ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
中東の戦争がアジア―欧州間の航空路線を収縮させ、長距離旅行の需要を押し下げている。その結果、飛行時間4時間圏内のアジア近距離都市を巡る「短期旅行(マイクロケーション)」が韓国・東南アジア・ベトナムで一大トレンドとなっており、ベトナムの観光産業にとって大きな追い風となりつつある。
中東紛争がもたらした航空事情の変化
中東地域の戦闘激化により、アジアと欧州を結ぶ航空路線は大きく制約を受けている。便数の減少、燃油サーチャージの高騰、安全面への懸念が重なり、航空券価格が上昇。欧州やアメリカといった長距離の旅行先は、多くのアジアの旅行者にとって「遠い存在」になりつつある。
「マイクロケーション」—短く、頻繁に旅する新潮流
こうした状況下で急速に台頭しているのが「マイクロケーション(microcaction)」と呼ばれる1〜3日間の短期旅行である。旅行大手エクスペディア(Expedia)の専門家メラニー・フィッシュ氏によれば、この旅行形態は驚くほど普及が進んでいる。エクスペディアの最新レポートでは、ミレニアル世代およびZ世代の旅行者の25%が、1〜3日間だけのフライト旅行を計画していると回答した。
韓国市場の変化—ベトナムが人気目的地3位に浮上
韓国の大手旅行会社ハナツアー(Hana Tour)が5月初旬(5月1〜5日)の予約動向を分析したところ、中国が30%のシェアでトップに躍り出た。日本が23%で2位、そしてベトナムが14%で3位に入っている。
業界関係者は、中国の急浮上は韓国人の旅行習慣の根本的な変化に起因すると分析する。従来、海外旅行は長期休暇に紐づくものだったが、現在は年次有給休暇を使わずに頻繁に短期旅行をする「分散型」のスタイルが定着しつつある。ソウル在住の会社員チェ・サンウォン氏(32歳)は「長い旅行は出発前の準備も帰国後の仕事の巻き返しも大変。短い旅行のほうが仕事への影響を最小限にしつつリフレッシュできる」と語る。
航空比較サイト・スカイスキャナー(Skyscanner)が2026年3月に実施した調査では、韓国の会社員1,000人のうち62%が今年「短く頻繁に旅行する」予定だと回答している。
東南アジアのZ世代—旅はご褒美ではなく「必需品」
アゴダ(Agoda)の「Travel Outlook 2026」レポートによると、タイのZ世代にとって旅行はもはや仕事のご褒美ではなく、精神的なバランスを保つための「必需品」である。タイの若者の77%が旅行の主目的を「リラックスとストレス解消」と回答し、65%以上が1〜3日間の短期旅行を選択している。また72%が「予算」を目的地選びの最重要要素と位置づけ、34%は費用が合理的であれば知名度の低い目的地でも構わないとしている。
ベトナムのZ世代—「どこに行くか」より「何を体験するか」
アゴダがベトナムで実施した調査では、Z世代の81%が今後1年間に最大6回の旅行を計画しており、約80%が滞在期間を1週間未満と回答した。アゴダ・ベトナムのカントリーディレクター、ヴー・ゴック・ラム氏は「今の若者は旅行の定義そのものを書き換えている。柔軟性を重視し、体験を中心に据え、より頻繁に旅をするようになった」と述べる。
ベトナムのZ世代は「どこに行くか」よりも「何を体験するか」を重視しており、文化探索(48%)や食の体験(42%)を旅の目的に挙げる。リゾート・休養も58%が計画に組み込んでいる。さらに21%がコンサート、フェスティバル、スポーツイベントへの参加を目的に旅行を計画しており、「イベント連動型旅行」も新たなトレンドとして浮上している。
4月30日〜5月1日連休—国内短期ツアーが売上の中心に
ベトナム最大手旅行会社ビエットラベル(Vietravel)のグエン・クオック・キー会長は「旅行需要自体は維持されているが、消費行動は明確に変わった。ベトナム人旅行者は価格に敏感になり、旅行期間を短縮し、近場の目的地を優先し、出発直前に予約を決める傾向が強まっている」と指摘する。
ビエットラベルでは、今回の連休で国内短期ツアーが売上の大部分を占めており、サパ(Sa Pa、ラオカイ省の山岳リゾート地)、ハロン湾(クアンニン省の世界遺産)、チャンアン(ニンビン省の景勝地)などを巡る2〜3日間のツアーを強化。柔軟な出発日設定で効率的に客を集めている。フーコック島、ダナン、ニャチャン、クイニョン、ダラットといった定番リゾート地も安定した人気を保っている。海外向けではタイ、シンガポール、マレーシア、中国、台湾など近距離路線の需要拡大が顕著である。
サイゴンツーリスト(Saigontourist)も「短く休む・近場に行く」モデルを推進しており、ホーチミン市発でブンタウ(Vũng Tàu)、ファンティエット(Phan Thiết)、ホートラム(Hồ Tràm)、タイニン(Tây Ninh)、メコンデルタ各省を巡る1〜3日ツアーを展開。交通と宿泊に絞ったミニマルなパッケージで価格を抑え、観光・食事はオプションとすることで幅広い予算帯の顧客を取り込んでいる。
ビエットラックスツアー(Vietluxtour)のマーケティング・コミュニケーション担当ディレクター、チャン・ティ・バオ・トゥ氏によると、4月30日連休のツアー予約は計画の80%超に到達。ビーチリゾートで3〜4日間滞在するプランが人気で、直前予約が増加しているものの、価格とスケジュールが合理的な商品は埋まるスピードが速いという。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の短期旅行トレンドは、ベトナムの観光関連銘柄にとって複合的な追い風となり得る。具体的には以下のポイントに注目したい。
①ベトナム観光株への影響:ビエットラベルを傘下に持つビエットラベル・グループや、リゾート開発を手がけるビングループ(Vingroup、ベトナム最大手コングロマリット)傘下のビンパール(Vinpearl)、空港運営のベトナム空港総公社(ACV)などが恩恵を受ける可能性がある。韓国からの訪越需要の高まりはインバウンド関連銘柄にもプラスに働く。
②航空会社への二面性:中東情勢による燃油コスト増は航空会社にとってコスト圧力だが、近距離路線の需要拡大はベトジェット(VietJet Air)やバンブー航空(Bamboo Airways)などLCC(格安航空会社)の搭乗率向上に寄与する。特に国内線・近距離国際線に強いベトジェットにとっては追い風となろう。
③日本企業への示唆:日本はハナツアーの調査で韓国人旅行者の目的地2位(23%)を維持しており、日本の観光地にとってもアジア近距離短期旅行の恩恵は大きい。一方、ベトナムが3位に浮上している事実は、ベトナムで観光・ホスピタリティ事業を展開する日系企業にとっても好材料である。
④FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、海外からの投資資金流入が加速する。観光セクターの成長は内需の強さを示す一つの指標であり、格上げ判断においてもポジティブな材料となる。
⑤マクロ的な位置づけ:短期旅行の拡大は、ベトナムの若年層(Z世代)の旺盛な消費意欲と、サービス産業のGDP寄与度の高まりを裏付けるものである。ベトナム経済がこれまでの製造業主導から内需・サービス主導へと構造転換を進める中で、観光消費の質的変化は長期的な成長ストーリーの一部として注目に値する。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント