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中国発の大手火鍋チェーン「海底撈(ハイディラオ/Haidilao)」の国際事業を統括するSuper Hi International(スーパー・ハイ・インターナショナル)が、ベトナム市場において2025年に2,400億ドン超の売上高を達成したことが明らかになった。ベトナム国内17店舗という規模で叩き出したこの数字は、同国の外食産業における海外チェーンの存在感の高まりを如実に示している。
海底撈とSuper Hi International——国際展開の構図
海底撈は1994年に中国・四川省で創業した火鍋専門チェーンであり、徹底したホスピタリティと独特の接客スタイルで世界的に知られる。中国本土での運営は「海底撈国際控股(Haidilao International Holding)」が担い、香港証券取引所に上場している。一方、中国本土以外の海外市場については、2022年に分離上場した「Super Hi International Holdings」が運営を担当しており、こちらも香港証券取引所に上場(銘柄コード:9658.HK)している。Super Hi Internationalは東南アジア、東アジア、北米、欧州など世界各地で店舗を展開しており、ベトナムはその中でも重要な成長市場の一つに位置づけられている。
ベトナム17店舗で2,400億ドン超——その意味
今回の報道によると、Super Hi Internationalがベトナム国内で運営する17店舗の合計売上高は2,400億ドンを超えた。ベトナムでは「lẩu(ラウ)」と呼ばれる鍋料理が食文化の根幹を成しており、現地のローカル鍋専門店は無数に存在する。しかし、その中で中国発の火鍋チェーンが17店舗規模でこれだけの売上を確保しているという事実は、単なる「外資系レストランの進出」にとどまらない構造的な変化を示唆している。
ベトナムの外食市場は、急速な都市化と中間所得層の拡大を背景に年々成長を続けている。特にホーチミン市やハノイといった大都市圏では、若年層を中心に外食頻度が高まっており、SNS映えするブランド体験型の飲食店への需要が旺盛である。海底撈はまさにこのトレンドに合致する存在だ。待ち時間にネイルサービスやスナックを無料提供するなどの「体験型サービス」は、ベトナムの若い消費者の間でも話題を呼んでおり、各店舗はピーク時に長い行列ができることも珍しくない。
ベトナム外食市場の競争環境
ベトナムの外食産業は、ローカル店と海外チェーンが激しく競合するダイナミックな市場である。鍋料理に限っても、ベトナム資本の「Kichi-Kichi(キチキチ)」(ゴールデンゲート・グループ傘下の回転しゃぶしゃぶチェーン)や「Manwah(マンワー)」(同じくゴールデンゲート傘下の台湾式火鍋チェーン)など、有力な競合が多数存在する。ゴールデンゲート・グループ(Golden Gate Group)はベトナム最大級の外食コングロマリットであり、400店舗以上を展開する巨大プレーヤーだ。
こうした激戦区において、海底撈が17店舗で2,400億ドン超を売り上げていることは、1店舗あたりの売上効率が高い「高単価・高回転モデル」がベトナムでも機能していることを裏付ける。ベトナムのローカル鍋店の客単価が一人あたり数十万ドン程度であるのに対し、海底撈は一般的にそれよりもかなり高い価格帯を設定している。にもかかわらず集客力を維持できている点は注目に値する。
ベトナムにおける中国系ブランドの浸透
歴史的に見ると、ベトナムと中国の関係は複雑であり、反中感情が消費行動に影響を及ぼすケースもある。しかし近年、若い世代を中心に「ブランドの国籍」よりも「体験の質」を重視する傾向が強まっている。海底撈だけでなく、ミルクティーチェーンの「Mixue(蜜雪冰城/ミーシュエ)」がベトナム全土で爆発的に店舗数を拡大しているのも同様の文脈で理解できる。中国系ブランドがベトナム市場で成功するには、価格戦略とサービス品質の両立が不可欠であり、海底撈はまさにその好例と言えるだろう。
投資家・ビジネス視点の考察
このニュースは、複数の観点から投資家やビジネスパーソンにとって示唆に富む。
1. ベトナム消費市場の成熟化シグナル:海底撈のような「プレミアム外食」が17店舗規模で成立しているという事実は、ベトナムの消費者の購買力が着実に向上していることの証左である。これは小売・消費財セクター全般にとってポジティブな材料であり、ベトナム株式市場においてもマサングループ(Masan Group、銘柄コード:MSN)やモバイルワールド(Mobile World、銘柄コード:MWG)といった内需・消費関連銘柄の中長期的な成長シナリオを補強するものだ。
2. 日本の外食企業への示唆:海底撈の成功は、日本の外食チェーンにとっても参考になる。すでに丸亀製麺(トリドールHD)、吉野家、ペッパーランチなどがベトナムに進出しているが、「体験価値」を高める仕掛けと現地消費者の嗜好への適応が鍵を握ることを改めて示している。日本食はベトナムで根強い人気があるものの、価格帯とサービス設計のバランスを誤れば苦戦するリスクもある。
3. Super Hi International株への注目:香港上場のSuper Hi International(9658.HK)は、ベトナムを含む海外市場の成長が株価の主要ドライバーとなっている。ベトナムでの好調は同社全体の業績にプラス寄与するため、海外の中国系外食銘柄に投資する際の材料として押さえておきたい。
4. FTSE新興市場指数への格上げとの関連:ベトナム株式市場は2026年9月にFTSE新興市場指数への格上げが決定される見込みであり、これが実現すれば海外からの資金流入が加速する。消費市場の成長を示すデータが蓄積されることは、ベトナム経済のファンダメンタルズの強さを海外投資家にアピールする好材料となる。海底撈の売上データも、そうしたポジティブなストーリーの一つのピースとして位置づけられる。
5. ベトナム経済全体のトレンド:ベトナムは人口約1億人、平均年齢30歳前後という若い人口構成を持ち、都市化率も年々上昇している。外食産業の成長はこうしたマクロ経済トレンドの恩恵を直接受けるセクターであり、今後も海外ブランドの参入と競争激化が続く見通しだ。中長期的には、外食関連のサプライチェーン(食材物流、店舗内装、決済サービスなど)にもビジネス機会が広がっていくだろう。
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