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ハーバード大学ケネディスクールのリンダ・ビルメス教授が、米国のイラン軍事作戦の総費用が最大1兆ドルに達する可能性があるとの研究を発表した。中東情勢の緊迫化は原油価格やグローバルサプライチェーンを通じ、ベトナム経済にも無視できない影響を及ぼし得る。
米イラン軍事衝突の経緯と最新情勢
米国とイランの交渉が先週末に決裂した後、米海軍は4月13日(月曜日)にイランの港湾への海上封鎖を開始した。しかし翌火曜日、トランプ大統領はパキスタンを舞台にした和平交渉が2日以内に再開される可能性があると表明。交渉の行方は依然として不透明な状況が続いている。
米国防総省が議会に提出した報告書によると、2月28日に開始された米国・イスラエルの合同軍事作戦は、最初の6日間だけで113億ドルを消費した。
「公表額は実態を大幅に下回る」—ビルメス教授の分析
ビルメス教授は、CNBCの報道によれば、先週初めに発表された一時停戦の2日前に研究を公表。その中で、イラン軍事作戦が米国の財政と国家債務に長期にわたり深刻な影響を及ぼすと警告している。
教授の試算では、戦闘期間中の直接コストは40日間の交戦で1日あたり約20億ドル。これには弾薬費、兵員展開費、軍事装備の損失が含まれる。損失装備の中には、クウェートの防空システムによる誤射で撃墜されたF-15戦闘機3機も含まれている。
しかし、ビルメス教授が特に問題視するのは、国防総省の会計手法である。ペンタゴン(米国防総省)は備蓄兵器を帳簿価格で計上する傾向があり、現在の調達価格——はるかに高額——で計算していない。この差異により、公表された113億ドルの損失は、実際には160億ドル近くに達する可能性があるという。
長期コスト:備蓄補充、基地修復、同盟国支援
ビルメス教授は、備蓄の再補充コストが今後急増すると指摘する。米軍はロッキード・マーティンやボーイングとの長期契約に基づき、迎撃ミサイルなどを追加購入する必要がある。米国が使用する迎撃ミサイル1発の価格は約400万ドルであるのに対し、イランが使用するドローン(無人機)の製造コストはわずか約3万ドル。このコスト非対称性は、米国の財政にとって極めて不利な構造である。
長期的には、中東地域の米軍基地の修復、備蓄の再構築に加え、クウェート、UAE(アラブ首長国連邦)、バーレーンといった湾岸同盟国のインフラ復旧支援も必要となる。これらはイランの報復攻撃によって被害を受けたものである。
さらに、紛争地域に派遣された約5万5,000人の米兵に対する生涯にわたる障害給付金も財政を圧迫する。これらの兵士は有毒物質や環境リスクに曝露されている。
膨張する国防予算と累積債務
ホワイトハウスは2027会計年度の国防予算を1兆5,000億ドルに引き上げるよう議会に要請済みで、これにはペンタゴンがイラン戦費として別途要求した2,000億ドルは含まれていない。
ビルメス教授は「議会が政府の増額要求を全額承認しなくても、基本国防予算は少なくとも年間1,000億ドル増加する可能性が高い。イランとの戦争がなければ、この増額は承認されなかっただろう」と述べている。
イラク戦争時、米国の公的債務は4兆ドル未満であった。現在は31兆ドルを超えており、ビルメス教授によれば、その大部分はイラクとアフガニスタンでの過去の戦争費用が累積した結果である。イラク戦争の総費用は約2兆ドルとされている。
「米国はイラン戦費をより高い金利で借り入れて賄わねばならず、現在の債務負担は以前よりはるかに大きい。利払いだけで戦費総額がさらに数十億ドル膨らむ可能性がある。この部分は将来世代への負担として残る」と教授は警告した。
ベトナム経済・投資家への示唆
中東情勢の緊迫化は、ベトナム経済に複数の経路で影響を及ぼす。
原油価格:イランの港湾封鎖が長期化すればホルムズ海峡の地政学リスクが高まり、原油価格が上昇する。ベトナムは原油の純輸出国でもあるため、ペトロベトナムガス(GAS)やペトロベトナム掘削(PVD)などの石油関連銘柄には追い風となり得る一方、航空(ベトジェット:VJC、ベトナム航空:HVN)や物流セクターにはコスト増の逆風となる。
米国の財政悪化と金利:米国の財政赤字拡大は長期金利の上昇圧力となり、新興国市場からの資金流出リスクを高める。ベトナム株式市場(VN-Index)や、2026年9月に判定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げプロセスにも間接的な影響を与え得る。米国金利の高止まりは、海外投資家のベトナム株への資金配分判断を左右する重要なファクターである。
サプライチェーンと貿易:中東経由の海上輸送ルートが不安定化すれば、ベトナムの対欧州輸出にも影響が及ぶ可能性がある。ベトナムに生産拠点を持つ日系企業にとっても、物流コストの上昇は注視すべきリスクである。
ドル高圧力:地政学リスクの高まりは安全資産としてのドル需要を押し上げ、ベトナムドン安圧力となる。ベトナム国家銀行(中央銀行)の為替政策運営にも影響を及ぼす可能性がある。
総じて、米イラン情勢はベトナム投資家にとって「遠い出来事」ではなく、原油・為替・資金フローを通じてポートフォリオに直結するリスク要因である。今後の交渉再開の行方と、原油市場の反応を注視すべきである。
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出典: 元記事












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