
寧夏回族自治区・中衛市の林業技師である唐希明氏によれば、現在は改良型の草格子が導入されており、従来より少ない人手で迅速に施工でき、効果の持続期間も5〜6年と長期化している。コスト削減と大規模展開の両立が可能になったことで、砂漠化対策のスケーラビリティが大きく向上した。
この技術は1950年代、包頭(パオトウ)〜蘭州間を結ぶ中国初の砂漠横断鉄道を砂の埋没から守るために開発されたものである。鉄道保護という実用目的から始まった技術が、その後の大規模な国家プロジェクトの礎となった点は注目に値する。
「三北防護林」プログラム——世界最大の植林事業の成果
中国の砂漠化被害は主に西北・北部・東北の3地域、いわゆる「三北」に集中している。寧夏はその中でも三方を砂漠に囲まれた厳しい環境にあり、中衛市はテンゲル砂漠が南東方向へ拡大するのを防ぐ「盾」の役割を担ってきた。
1978年、中国政府は「三北防護林プログラム」を始動させた。これは世界最大規模の植林事業と評価されており、砂漠の拡大を阻止する「緑の壁」の構築を目指すものである。数十年にわたる取り組みの結果、寧夏は中国で初めて省級単位で砂漠化を逆転させた地域となった。
現在、中国は回復可能な劣化土地の約53%を効果的な管理下に置いている。さらに注目すべきは、近年の世界全体の新規緑化面積の約25%を中国が占めているという事実である。これはNASAの衛星データなどでも裏付けられており、地球規模の生態系回復において中国が果たす役割の大きさを物語っている。
「砂漠経済」——環境対策と経済発展の融合モデル
中国の砂漠化対策は単なる環境保全にとどまらず、経済的価値を生み出す「砂漠経済(沙産業)」モデルへと進化している。
内モンゴル自治区では、防風林の剪定で生じる副産物をバイオマス燃料に転換する取り組みが進んでいる。木質チップを粉砕・圧縮してペレット化した燃料は、石炭と同等の熱量を持ちながらコストが低く、CO2排出も大幅に少ない。ある工場では1日あたり36トン超の原料を処理し、30トン以上のバイオマスペレットを生産しており、地元の農牧民に新たな雇用を創出している。
寧夏では砂漠ツーリズムや太陽光発電の展開により、かつての不毛地帯が安定収入源に変貌しつつある。甘粛省では砂漠周辺の農家がニクジュウヨウ(肉蓯蓉、漢方薬原料)や砂漠ネギなど特産作物を栽培し、関連企業・生産拠点100社以上が形成されるなど、過酷な自然条件を逆手に取ったバリューチェーンが構築されている。
国際展開——「一帯一路」沿線国への技術移転
中国は国連砂漠化対処条約(UNCCD)の早期締約国として、国際的な技術共有にも積極的である。
カザフスタンのアルマトイでは、寧夏の農業企業が開発したキヌア品種が塩害・アルカリ土壌での大規模栽培に向けて展開される予定である。同企業の呉夏瑞会長によれば、2018年から始まった試験栽培はすでに成果を上げており、「灌漑用水を30%以上、肥料を15〜30%削減しながら土壌の肥沃度を改善できる」という。現在はウズベキスタンやエジプトなど「一帯一路」参加国との協力を拡大し、技術移転・生態回復・地域産業育成を統合するモデルの構築を目指している。
今月初めには、UNCDの委託により寧夏で1週間の国際研修が開催され、モンゴル、韓国、インドを含む18カ国から34名の研修生が参加した。中国は毎年、アジア・アフリカ・中南米の途上国から約100名の砂漠化対策専門家を育成しており、グローバルな知識共有拠点としての地位を固めつつある。
モンゴルでは「2030年までに10億本植樹」構想を中国の専門家が支援し、サウジアラビアでは太陽光発電と砂地安定化を組み合わせたモデルが導入されている。サハラ砂漠以南のアフリカでは、三北プログラムの教訓が「グレート・グリーン・ウォール」構想に活かされている。中国・中央アジア砂漠化対策協力センターの馮占文所長は「砂漠化対策技術は中国だけのものではなく、全人類共通の財産だ」と強調し、今年中に中央アジア3カ国で実地プロジェクトと2回の技術研修を実施する計画を明らかにした。
投資家・ビジネス視点の考察
本記事は直接的にはベトナム発の経済ニュースではなく、ベトナムの経済メディアが中国の砂漠化対策を取り上げたものであるが、以下の観点からベトナム株式市場・日本企業にとっても示唆がある。
1. ベトナムへの波及可能性:ベトナム中南部の乾燥地帯(ニントゥアン省、ビントゥアン省など)は砂漠化リスクを抱えており、中国モデルの技術移転先候補となりうる。太陽光発電と砂地安定化の複合モデルは、すでにベトナム南部で大規模太陽光プロジェクトを展開するBCG Energy(ホーチミン証券取引所上場)やREE Corporation(REE)などにとって参考事例となる可能性がある。
2. バイオマス・再エネ関連銘柄への注目:中国のバイオマスペレット生産モデルは、農業廃棄物が豊富なベトナムの農村部でも応用可能である。ベトナム政府が推進する「Power Development Plan VIII(PDP8)」ではバイオマス発電の拡大も盛り込まれており、関連サプライチェーンの成長が期待される。
3. FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場格上げにおいては、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みが海外機関投資家の銘柄選定基準として重視される。砂漠化対策・生態回復関連の技術を取り込む企業は、ESGスコアの向上を通じて海外資金を呼び込みやすくなる可能性がある。
4. 日本企業への含意:日本の商社や環境コンサルティング企業にとって、中国の砂漠化対策ノウハウが「一帯一路」を通じてASEAN・中央アジアに広がる流れは、競合環境の変化を意味する。一方で、日本が強みを持つ水処理・土壌改良技術との連携余地も存在し、ベトナムを拠点とした第三国協力の枠組みが検討に値する。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: VnEconomy元記事












コメント