中国発ミルクティー「MiXue(蜜雪氷城)」がベトナム・インドネシアで数百店舗閉鎖—その背景と投資家への示唆

Mixue đóng hàng trăm cửa hàng ở Việt Nam và Indonesia
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中国発の低価格ミルクティーチェーン「蜜雪氷城(Mixue/ミーシュエ)」が、2025年に海外ネットワークを400店舗以上純減させていたことが明らかになった。閉鎖の中心はベトナムとインドネシアであり、急拡大路線からの転換を示す動きとして注目される。東南アジアのF&B(食品・飲料)市場における中国チェーンの戦略を読み解くうえで、極めて重要なシグナルである。

目次

蜜雪氷城とは何か——「1杯1万ドン」の衝撃

蜜雪氷城(中国語:蜜雪冰城、英語:Mixue)は、中国・河南省鄭州市に本社を置くドリンク・アイスクリームチェーンである。1997年の創業以来、「圧倒的な低価格」を武器に中国国内で爆発的に店舗数を拡大し、世界最大級の飲料チェーンへと成長した。2023年には香港証券取引所への上場も果たしている。

同社のベトナム進出は2023年頃から本格化した。ベトナムではミルクティー1杯あたり1万〜2万5,000ドン(日本のコンビニコーヒーよりはるかに安い価格帯)という破格の設定が話題となり、ホーチミン市やハノイ市を中心に若年層の支持を集めた。「雪だるま」のキャラクターは瞬く間にベトナムのSNSでバイラル化し、出店ラッシュが続いた。インドネシアでも同様に、ジャカルタ首都圏を中心にフランチャイズモデルで急速に店舗網を広げていた。

400店超の純減——何が起きたのか

報道によると、蜜雪氷城の海外ネットワークは2025年に400店舗以上の純減を記録した。この「純減」とは、新規出店を差し引いてもなお400店超が減少したことを意味しており、閉鎖された店舗の実数はさらに大きい可能性がある。削減の中心となったのがベトナムとインドネシアの2カ国であり、同社はこの動きを「システムの最適化」と位置づけている。

ベトナムでは、一時期ホーチミン市の主要商業エリアだけでも数十メートルおきに蜜雪氷城の看板が並ぶほどの過密出店状態にあった。同一エリアに店舗が集中することで、フランチャイズオーナー同士が売上を食い合う「カニバリゼーション(共食い)」が深刻化していたとみられる。インドネシアでも同様の現象が報告されており、出店スピードが需要の成長を上回っていた可能性が高い。

背景にある東南アジアF&B市場の構造的課題

蜜雪氷城の大量閉店は、同社固有の問題にとどまらず、東南アジアのF&B市場が抱える構造的な課題を浮き彫りにしている。

第一に、低価格モデルの収益性の壁である。ベトナムやインドネシアは人件費や賃料が相対的に低いとはいえ、近年はいずれも上昇傾向にある。ベトナムでは2024年に最低賃金が6%引き上げられ、ホーチミン市中心部の商業テナント賃料も高騰が続いている。1杯あたりの単価が極めて低い蜜雪氷城のモデルでは、固定費の上昇を吸収しきれない店舗が出てくるのは必然であった。

第二に、競争の激化がある。ベトナムのミルクティー市場には、台湾系の「Gong Cha(ゴンチャ)」「The Alley(ジ・アレー)」、地場の「Phuc Long(フックロン)」「Highlands Coffee(ハイランズコーヒー)」など多数のプレーヤーがひしめいている。蜜雪氷城の参入当初は「安さ」が差別化要因となったが、地場チェーンも価格帯を下げた対抗商品を投入するなど、価格優位性が薄れつつあった。

第三に、フランチャイズモデルの品質管理の問題がある。蜜雪氷城はフランチャイズ方式で急拡大したが、加盟店の急増に伴い、原材料の品質管理や衛生面でのトラブルがベトナムのSNS上でたびたび話題となっていた。ブランドイメージの毀損は、特にSNSが購買行動に直結する若年層マーケットにおいて致命的なリスクとなる。

「最適化」は撤退ではない——次のフェーズへの布石

重要なのは、今回の動きが「東南アジアからの撤退」ではなく、あくまで「システムの最適化(tối ưu hệ thống)」であるという点である。蜜雪氷城は依然としてベトナム・インドネシアの両国に数百規模の店舗を維持しており、不採算店舗を整理することで、残存店舗の収益性を高める戦略に転じたと見るべきである。

中国のチェーンストア業界では、拡大初期にまず「面」を押さえ(大量出店でブランド認知を確立し)、その後に不採算店を刈り込んで「質」を高めるという二段階戦略が珍しくない。蜜雪氷城の今回の動きは、まさにこの「第二フェーズ」への移行と解釈できる。

投資家・ビジネス視点の考察

1. ベトナム上場F&B関連銘柄への影響
蜜雪氷城の店舗縮小は、ベトナムの地場飲料チェーンにとっては競争緩和のプラス材料となり得る。ホーチミン市証券取引所(HOSE)に上場するフックロンの親会社であるマサングループ(MSN)や、ハイランズコーヒーを傘下に持つジョリビー・フーズ(フィリピン上場)の動向に間接的な好影響が及ぶ可能性がある。一方で、テナント賃料の上昇や消費者の節約志向といったマクロ要因は、業界全体に共通するリスクとして注視が必要である。

2. 日本企業・ベトナム進出企業への示唆
今回の事例は、「東南アジア=低コストで簡単に拡大できる」という楽観論に対する警鐘でもある。日本のF&B企業がベトナム進出を検討する際には、出店ペースのコントロール、フランチャイズパートナーの選定、賃料上昇リスクのヘッジといった点を慎重に設計する必要がある。特に、ベトナムの若年層はSNSでの口コミに極めて敏感であり、品質管理の不備は一夜にしてブランド価値を毀損し得るという教訓を、蜜雪氷城の経験は示している。

3. FTSE新興市場指数への格上げとの関連
ベトナム株式市場は2026年9月にFTSE新興市場指数への格上げ判定が見込まれている。格上げが実現すれば、海外機関投資家からの資金流入が加速し、消費関連セクターへの注目度も一段と高まることが予想される。蜜雪氷城のような外資チェーンの「選択と集中」は、裏を返せばベトナム消費市場が成熟段階に入りつつある証左であり、地場の優良消費関連銘柄にとっては中長期的な追い風となり得る。

4. ベトナム経済全体のトレンドにおける位置づけ
ベトナムは人口約1億人、中間所得層の拡大が続く有望市場であることに変わりはない。しかし、「量」から「質」への転換期に差しかかっており、単に安さだけを武器にした参入戦略では持続可能な成長が難しくなっている。今回の蜜雪氷城の動きは、ベトナム消費市場が「安ければ売れる」フェーズから「価値に見合った対価を支払う」フェーズへと移行しつつあることを象徴するケーススタディとして記憶しておくべきである。


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出典: 元記事

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