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欧州連合(EU)が発動した関税障壁にもかかわらず、中国ブランドの自動車が西欧市場で存在感を急拡大させている。2025年5月、中国メーカー各社は西欧における新規登録台数で日本メーカーを初めて上回った。保護主義的な貿易政策をもってしても中国車の勢いを止められない現実が、いま欧州の自動車産業に大きな衝撃を与えている。
関税障壁を突破する中国車の躍進
EUは2024年秋以降、中国製電気自動車(EV)に対して最大で数十パーセントに及ぶ追加関税を課してきた。これは中国政府による過剰な産業補助金が、不公正な低価格競争を生み出しているという欧州側の懸念に基づく措置である。BYD(比亜迪)やSAIC(上海汽車集団)傘下のMG(エムジー)といった主要メーカーは、この関税措置の直接的な標的となってきた。
しかし、蓋を開けてみれば効果は限定的だったと言わざるを得ない。関税分を吸収してもなお競争力を維持できる圧倒的な生産コスト、そして急速なモデル刷新のスピードを背景に、中国メーカーは西欧市場でのシェアを着実に伸ばし続けている。2025年5月の統計では、中国ブランド車の新規登録台数が日本ブランド車を上回るという象徴的な転換点を迎えた。長らく「安くて壊れない」という評価で欧州市場に根を張ってきた日本車が、中国車にその座を明け渡し始めているのである。
背景にある中国EV産業の構造的優位
中国メーカーが欧州で攻勢をかけられる背景には、バッテリーのサプライチェーンを自国内でほぼ完結させている点が大きい。リチウムイオン電池の主要原料であるリチウムやコバルトの精製・加工能力において、中国は世界シェアの大半を握っている。これにより、欧州や日本のメーカーが直面する部材コストの高騰リスクを、中国メーカーは相対的に抑え込むことができる。
加えて、中国国内の激しい価格競争を勝ち抜いてきたBYDなどのメーカーは、欧州市場向けに専用モデルを短期間で投入する開発スピードを備えている。欧州の消費者にとっては、デザイン性とコストパフォーマンスを両立した選択肢として、中国車が急速に受け入れられている状況だ。
日本メーカーが直面する正念場
トヨタ自動車、日産自動車、ホンダといった日本メーカーは、ハイブリッド車を中心とした技術的信頼性で長年欧州市場を支えてきた。しかし純粋なEV分野においては、投入台数やモデルラインアップの面で中国メーカーに後れを取っているとの指摘が根強い。今回の中国車が日本車を新規登録台数で上回ったという事実は、単なる一時的な現象ではなく、欧州における日本車のブランドポジションそのものが揺らぎ始めていることを示す象徴的な出来事といえる。
投資家・ビジネス視点の考察
この欧州自動車市場における勢力図の変化は、一見するとベトナムとは直接関係のないニュースに思えるかもしれない。しかし、ベトナム経済・株式市場を注視する投資家にとっては見逃せない示唆を含んでいる。
第一に、中国EVメーカーの世界的な躍進は、東南アジアにおける生産・輸出拠点としてのベトナムの重要性を再認識させる材料となる。VinFast(ビンファスト、ビングループ傘下のEVメーカー)は、まさにこの「中国勢の攻勢にどう対抗するか」という文脈の中で、米国・欧州市場への展開を進めている。中国車が欧州で関税をものともせず躍進している状況は、VinFastにとって強力なライバルの存在を改めて浮き彫りにする一方、東南アジア域内や新興市場においては中国メーカーとの直接競合を避けた独自路線を模索する動機にもなり得る。
第二に、日本の自動車メーカー各社が欧州でのシェアを守勢に回している現実は、日本企業のグローバル戦略における「東南アジア回帰」の流れを後押しする可能性がある。トヨタやホンダは長年、ベトナムを含む東南アジア市場を重要な生産・販売拠点と位置付けてきた。欧州での競争激化により経営資源の再配分が進めば、ベトナムにおける追加投資や新モデル投入の動きが加速することも十分考えられる。
第三に、この一連の動きはFTSEラッセルによるベトナム株式市場の新興国市場(エマージング・マーケット)への格上げ(2026年9月決定見込み)とも間接的に関連する。ベトナムが自動車・EVサプライチェーンの一角として存在感を高めれば、外国人投資家のベトナム製造業セクターへの関心はさらに高まるだろう。VinFastをはじめとする関連銘柄、さらには部品サプライヤーやロジスティクス関連銘柄への資金流入という形で、株式市場への波及効果も期待できる。
ベトナム経済全体のトレンドという観点では、「中国+1」戦略の受け皿としてのベトナムの役割は、自動車・EV分野においても引き続き拡大していくとみられる。欧州市場における中国車の躍進は、裏を返せば中国製造業の圧倒的な競争力を示すものであり、それに対抗・共存する形でベトナムがどのようなポジションを築いていくのか、今後も注視すべきテーマである。
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ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
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出典: 元記事












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