こんにちは、ベトナム経済&株式投資ニュース解説のベトテク太郎です。
ハノイの朝は最近やたら暑い。タイ湖沿いをランニングしていると、建設クレーンが増えたなと肌で感じる日が続いています。インフラ工事の音が街のBGMになっているような感覚、です。
そんな中、ベトナムの鉄鋼業界で非常に興味深いデータが出てきました。今年最初の4か月間の建設用鋼材消費量が前年同期比22%超増加という数字です。なぜ急増しているのか。背景を丁寧に読み解いていくと、投資家として注目すべき構造変化が見えてきます。
公共投資が鉄鋼需要を押し上げている
数字から入ります。2026年1〜4月、ベトナムの完成鋼材生産量は約1,167万トン、前年同期比23.5%増。消費量は約1,186万トン、14.1%増でした。
特に建設用鋼材は国内企業だけで約500万トンを生産、525万トン以上を販売し、21.1%増という結果です。
この需要急増の正体は何か。南北高速道路やロンタイン空港周辺のインフラ、ハノイ・ホーチミン市それぞれの環状道路開発といった大型プロジェクトが、一斉に工事フェーズに入っているためです。ベトナム政府は公共投資の執行加速を長らく掲げてきましたが、2026年に入ってそれが具体的な鉄鋼需要という形で数字に現れてきた、ということなんです。
現地にいると、ハノイ近郊で大型の土木工事が本当に増えているのを実感します。資材運搬トラックが幹線道路を行き交う光景は、統計の数字と見事にリンクしています。
ホアファット一強の構図
建設用鋼材市場で圧倒的な存在感を示しているのがホアファット(Hoa Phat)です。
同社の2026年1〜4月の建設用鋼材生産量は約191万トン、販売量は190万トン以上。これは業界全体の生産量の約36%、国内建設用鋼材販売量の46%以上に相当します。
2位のVNSteelが66万1,000トン以上の販売量でこれに続いていますが、差は歴然としています。Viet Duc、Viet Y、Posco Yamato Vinaといった企業の販売量はさらに少ない。
なぜここまでの差がつくのか。インフラプロジェクトが求めるのは「大量供給・安定納期・コスト競争力」の三拍子です。巨大な生産設備と全国流通網を持つ大手でなければ、大規模プロジェクトの入札すら難しい。需要が回復するほど、大手の優位性がより鮮明に出てくる構造になっています。
逆に言えば、価格か顧客層か特定製品で独自のポジションを持たない中小企業は、この回復局面においてむしろ厳しい立場に置かれる可能性があります。
セグメント間の明暗分かれる
鉄鋼業界全体が好調かというと、そうではありません。製品ラインによって明暗が大きく分かれているのが今の実態です。
熱延鋼板(HRC)は生産量が約336万トン、32%超増。消費量も333万トンで24.8%増と好調です。輸出量だけでも約60万1,000トンに達し、前年同期のほぼ2倍という水準です。
一方で冷延鋼板(CRC)は生産量が前年同期比1.4%減の約92万5,000トン、販売量は13.6%減の81万6,140トンと落ち込んでいます。輸出も18.6%減少しています。
亜鉛めっき鋼板・カラー鋼板も生産量が約17%減、消費量も15%超減と厳しい状況です。この製品群は輸出依存度が高く、世界的な需要回復の遅れ、中国製との価格競争、各国の貿易保護措置という三重苦を受けています。
ただし亜鉛めっき市場では、ホアセン(Hoa Sen)が約24.4%の国内シェアで首位を維持しています。トン・ドン・ア(Ton Dong A)が16.8%、ナム・キム(Nam Kim)が13.95%で続いています。国内販売に強い企業はここでも相対的に安定しています。
今の鉄鋼業界の成長ドライバーは「国内需要」です。公共投資・インフラ・建設に関わる製品は好調で、輸出依存型の製品は苦戦している。このシンプルな構図を頭に入れておくことが、各企業を分析するときの基点になります。
輸入圧力という見落とされがちなリスク
楽観的な話だけで終わらせるのは太郎的に誠実ではないので、リスク面にも触れておきます。
2026年1〜4月のベトナムの鉄鋼輸入は500万トン超、金額にして約36億ドルに達しています。数量ベースでは前年同期比1.45%減少しているものの、金額ベースでは1.63%増加しています。中国の不動産市場がまだ完全回復していないため、割安な中国製鉄鋼が引き続きベトナム市場に流入し続けている状況です。
さらに輸出面では、ベトナム産鉄鋼に対するアンチダンピング・相殺関税・セーフガード調査が世界各地で数十件進行中です。輸出を成長軸に置く企業にとっては、この不確実性は軽視できません。
国内需要の恩恵を最大限に受けながら、輸入圧力と輸出規制という二つのリスクをどうヘッジしていくか。各社の戦略の差が、今後の業績に大きく影響してくるでしょう。
投資家として何を見るべきか
今回のデータが示していることを整理すると、ベトナム鉄鋼セクターは「公共投資ドリブンで大手が市場シェアを拡大する局面」に入っています。
この文脈で個人的に継続観察しているのは、国内建設用鋼材に圧倒的な存在感を持つホアファット、そして亜鉛めっき市場で国内シェアを維持しているホアセンです。いずれも国内需要の恩恵を最も直接的に受けるポジションにある企業です。
もちろん投資判断はご自身の分析と判断でお願いします。ここに書いたことはあくまで太郎個人の観察です。
インフラ整備が続く限り、建設用鋼材の需要は一定の底堅さを保つはずです。南北高速道路のルートを地図で追いながら、どの企業が恩恵を受けるかを想像する。ベトナム株投資の醍醐味って、まさにこういうところにあると思っています。
そういうことなんです。
いかがでしたでしょうか。今回のベトナム鉄鋼業界の動向について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
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本記事で提供される情報は、執筆者の個人的な分析と見解に基づくものであり、投資判断の最終的な決定は読者ご自身の責任において行ってください。ベトナム株式投資は価格変動が大きく、元本割れのリスクを伴います。
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