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東南アジアのEC(電子商取引)市場が2029年までに2,898億ドル規模に達するとの予測が発表された。決済プラットフォーム「2C2P by Antom」の報告書によるもので、ベトナム、インドネシア、タイが域内デジタル決済の成長を牽引する構図が鮮明になっている。
東南アジアEC市場、世界第2位の成長速度へ
報告書によると、東南アジアのEC市場規模は2024年の1,563億ドルから2029年には2,898億ドルへとほぼ倍増する見通しである。年平均成長率(CAGR)は13.2%で、インド(CAGR 22.1%)に次ぐ世界第2位の成長速度となる。人口約7億人を抱え、若年層比率が高く、スマートフォン普及率が急速に上昇している東南アジアは、EC市場のフロンティアとして世界の投資家から注目を集めている。
デジタル決済が97%を占める時代へ
IDC(International Data Corporation、米国の大手IT調査会社)が実施した調査によれば、デジタル決済は2029年までにEC取引全体の97%を占めると予測されている。2024年時点の89%から大幅な上昇である。主要な決済手段としては以下の3つが挙げられている。
①国内決済(リアルタイム送金・地場銀行ベースの決済)
インドネシア、タイ、ベトナムで特に高い成長が見込まれる。取引額は2024年の451億ドルから2029年には920億ドルへと104%増加し、EC決済全体の約32%を占め、従来型のカード決済を上回る見通しである。ベトナムではVietQRを中心としたQRコード決済が爆発的に普及しており、この潮流と一致する。
②電子ウォレット
2024年の382億ドルから2029年には790億ドルへ107%成長し、シェアは24%から27%に拡大する見込みである。ベトナムではMoMo、ZaloPay、VNPAYなどが激しいシェア争いを展開している。
③BNPL(後払い決済)
「今買って後で払う」モデルは174%という最も高い成長率が予測されており、市場規模は2024年の69億ドルから2029年には189億ドルに達する。若年層の消費意欲が旺盛な東南アジアでは、信用スコアリング技術の発展とともにBNPLの浸透が加速している。
一方、オフライン決済(代金引換など)のシェアは2024年の11%から2029年にはわずか3%にまで縮小すると予測されている。
中小企業がEC市場の58%を担う
インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの6カ国で計600社の中小企業(SMEs)を対象に実施された調査では、SMEsが2029年に東南アジアEC総取引額の約58%を占めると推計されている(2024年は57%)。現時点で約66%のSMEsがすでにオンライン販売に参入しており、デジタル経済への統合が着実に進んでいる。
ただし、越境EC(クロスボーダーEC)に取り組んでいるSMEsは49%にとどまる。それでも調査対象の4分の3が今後2年以内に海外市場への展開を計画していると回答しており、特にインドネシアとタイで積極的な姿勢が目立つ。IDCはSMEsの越境EC参入が進むことで、2029年までに域内に約208億ドルの追加収益(EC全体の7.1%相当)をもたらすと試算している。
2C2P by AntomのCEO、ウォラチャット・ルクサナロード氏は「東南アジアのSMEsは域内主要国でGDPの50%超を生み出し、労働力の約64.6%を雇用している。しかし多くの企業がデジタル転換の課題に直面している」と指摘し、決済インフラの整備が成長の鍵を握ると強調した。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場への影響:ベトナムはデジタル決済の成長3大市場(インドネシア、タイ、ベトナム)の一角を占めており、関連銘柄への追い風が期待される。ホーチミン証券取引所(HOSE)に上場するIT・フィンテック関連企業、および銀行セクター(デジタルバンキング推進組)への資金流入が見込まれる。具体的にはFPT(IT大手)、VPBank(デジタルリテール強化)、MB Bank(MBB、デジタル決済基盤を持つ)などが注目に値する。
日本企業への示唆:東南アジアEC市場の急拡大は、ベトナムに生産拠点を持つ日系メーカーにとって「製造拠点」から「消費市場」へのシフトを意味する。越境EC支援、物流、決済ソリューションの分野で日本企業の参入余地は大きい。SBIホールディングスやソフトバンクグループなど、すでにベトナムのフィンテックに投資実績のある企業は先行者利益を享受しうる。
FTSE新興市場指数との関連:ベトナムは2026年9月にFTSE新興市場指数への格上げが決定する見通しである。デジタル決済インフラの整備は、外国人投資家の市場アクセス改善と直結しており、格上げに向けた好材料の一つと位置づけられる。EC市場の成長がGDP成長率を下支えし、マクロ経済のファンダメンタルズ強化にもつながるため、格上げ後の海外資金流入を一段と加速させる要因となり得る。
マクロ的な位置づけ:ベトナム政府は2025年までにキャッシュレス決済比率を大幅に引き上げる目標を掲げており、国家デジタル転換プログラムとも整合的である。今回の予測はベトナムが「東南アジアのデジタル経済ハブ」としての地位を着実に固めつつあることを裏付けるものだ。
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