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米連邦準備制度理事会(FRB、通称Fed)が政策金利を据え置きつつタカ派姿勢を強めたことで、円は対ドルで2024年7月以来の安値となる1ドル=160.8円まで下落した。日本銀行(BOJ)が31年ぶり高水準となる1%への利上げを実施した直後にもかかわらず、円安の流れは止まっていない。この動きはベトナム市場にも波及する可能性がある。
Fedのタカ派シグナルがドル高・円安を加速
6月17日(水)の取引で、円は一時0.2%下落し1ドル=160.8円を記録。翌18日(木)朝も160.7円付近で推移した。直接の引き金となったのは、Fedが最新の政策会合で金利を据え置いたものの、従来よりタカ派寄りのシグナルを発したことである。市場では、Fedが年内に利上げに踏み切る可能性への賭けが増加した。
外国為替取引会社モネックス・インク(Monex Inc.)のアンドリュー・ヘイズレット氏はブルームバーグに対し、「Fedの会合はタカ派寄りの姿勢を示した。このシグナルがドル高を招き、円に追加的な圧力をかけ、当局の介入が意識される水準まで円を押し下げた」と指摘した。
BOJ利上げも市場の不安は払拭されず
BOJは6月16日(火)に政策金利を1%に引き上げた。これは実に31年ぶりの高水準である。しかし、アナリストらはBOJの利上げペースがインフレ抑制や円安対策として十分ではないとの懸念を示している。
BOJの内田真一副総裁は会合後の記者会見で、為替レートは重要な要素であるとしつつも、「金融政策の直接的な目標ではない」と述べた。この発言は市場に対し、BOJが円安是正のために積極的に動く意思が限定的であるとの印象を与えた。
それでもなお、市場はBOJの追加利上げを織り込んでいる。翌日物金利スワップ(OIS)によれば、投資家は年内にBOJがもう一度利上げする確率を約80%と見積もっている。ブルームバーグの調査でも、エコノミスト44人のうち約90%が12月会合までに追加利上げがあると予想している。
記録的な為替介入も効果は限定的
日本政府は4月28日から5月27日にかけて、11兆7,300億円(736億ドル相当)という記録的な規模の円買い介入を実施した。財務省の外貨準備データによると、この介入資金は日本が保有する米国債などの外国証券の一部売却によって捻出されたとみられる。
しかし、これほど大規模な介入にもかかわらず、円安トレンドは反転していない。NatWest MarketsのG10為替戦略責任者ブライアン・デインジャーフィールド氏は、「市場は財務省の動向を引き続き注視する必要がある」としつつも、「現時点で日本が介入する説得力のある理由はない。円は多くの通貨に対してはむしろ上昇しており、問題は円の全般的な弱さではなく、ドルが強すぎることにある」と分析した。
片山さつき財務大臣は、必要に応じていつでも介入する用意があると表明しているが、一部のストラテジストは現在の円安水準では新たな介入のハードルに達していないとの見方を示す。
キャリートレードの復活と原油高が追い打ち
円に対する最大の構造的圧力は、依然として日米間の大きな金利差にある。加えて、米国とイランの対立を背景に原油価格が高止まりしていることも、原油輸入大国でありドル建てで決済する日本にとって逆風となっている。米国とイランがホルムズ海峡の再開に向けた暫定合意に達したものの、円への恩恵はほとんど見られなかった。
投機筋は円売りポジションを9年ぶりの高水準にまで積み上げている。これは、低金利の円を借りて高利回りの資産に投資する「キャリートレード」が、日本の為替介入リスクを承知のうえで復活していることを意味する。
今後の注目水準は1ドル=161.95円である。この水準を突破すれば、円は1986年12月以来の安値を更新することになる。
投資家・ビジネス視点の考察
この円安ドル高の加速は、ベトナム経済・ベトナム株式市場に投資する日本人投資家にとって複数の経路で影響を及ぼす。
第一に、為替コストの増大である。ベトナムドン(VND)は事実上ドルにペッグされているため、円安ドル高はそのまま円安ドン高を意味する。日本からベトナム株を買い増す場合、為替面でのコストが上昇する。逆に、すでにベトナム資産を保有している投資家にとっては、円建てでの評価額が膨らむ追い風となる。
第二に、日系企業のベトナム事業への影響である。円安は日本からの輸出競争力を高める一方で、ベトナム現地での調達コスト(ドル建て)が円換算で増大する。製造拠点をベトナムに持つ日系企業にとっては、利益圧迫要因となり得る。
第三に、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げとの関連である。格上げが実現すれば、グローバル資金のベトナム流入が加速する。その際、ドル高環境が続いていれば、新興国全般への資金流入が抑制されるリスクがある。一方で、ベトナムは対中デカップリングの恩恵を受ける「チャイナ・プラスワン」の最有力候補であり、構造的な資金流入は為替環境に左右されにくいとの見方もある。
いずれにしても、日米の金融政策の方向性の違いが生むドル高・円安トレンドは当面続く可能性が高く、ベトナム投資においても為替ヘッジ戦略の重要性が増している局面である。
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