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米中間のエネルギー貿易に大きな動きが出ている。2025年6月、中国が米国産LNG(液化天然ガス)の直接輸入を1年以上ぶりに再開する見通しとなった。トランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談を背景に、両国の通商関係改善の兆しとして国際エネルギー市場が注目している。
3隻のLNGタンカーが米国を出港、6月中旬に天津港へ
金融データ企業LSEG(ロンドン証券取引所グループ)のデータによると、3隻のLNGタンカーが先週、米国ルイジアナ州の輸出施設を出港し、6月中旬から下旬にかけて中国に到着する予定である。具体的には、タンカー「ウム・アル・ハナヤ(Umm Al Hanaya)」が5月5日にシェニエール・エナジー(Cheniere Energy、米国最大のLNG生産企業)のサビーンパス(Sabine Pass)輸出施設を出港。さらに「アル・サイリヤ(Al Sailiya)」と「イド・アサ(Id’Asah)」の2隻が5月8日にベンチャー・グローバル(Venture Global、米国第2位のLNG生産企業)のプラクマインズ(Plaquemines)施設を出港した。3隻とも中国・天津港に6月15日から20日の間に入港する見込みである。
トランプ再任後、米中LNG直接貿易はほぼ途絶していた
これらの出荷は、トランプ大統領が5月14〜15日に北京を公式訪問し、習近平主席と首脳会談を行った直後のタイミングで実現した。2025年1月にトランプ氏が第2期大統領に就任して以降、米中間の通商摩擦が激化し、米国から中国へのLNG直接輸送は事実上ストップしていた。
過去1年間、一部のタンカーが中国向けとして米国の港を離れたものの、実際に米国から中国へ直行した船舶はほぼ皆無であった。唯一の例外は、2024年12月にテキサス州コーパスクリスティのシェニエール施設でLNGを積載し、2025年2月に中国に到着したタンカー「ムーラン(Mu Lan)」のみである。それ以外に2025年中に中国へ直行した3隻は、いずれも2025年1月(トランプ就任前)に到着したもので、2024年11月・12月に米国を出港していた。
また、米国エネルギー省(DOE)によれば、バングラデシュで大部分を荷下ろしした後に少量の米国産LNGを中国の港で降ろしたタンカーが2隻あった(1隻は2025年、もう1隻は2026年に中国で荷下ろし。それぞれ2025年9月、2026年2月に米国を出港)。
激減した米中LNG貿易の全体像
米国エネルギー情報局(EIA)のデータによれば、米中間のLNG貿易は2021年に過去最高の131隻を記録した。しかしその後は減少傾向にあり、2022年は30隻、2023年は52隻、2024年は64隻と推移している。米国は現在、世界最大のLNG輸出国であり、中国は世界最大のLNG輸入国である。両国間のエネルギー貿易は少なくとも2011年から続いており、EIAが2000年から記録を開始して以来のデータで確認されている。
中国企業は米国産LNGを第三国に転売していた
注目すべきは、多くの中国企業が米国のLNG生産者と長期購入契約を結んでいたにもかかわらず、過去1年間はそのLNGを他国のバイヤーに転売していた点である。その背景には、米中通商摩擦による関税リスクの回避と、世界的なLNG価格高騰による転売利益の確保という二重の動機があった。特に近月では、イラン情勢に起因する市場の混乱がLNG価格を押し上げ、中国の輸入業者にとって転売の利益率がさらに高まっていた。
一方で、中国はロシアおよび中央アジアからのパイプラインガス輸入への依存度を着実に高めている。米国のエネルギーコンサルタント会社EBWアナリティクス・グループ(EBW Analytics Group)のアナリストによれば、中国の在庫水準が低下すれば米国産LNGの受け入れが魅力的になる可能性があるが、国内生産と割安なパイプラインガスが引き続き優先的な供給源となる見通しである。
ベトナムへの影響と投資家視点の考察
今回のニュースは直接ベトナムに関するものではないが、ベトナムの投資家やエネルギー関連企業にとって複数の示唆がある。
第一に、国際LNG市場の価格動向への影響である。中国が米国産LNGの直接輸入を再開すれば、アジア全体のLNGスポット価格に下押し圧力がかかる可能性がある。ベトナムは現在、南部のティーバイ(Thi Vai)LNGターミナルを稼働させ、LNG輸入を本格化させている段階にあり、LNG調達コストの変動は電力料金やガス関連企業の収益に直結する。ベトナムのガス最大手ペトロベトナムガス(PV GAS、銘柄コード:GAS)や、電力セクター全般にとって注視すべき動きである。
第二に、米中関係の改善がベトナム経済に与える間接的影響がある。米中貿易摩擦はベトナムにとって「漁夫の利」として製造業のサプライチェーン移転を加速させてきた。両国関係が本格的に改善に向かえば、ベトナムへの生産移転の勢いが鈍化する可能性もある。ただし、今回のLNG貿易再開はあくまで限定的な改善シグナルであり、関税構造の根本的な変化を意味するものではないと見られている。
第三に、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナムの格上げとの関連である。国際的なエネルギー価格の安定は、ベトナムのインフレ抑制と通貨安定に寄与し、格上げ審査においてもプラス材料となり得る。エネルギー安全保障の観点からも、ベトナムが多様な調達ルートを確保することの重要性が改めて浮き彫りになっている。
日本企業にとっても、ベトナムでのLNG関連インフラ投資(JERAや大阪ガスなどがベトナムのガス火力発電プロジェクトに参画)において、国際LNG市場の構造変化を注視する必要がある。
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出典: 元記事












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