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米国の2025年4月の貿易赤字が前月比1.2%縮小し559億ドルとなった。原油・石油製品の輸出が過去最高の367億ドルに達したことが最大の要因である。石油貿易黒字は3月の94億ドルから177億ドルへと急拡大し、史上最高を記録した。一方で、米国はベトナムとの間でも貿易赤字を計上しており、トランプ政権の保護主義的通商政策の行方がベトナム経済に直結する構図は変わっていない。
米国貿易統計の全体像—輸出が過去最高の3,271億ドル
6月9日に米商務省が公表した4月の貿易統計によると、米国の総輸出は前月比2.6%増の3,271億ドルと過去最高を更新した。うち財(モノ)の輸出は4.1%増の2,213億ドルで、こちらも史上最高である。輸出を牽引したのは原油・石油製品、資本財(機械・設備)、そして消費財の3分野だ。
総輸入は2%増の3,830億ドル。財の輸入は2.1%増の3,049億ドルで、資本財の輸入が70億ドル増加した。コンピュータ、半導体チップ、通信機器の輸入急増がその中身であり、米国企業によるAI(人工知能)関連投資の加速を如実に反映している。
原油輸出急増の背景—イラン紛争とホルムズ海峡リスク
4月の原油・石油製品の輸出額は367億ドルに達し、3月の276億ドルから大幅に増加した。米国は現在、石油の純輸出国となっている。2月末に勃発した米国・イラン間の軍事衝突を受け、原油価格はバレル当たり100ドルを突破。ホルムズ海峡(ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ世界最大の原油輸送路)を通る輸送が一部混乱したものの、米国自体の貿易フローには大きな悪影響は出ていないと報告されている。
原材料・産業用資材の輸出は890億ドルと過去最高を記録。石油関連がその大部分を占める。BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、サル・グアティエリ氏は「輸出増により第2四半期のGDP成長率は現在の市場予想を上回る可能性がある」と指摘した。
関税の影響は限定的、AI投資が輸入を押し上げ
トランプ政権が掲げる保護主義的関税措置について、4月の統計では輸入抑制効果は限定的であった。むしろAI関連の設備投資需要が強く、資本財の輸入は過去最高を記録している。FWDBONDSのチーフエコノミスト、クリストファー・ルプキー氏は「貿易収支の改善は好材料だが、エネルギー価格上昇に依存しており持続性には疑問が残る」と警鐘を鳴らした。
キャピタル・エコノミクスの北米担当チーフエコノミスト、スティーブン・ブラウン氏も「金の取引を除けば、最新の貿易データはGDPにとってポジティブなシグナルだ」と評価している。アトランタ連邦準備銀行は第2四半期の米GDP成長率を前年同期比3.3%と予測しており、第1四半期の1.6%からの大幅な加速が見込まれる。
対中赤字は縮小、ベトナムとの赤字は継続
4月の米中貿易赤字は26億ドル縮小して120億ドルとなった。輸出・輸入ともに減少した結果である。一方、米国はベトナム、台湾、メキシコ、EU、カナダ、韓国などとの間で引き続き貿易赤字を計上している。トランプ政権はこうした「不均衡」の是正を理由に保護主義的政策を正当化しており、ベトナムは依然として米国の通商圧力の対象となりうる立場にある。
なお、米英間の貿易では、米国の黒字が38億ドル縮小し26億ドルとなった。輸出入がともに減少したためである。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場への影響:米国の貿易赤字縮小は一見するとベトナムに直接関係ないように見えるが、構造的には重要な含意がある。第一に、米国のGDP成長加速はベトナムの対米輸出にとって追い風である。米国はベトナムにとって最大の輸出先であり、米国経済の好調はベトナムの製造業・輸出関連銘柄(繊維、電子部品、水産加工など)の業績を下支えする。
第二に、トランプ政権が貿易赤字の是正を掲げ続ける限り、対ベトナム関税引き上げリスクは消えない。米越間の貿易赤字が継続している事実は、ベトナムが「次のターゲット」になりうることを意味する。ベトナム株式市場のVN-Indexにとっては、米国の通商政策動向が引き続き最大の外部リスク要因である。
AI投資とベトナムの半導体・電子産業:米国企業がAI関連のコンピュータ、半導体、通信機器の輸入を急増させている点は、ベトナムの電子製品組立・半導体パッケージング産業にとって中長期的な好材料である。サムスン、インテル、アンペア・コンピューティングなどがベトナムに拠点を持ち、米国向けサプライチェーンの一翼を担っている。
原油価格上昇の影響:原油価格がバレル100ドル超で推移する状況は、ベトナムにとって二面性がある。ペトロベトナムグループ(PVN)傘下の上場企業群(PVD、PVS、GASなど)にとっては収益拡大要因だが、製造業全般にとってはコスト上昇圧力となる。ベトナムは原油の純輸出国ではあるものの、石油製品は純輸入国であり、ガソリン・軽油価格の上昇はインフレ圧力を高める。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに向け、ベトナム市場は海外資金のフローに敏感な状態が続く。米国経済の好調がグローバルなリスクオン環境を維持すれば、ベトナム市場への資金流入も加速する可能性がある。一方、米国の保護主義強化がベトナムの輸出を直撃すれば、格上げ期待による株価上昇を打ち消すリスクもある。日本の投資家にとっては、米越通商関係の動向を注視しながらポジションを構築することが肝要である。
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